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クリステン・リッター&レイチェル・テイラーが語る、『ジェシカ・ジョーンズ』とNetflixの挑戦

2015年11月20日 11:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『ジェシカ・ジョーンズ』インタビュー

 『アイアンマン』や『スパイダーマン』『X-MEN』など、数々のスーパーヒーローを生み出してきたマーベルが、『デアデビル』に続きNetflixと共同で製作したテレビシリーズ第2弾『ジェシカ・ジョーンズ』が本日11月20日より全世界同時配信となる。元スーパーヒーローで、現在は私立探偵として孤独に生きるジェシカ・ジョーンズが、スーパーヒーローを辞めるきっかけにもなった宿敵キルグレイブと再び対峙することにより、忘れかけていた過去と向き合い、悪を倒すため難事件に挑む模様を描いた作品だ。リアルサウンド映画部では、主人公ジェシカ・ジョーンズを演じたクリステン・リッターと、ジェシカが唯一信頼する親友トリシュ・ウォーカーを演じたレイチェル・テイラーに取材を実施。役作りのポイントや撮影で苦労した点などについて、話を聞いた。


参考:マーベル×Netflix『ジェシカ・ジョーンズ』女優陣が来日 テイラー「リアルだし心に響く作品」


■キャリー・ジョージ・フクナガ監督が語る、映画とネットとテレビドラマの未来


ーー本作はマーベルコミックの『エイリアス』が原作ですが、お2人が役作りにおいて重視した点を教えてください。


クリステン・リッター(以下、クリステン):スーパーヒーローだからといって、何か他の役とアプローチが変わったわけではないわ。私はどんな役を演じるときも、“準備”をとても大切にしているの。今回も、原作の『エイリアス』を事前に読んで、素晴らしい脚本をベースにジェシカという役を築いていったわ。作品の中で描かれる前のジェシカの人生がどういうものだったかも考えたわ。いったい彼女に何が起きて、それが彼女にどういった影響を与えたのか。そのような彼女の普段の所作みたいなバックストーリーの部分を作り上げていくことが、役作りの1番大きなポイントね。


レイチェル・テイラー(以下、レイチェル):私がトリシュを演じるにあたり、1番のポイントになったのはジェシカとの女性同士の関係ね。その関係にインスピレーションを受けて、非常に興味深いものを感じたわ。それは一言では言い表せない、複雑で深みのある関係なの。私の実生活での友達との関係を考えながら演じてたわ。2人はお互い忠誠心はあるんだけど、かつて起こったある出来事の傷が残っているような、そんな関係性でもあるの。クリステンは本当に素晴らしい役者だし、キャスティング段階から2人の間にはケミストリーがあったから、実際の自分たちとの関係性も役作りに生かされてると思うわ。


ーークリステン以外のキャストとの共演はいかがでしたか?


レイチェル:トリシュとの関係性において、もう1人の重要なキャラクターは、作品の後半に登場するウィルという刑事ね。その役を演じたウィル・トラヴァルは、私と同じオーストラリア人だったの。日本の皆さんがアメリカで日本人の方に出会ったら何かを感じと思うけど、どこかで文化的に繋がっているような、そんなケミストリーみたいなものがサブテキストとしてあったのは非常に面白かったわね。2人の関係性にはダークなトーンがあったから、とても演じがいがあったわ。


ーークリステンは、レイチェルや他のキャストとの共演はいかがでしたか?


クリステン:今回の作品は、いろんなことがジェシカの視点から綴られていって、彼女の心象風景をずっと追っていく作品でもある。なので、私はほとんど出ずっぱりで、1人だけのシーンも多かったから、撮影中は孤独な時間を経験することも多かったわ。私はもともと、カフェテリアで女子のテーブルがあったら、フワーッとそっちの方へ行ってしまうような、友達同士で集まるのが好きなタイプなの。だから、撮影でレイチェルと同じ現場になったときは、「レイチェルー!」と叫んで盛り上がってたわね(笑)。共演シーンが割と多かったルーク・ケイジ役のマイク・コルターとも同様で、旧友と再会したかのような感じだったわ。


レイチェル:スイッチをオンオフできるタイプでよかったわね(笑)。


ーー今回の原作以外のマーベルコミックを読んだり、これまでに映画化されてきた他のマーベル作品を観たりはしていましたか?


