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『イナズマロック』発の新進バンド、Thinking Dogsが手にした強力なバックアップと試練

2015年11月21日 15:01  リアルサウンド

リアルサウンド

Thinking Dogs。

 今年6月にシングル『世界は終わらない』でメジャーデビューを果たした男性4人組ロックバンド、Thinking Dogsが早くも2ndシングル『3 times』を11月18日にリリースした。バンドとしてはまだまだ露出が少ないかもしれない彼らだが、実は楽曲自体はデビュー以降さまざまな場面で耳にする機会があったことにお気付きだろうか。


 彼らのデビュー曲「世界は終わらない」は今年4月から6月にかけてTBS系列で放送されたテレビドラマ『ヤメゴク~ヤクザやめて頂きます~』の主題歌としてオンエア。デビュー作のカップリング曲「あと100マイル」もロッテガムのCMソングに採用されたほか、最新シングルのカップリング曲「もしも あなたが…」は11月21日から劇場公開されるホラー映画『劇場霊』および10月からスタートしたTBS・MBSドラマ『劇場霊からの招待状』の主題歌に決定するなど、デビューから半年に満たない新人バンドにしては異例の大型タイアップが続いている。


 また彼らの周辺にはAKB48というキーワードが散りばめられているのも興味深い。レコード会社の担当者はAKB48がDefSTAR RECORDSよりメジャーデビューをした時の初代ディレクターで、Thinking Dogsがこれまでに発表してきたすべての楽曲の作詞を秋元康が手がけている。また「世界は終わらない」が主題歌に起用された『ヤメゴク~ヤクザやめて頂きます~』は元AKB48の大島優子が主演、「あと100マイル」にはコーラスにHKT48の指原莉乃が参加(かつロッテガムのCMでも共演)、そして「もしも あなたが…」が流れる映画『劇場霊』はAKB48の島崎遥香が主演を務めるほか、オムニバスドラマ『劇場霊からの招待状』には48グループのメンバーが毎回1名出演している。もちろんThinking Dogs自身はAKB48とは関係のない立ち位置だが、デビュー時から国民的アイドルとその彼女たちを手がける名プロデューサーおよび作詞家の力を借りてプロモーションできるという点では、CDがなかなか売れない昨今においては非常に手強いと言える。


 しかし、そういった要素がバンドの足を引っ張ることがあるのも事実だ。Thinking Dogsの場合、特にそのルックスの良さもあり、一歩間違えばアイドルバンドという偏見を持たれてスルーされてしまう可能性もある。では彼らの実力はバンドとしてどうなのかというと、(意外にもと言っては失礼だが)これがかなりしっかりしたものだったりする。そもそもデビューのきっかけとなったのが、昨年9月に開催されたT.M.Revolution主催の野外フェス『イナズマロック フェス 2014』との連動型オーディション『イナズマゲート 2014』へ出演したことで、その際にはライブパフォーマンスが評価されファイナリストに選出。最終的には準グランプリを獲得するという結果を残しているのだ(プロフィール上ではその後「伝説のプロデューサー、サイモン利根川に見いだされ」云々と記されているが、ここではあえて触れないでおく)。


 メンバー全員が25歳前後で、影響を受けたアーティストもL'Arc-en-CielやSIAM SHADEなどの日本のロックバンドやLOSTPROPHETS、FALL OUT BOY、LIMP BIZKIT、LINKIN PARKといった海外のエモ/ラウド系などさまざま。そういったアーティストの楽曲をコピーしてきたこともあってか、ライブ映像を観る限りでは楽器隊のテクニックは安定したものという印象がある。現時点ではメンバー書き下ろしによるオリジナル曲が発表されていないので、そういったアーティストからの影響を楽曲自体から感じ取ることは難しいが、各メンバーのプレイからその片鱗は少なからず感じられるだろう。


 この夏にはデビューのきっかけとなった『イナズマロック フェス 2015』への凱旋を果たしたばかり。バンドとしての個性の確立にはもう少しだけ時間がかかるかもしれないが、恵まれた才能とルックス、そして恵まれた楽曲と周囲の人間たち、これらをうまく活用しつつ自身を磨き続けていれば、この先間違いなく「良質な楽曲を増産するカッコいいロックバンド」へと成長するはずだ。まずはその片鱗が散りばめられた最新シングル『3 times』を聴いて、Thinking Dogsの真価を確かめてほしい。(西廣智一)