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トラブル続出のWECバーレーン決勝。ウェーバー擁する17号車ポルシェがタイトル獲得。ブルツ有終の美3位

2015年11月22日 06:00  AUTOSPORT web

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WEC最終戦バーレーン 2015年のドライバーズタイトルを獲得した17号車ポルシェ919ハイブリッドのティモ・ベルンハルト/マーク・ウェーバー/ブレンダン・ハートレー
FIA世界耐久選手権(WEC)最終戦バーレーン6時間レースの決勝が行われ、18号車ポルシェ919ハイブリッドが今季初優勝を果たし、17号車ポルシェ919ハイブリッドのティモ・ベルンハルト/マーク・ウェーバー/ブレンダン・ハートレー組が2015年シーズンのドライバーズタイトル獲得を決めた。

 現地時間の15時にスタートが切られた、WEC最終戦バーレーン6時間レース。ベルンハルトが乗り込み、ランキングトップで最終戦に臨んだ17号車ポルシェ919ハイブリッドは、無難なスタートを決め、先頭で1コーナーに飛び込む。2番手スタートの18号車ポルシェ919ハイブリッドには、17号車とタイトルを争う7号車アウディR18e-トロン・クアトロが並びかけるが、7号車は17号車に詰まる形で行き場を失い、18号車の前に出ることは敵わず……ポルシェの2台がワンツー、アウディが3番手と4番手、トヨタが5番手6番手の順で1周目に入っていく。

 しかし、3番手の7号車アウディR18 e-トロン・クアトロは、右フロントタイヤの内圧が安定せず、ペースが遅い。そして2周目の1コーナーで8号車が先行する。8号車のペースは良く、すぐに18号車ポルシェに追いつき、6周目の1コーナーでオーバーテイクに成功。17号車ポルシェ919ハイブリッドが先頭、2番手8号車アウディR18 e-トロン・クアトロという隊列でレースが進んでいく。

 18周目に早速波乱の展開が訪れる。先頭を走っていた17号車ポルシェ919ハイブリッドが突如スローダウンし、18号車や2台のアウディに次々と抜かれてしまい、ゆるゆるとピットへ。そしてマシンをリヤからガレージに入れ、スタッフ総出で修復作業を行う。18号車のトラブルは、エンジンのアクチュエーターに関するもので、8分40秒のストップでコースに復帰するが、トップからは5周遅れとなってしまう。これでトップに立ったのは、8号車アウディR18 e-トロン・クアトロだ。

 24周目に先頭の8号車がピットイン。フルサービスでコースへと送り出す。7号車は26周目、18号車ポルシェ919ハイブリッドは29周目にそれぞれ最初のピットイン。この段階でポルシェの方が燃費が圧倒的に優れているのは明らかになったが、ピットストップのタイミングで7号車アウディが18号車ポルシェの前に立ち、アウディがワンツー体制を築く。

 1回目のピットストップで、7号車アウディR18 e-トロン・クアトロにはアンドレ・ロッテラーが乗り込み、コース復帰後はハイペースで前を追う。そして50周目に8号車をオーバーテイクし、ついに7号車が先頭に立つ。17号車が後方に沈んだ今、7号車はこのままトップでチェッカーを受けることができれば、大逆転のチャンピオン獲得だ。トラブルで30番手付近まで落ちた17号車ポルシェ919ハイブリッドは、ハイペースで走行するも6番手。5番手を走る2号車トヨタTS040ハイブリッドとは、まだ3周の差がある。

 91周目、2番手を走っていた8号車アウディR18 e-トロン・クアトロは、大量のカーボンダストを左フロントから吐き出し、ターン11でオーバーラン。これはブレーキのトラブルが原因で、8号車はそのままピットへ直行。マシンをガレージに入れ、左フロントのウイッシュボーン、ドライブシャフト、アップライトなど一式を交換。これには多くの時間を要し、先頭から8周遅れとなってしまう。

 レースが半分を経過しようという頃、コース脇のボラードを修復するためにフルコースイエローコーション(FCY)が発動。このタイミングで、7号車アウディR18 e-トロン・クアトロがピットイン。ロッテラーに変わってブノワ・トレルイエが乗り込んだ。しかも、FCYのためにペースを抑えられていた18号車ポルシェ919ハイブリッドの前でコースに復帰することに成功する。

 しかし、FCY解除後の7号車はペースが上がらず、110周目の最終コーナーで18号車がオーバーテイクして先頭に。18号車がこのまま先頭をキープすれば、17号車のトリオにドライバーズタイトルをプレゼントすることができる、まさに絶好のアシストである。7号車を交わした18号車は、快調なペースで走行し、7号車を徐々に引き離していく。

