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GP2:松下信治、抜きまくって表彰台。優勝を逃した予選のミスを後悔

2015年11月21日 04:41  AUTOSPORT web

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ワンツーでチームタイトルを決めたART。松下は戦って2位をもぎとったが、チームメイトを逃がしてしまったことを悔やんだ
キャンセルになったホッケンハイムの代わりとして、GP2第10戦は最終戦アブダビの前にWECのサポートレースとしてバーレーンで開催されることになった。これまで走行時間の少ないスケジュールで苦戦を強いられてきたルーキーたちにとっては、今季初の2度目の開催となる場所で実力が試されることになる。

 予選ではレッドブルのリザーブドライバーを務める新人ピエール・ガスリーがポールポジション。ウイリアムズ育成のアレックス・リンが4位、ジョーダン・キングが5位、そして松下信治が8位と、活きの良いルーキーたちが上位に顔をそろえた。

 しかし、スタートで好加速を見せたのは2番グリッドの王者ストフェル・バンドーンで、そのまま1コーナーまでに首位を奪った。ガスリーは2番手に後退、ラファエル・マルチェッロが3番手をキープ、続いてノーマン・ナト、リン、6番手に松下が浮上した。松下は「スタート加速で2台パスして、そのあとはクリーンに走りました」と振り返る。

 ここから首位バンドーンが一気に逃げ、すかさずマルチェッロは3周目にガスリーを抜いて2番手に上がったものの、バンドーンのペースにはついていけない。松下も3周目にリンをかわして5番手、そして6周目にはナトとともにガスリーを抜いて4番手まで浮上する。「集団の中でのバトルだったので、相手がミスしたところを突いて抜きました」と冷静なレース運びを見せた。

 松下は3番手ナトの背後についたが、なかなか抜けない。4月のレース開催時は各車デグラデーションに苦しんだため、ミディアムタイヤでスタートしたドライバーがペースを抑えはじめ、レースは膠着状態となった。松下は18周目ついにナトをパスして3番手に浮上、2番手マルチェッロの背後に迫っていった。首位バンドーンは、すでに2位以下を8秒近くも引き離して独走状態だ。

「タイヤをいたわるために常にプッシュはしないで走っていましたが、それでもナトは遅かったので少しタイムロスしました。彼は危ないドライバーのひとりなのでストレートで安全に抜こうと思っていたんですが、最後は思いのほかあっさりとコーナーで抜けましたね」と、松下。

 17周目に9番手のセルゲイ・シロトキンがピットに飛び込むと、18周目には7番手アレクサンダー・ロッシと8番手リオ・ハリアント、19周目には6番手ミッチ・エバンスが続々とピットに入り、ピットアウト後にソフトタイヤで好タイムを記録していく。

 このアンダーカットを阻止しようと松下も20周目にピットインしたものの、エバンスとロッシの後方に回ってしまう。21周目にはバンドーンをはじめ上位勢すべてピットインを終え、この時点で首位はバンドーン、以下ソフトタイヤでスタートして8周目にタイヤ交換を済ませていたナタナエル・ベルトン、エバンス、ロッシ、5番手に松下、シロトキン、マルチェッロ、ハリアント、ガスリー、10位ナトという順番に入れ替わった。

 24周目にはペースの伸び悩むベルトンを上位勢がパスして、エバンス、ロッシ、松下による三つ巴の2位争いが激しくなってきた。そんな状況のなかロッシが25周目のターン4でイン側の縁石に乗ってしまい、マシンが跳ね上がったことで止まり切れずに前のエバンスに追突。フロントウイング左側を壊す痛恨のミスでピットインを余儀なくされて大きく後退してしまった。

 前がクリアになった松下はすぐさまエバンスを追い詰め、30周目の1コーナーでDRSを使ってインに飛び込み、オーバーテイク。これで2位をもぎ取り、さらにハイペースで飛ばしたが、すでにバンドーンは13秒前方で独走しており追撃は不可能だった。純粋なペースは速かっただけに、予選最後のアタックランで1周目にロックさせてタイムを上げられず、8番グリッドというスタートポジションに沈んでしまったことが悔やまれる展開となってしまった。

「最後のスティントは前半でかなりタイヤをセーブしていて、後半にチャンスが来ることはわかっていました。ピットストップはギリギリのタイミングではありましたが、レース後半に活きた良い作戦だったと思います。ストフェルは常に単独で走っていたのに対して、僕は何台も抜かなければならなかった。それが結果を分けた最大の要因で、スタートポジションの善し悪しに尽きると思います。スタート位置を考えれば、2位という結果はすごくうれしいですけどね」

 午後4時半を回って陽が傾きはじめたバーレーン・インターナショナル・サーキットにナイター照明が灯されるなかでバンドーンが今季6勝目を挙げ、松下も2位でチェッカー。ワンツーフィニッシュを果たしたARTが、3レースを残して今季のチームチャンピオンを決めた。3位エバンス、4位マルチェッロ、5位シロトキン、そして終盤に鋭い追い上げを見せたガスリーが6位でフィニッシュ。ルーキーのリンとキングもそれぞれポイント圏内でレースを終えた。

 23周、約45分間で争われる決勝レース2は、土曜のWEC決勝前、現地時間10時45分(日本時間16時45分)から行われる。

(米家峰起)