クリステン:実は、初めて読んだコミックが『エイリアス』なの。今回、『エイリアス』で初めてコミックの世界に触れて、とても想像力がかきたてられたし、作品の世界観を体感できたから、子供の頃から読んでいればよかったと思ったわ。『ジェシカ・ジョーンズ』以外で1番好きなマーベル映画は『アイアンマン』ね。トニー・スタークはジェシカと同じような小生意気さを持っているから(笑)。


レイチェル:私もクリステンと似ているわ。私が生まれ育ったオーストラリアのタスマニア州は、大きなコミック文化もなかったから、あまり触れてこなかったの。映画の方では、私も『アイアンマン』が好きだけど、やっぱり『ジェシカ・ジョーンズ』が1番だわ。それだけリアルに響くものがあるから。マーベルが素晴らしいのは、超人的なキャラクターがどうこうというよりも、スーツの中にいる人間、そしてその人間性を掘り下げているところだと思う。そういった意味でも、『ジェシカ・ジョーンズ』が大好き。


■「Netflixの作品はキャラクター描写が優れている」(クリステン)


ーークリステンは本作の出演が決まる前から、「Netflixに出たい!」と書いた紙を冷蔵庫に貼っていたそうですが、Netflixの魅力は何だと思いますか?


クリステン:昨今、最も質の高い作品を世に送り出しているのがNetflixだと思う。Netflixのオリジナルドラマはキャラクター描写が非常に優れていて、どのキャラクターもとてもリアルなの。そういうところがNetflixの魅力であり、私が好きなポイントでもあるわね。私は今回のジェシカのようなキャラクターを今までに演じたことがなかったから、製作陣もキャスティングのリスクがあったと思う。でも、そういうチャレンジングなキャスティングにも果敢に挑んでいるのが素晴らしいわね。一昔前でいうと、リンダ・カーデリーニが『フリークス学園』で「こんな役を?」みたいな。私が好きな『ブラッドライン』でいえば、ベン・メンデルソーンがそうね。『オレンジ・イズ・ニューブラック』だって、本当にみんな実在している人のように感じられるもの。そういったキャラクター描写が優れている理由のひとつには、作中に説明台詞をあまり入れなくていいというのがあるかもしれないわね。その時間をキャラクターを掘り下げることに使うことができるから。だからクリエイターも役者もみんなNetflixに出たがるんだと思うわ。私、Netflixの営業もできるわね(笑)。


ーー(笑)。レイチェルはいかがでしょうか?


レイチェル:(笑)。もともと私もNetflixのファンであり、ユーザーだったの。やっぱり1番の魅力は便利さね。観たいときに好きなだけ観ることができるし、全話イッキ観することもできる。これまでのテレビのモデルは、今ではとても不便よね。実際に現場に参加してみて実感したのは、Netflixは大きなリスクを負うことを恐れていないの。それに広告が入らないから、スポンサーのことを気にせずに、本当に作りたいもの、観客が観たいと思うものを作ることができる。それはとても素晴らしいと思ったし、そうあるべきだと思うわ。


ーー確かに本作には、アクションシーンやラブシーン、サスペンスフルな展開など、Netflixならではのチャレンジングな要素もたくさん詰まっていますよね。何か撮影で大変だったことはありましたか?


クリステン:テレビドラマで1番大変なのは、撮影のスケジューリングね。今回は深夜の撮影もたくさんあったし、撮影が朝までかかることもあったの。夜通し撮影して、翌朝5:30にまた集合みたいなときもあったわ。だから、そういったイレギュラーな生活に慣れることが1番大変だったわね。


レイチェル:私は作品の中に出たり入ったりしなければいけない助演という役割で、出ずっぱりではなかったから、クリステンとはある意味逆の挑戦だったと思う。私が演じたトリシュは「パッツィー・ウォーカー」という、マーベルコミックの中でも人気のキャラクターの要素も入っているから、キャラクターの温度を決めていくのも難しかったの。それでも、プロデューサーや各話の監督を信じてやり遂げたわ。


ーーそれぞれのキャラクターを演じて、新たな発見はありましたか?


レイチェル:確かにダークな要素を持った作品ではあるけど、また違う形で人生を考察する機会を与えてくれたわね。女性に対する暴力やトラウマ、虐待も含めた人間関係というものが、メタファー的に触れられている作品なの。そういうことに想いを馳せながら、トリシュを演じたわ。


クリステン:私は性格的にコントロールフリークなところがあって、周りをじっくり考察してしまうんだけど、『ジェシカ・ジョーンズ』の撮影は140日間に及び、その中でオフの日はたった2日間しかなかったの。もともと私は演技をしたいという想いがあってこういう仕事をしていて、『ジェシカ・ジョーンズ』では本当にたくさん演技をすることができた。撮影はもちろん大変だったけど、そのおかげで毎日現場をじっくり見ることができて、多くのことを学べた。最終的には、このレンズはこういう用途のために使われているだとか、この照明はこういう用途のためにこの位置にあるということも知ることができたの。まるで映画監督のブートキャンプに参加したような感じだったわ。そういう経験を積むことができたから、今後は監督にも挑戦したいと思っているの。(取材・文=宮川翔/写真=泉夏音)