2015年11月22日 09:51 弁護士ドットコム
富裕層の間でいま、タワーマンションの上層階を購入する「相続税対策」が注目を集めている。そんななか国税庁が、タワーマンションを使った相続税対策への監視を強化するよう、全国の国税局に指示していたと、日本経済新聞が報じた。今後、追徴課税されるケースが出てくる可能性があるという。
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この「タワマン節税」とは、どのような仕組みなのだろうか また、住むために購入した場合でも、相続税対策と疑われることがあるのだろうか。久乗 哲税理士に聞いた。
久乗税理士は、タワマン節税の仕組みを次のように解説する。
「相続税は、相続時の財産の『時価』を基に計算されますが、このとき、計算の基準に用いられるのが、国税庁が税務署に通達している『財産評価基本通達』です。
タワーマンションの場合、土地については共有財産であり、持ち分が圧倒的に小さいのが特徴です。そして、建物については固定資産税の評価額になるため、この通達に基づいて評価すると、相続税の対象となる時価はかなり小さくなります。
また同じ広さならば、評価額は高層でも低層でも変わらないため、市場価格の高い高層階の物件を購入することもあります。タワーマンションは人気があるため、売却した場合には、相続税の評価額よりも高額で売却することができたりするのです。
タワマン節税は、この価額の差を利用した節税策になります」
そして、久乗税理士は「タワマン節税が注目され出した背景には、相続税の課税が強化されたことがあります」と指摘する。
「本来であれば、納税者が財産評価基本通達にしたがって評価をした場合、大きな問題になることはありません。
しかし、財産評価基本通達で評価することが著しく課税の公平を阻害するような場合、国税庁は財産評価基本通達の評価を離れて評価することができることになっています。これが財産評価基本通達の総則6項といわれるものです。
タワマン節税は、この財産評価基本通達総則6項によって、課税されることとなります。
しかし、この総則6項はあくまでも『通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる』場合に使われます。
そのため、タワーマンションを購入して、相続の発生後にすぐ売却するなど、相続財産の評価を下げるためだけに購入したと見なされるような場合に課税される可能性が高くなるでしょう。
したがって、一般的に住むために購入したと認められるような場合には、総則6項によって評価されることはありません」
久乗税理士はこのように話していた。
【取材協力税理士】
久乗 哲 (くのり・さとし)税理士
税理士法人りたっくす代表社員。税理士。立命館大学院政策科学研究科非常勤講師、立命館大学院経済学研究科客員教授、神戸大学経営学部非常勤講師、立命館大学法学部非常勤講師、大阪経済大学経済学部非常勤講師を経て、立命館大学映像学部非常勤講師。第25回日税研究賞入選。主な著書に『新版検証納税者勝訴の判決』(共著)等がある。
事務所名 :税理士法人りたっくす
事務所URL:http://rita-x.tkcnf.com/pc/
(弁護士ドットコムニュース)