 残り約2時間半というところで、LMP2マシンがクラッシュ。この影響でこの日2回目のFCY発動となる。18号車と7号車はこの間にピットインを行うが、アウディのピット作業が早く、7号車が18号車との差を再び詰める。しかし、レース再開後は18号車が7号車よりも1周あたり1秒以上速いペースで逃げる展開。それでも7号車はなんとか食らいつき、18号車と15秒程度の差で凌ぐ……そして146周目にピットインし、ふたたびロッテラーが乗り込んだ。

 ただ、アウディのピットは、ここで大きなミスをしてしまう。右リヤホイールのナットが完全に締まっておらず、149周目に再びピットインを強いられてしまったのだ。これで18号車との差は1分以上と大きく開いてしまい、7号車の勝利は絶望的となった。

 153周目、17号車ポルシェ919ハイブリッドがハイブリッドパワーを失って、再び緊急ピットイン。ガレージにマシンを入れ、リヤカウルを開けて作業を行う。17号車はリタイアしてしまえば、7号車アウディが2位でフィニッシュしても、7号車がチャンピオンに輝く。17号車はコースに復帰するが、ハイブリッドパワーはほとんど回復しておらず、まさに手負いの状態で、ウェーバーがマシンをドライブしていく。

 174周目に7号車アウディR18 e-トロン・クアトロが、176周目に18号車ポルシェ919ハイブリッドが最後のピットインを行うも、1分以上の差は変わらず。大きくペースダウンした17号車ポルシェ919ハイブリッドも183周目に給油のみを行う。

 そして18号車ポルシェ919ハイブリッドが6時間で199周を走り、トップでチェッカー。今季初優勝を飾った。2位には7号車アウディR18 e-トロン・クアトロが入り、3位にはこのレースをもってレーシングドライバー引退を表明したアレクサンダー・ブルツ擁する2号車トヨタTS040ハイブリッドが入った。1号車トヨタTS040ハイブリッドは4位。17号車ポルシェ919ハイブリッドは、最後はノッキングの症状を見せながらも、トップから9周遅れの5位でフィニッシュ。この瞬間、17号車のベルンハルト/ウェーバー/ハートレー組が、2015年のドライバーズチャンピオンに輝いた。

 LMP2は、予選クラス首位の36号車シグナテック・アルピーヌが大きく出遅れ。26号車と28号車のG-ドライブ・レーシング、そして47号車KCMGが激しく上位を争う展開。優勝することでタイトル獲得に望みを見いだしたい47号車は、28周目に26号車G-ドライブ・レーシングを抜いてクラストップに浮上する。47号車はレースの大半でこのポジションをキープするが、130周目に26号車G-ドライブ・レーシングにふたタブオーバーテイクを許してしまい、2番手に下がる。

 しかし、158周目に47号車KCMGが、159周目に26号車G-ドライブ・レーシングが最後のピットインを行うと、先頭は47号車KCMG、2番手は順位を回復してきた36号車シグナテック・アルピーヌ、3番手に26号車G-ドライブ・レーシングという隊列になる。しかし、26号車に乗り込んだのはサム・バード。バードは前方の2台よりも1周あたり2秒ずつ速い驚異的なペースで飛ばし、最大22秒あったKCMGとの差は174周目には0.2秒となり、そして175周目にはオーバーテイクに成功。バードはそのまま最後まで走り切りトップでチェッカーを受け、自らのタイトル獲得に花を添えた。

 LM-GTEのプロクラスは、レース序盤は予選トップの51号車AFコルセが先頭をキープするが、9周目の最終コーナーで92号車ポルシェ・チーム・マンタイがこれをオーバーテイク。同クラスのタイトルはAFコルセの51号車と91号車ポルシェ・チーム・マンタイが争う展開。このレースでは91号車が振るわずに後方に沈んでいたが、51号車は優勝しなければタイトルを獲得することはできない。その意味でも、92号車が51号車を交わした意味は大きい。

 結局92号車ポルシェ・チーム・マンタイはそのまま6時間を走り切って優勝。2番手には51号車AFコルセが入った。91号車ポルシェ・チーム・マンタイはクラス5位でフィニッシュし、2015年のクラスタイトルを決めた。

 LM-GTEアマクラスは、終始目まぐるしく順位が入れ替わる展開。中盤は77号車でンプシー-プロトン・レーシングと88号車アブダビ-プロトン・レーシングがトップを争ったが、最終的には98号車アストン・マーチン・レーシングが首位でゴール。2位にはアブダビ-プロトン・レーシングが入り、3位にはデンプシー-プロトン・レーシング。同クラスは72号車SMPレーシングと83号車AFコルセが争っていたが、83号車がクラス4位、72号車がクラス5位でフィニッシュ。この結果、72号車SMPレーシングがLM-GTEアマクラスのチャンピオンに輝いた。