今季F1最終戦となるアブダビGPの2日後となる12月1日に、ヤス・マリーナ・サーキットで行われるピレリのタイヤテストが、非公開となることに批判の声が上がっている。
テストを非公開で行うことは、ピレリが11月14日に発表。非公開にする理由をピレリの広報は次のように説明している。
「テストは1日しか時間がとれなかったため、朝9時から夜9時までメニューがギッシリと詰まっている。そのためセッション中にチームもピレリもメディア対応を行うことができない。セッションが終了してからも、我々もチーム関係者もテスト終了と同時に空港へ向かわなければならないので、記者会見を開く余裕がない。せっかく取材に来てもらっても対応できないなら、非公開にしたほうがいいだろうという結論に達した」
なぜ1日しか、日程が取れなかったのか。そもそも当テストは年頭には予定されていなかった、という理由がひとつ。さらに12月2日から3日まではアブダビでGP2のテストが予定されているため、1日のみの強行日程で行うしかなかった。
ピレリのエンジニアは技術的な側面からも非公開はやむをえないと言う。
「今回のタイヤテストは2016年に導入するウルトラソフトを試してもらうことが主な目的だが、そのタイヤは完成品ではなく、まだプロトタイプ。サイドウォールのカラーリングも紫ではなく、何もない真っ黒な状態だ。しかも、いくつかのタイプを用意して、別々のチームに我々が計画したプログラムでテストしてもらう。チームが新しいパーツを投入することもないし、セットアップも勝手に変更できないから、タイムは参考にならない。ピレリにとってはドライバーからのフィードバックは有益なものになるが、それはメディアを通して発表されるものではないと考えている。この件に関しては、ブラジルGPが開幕する前に各チームと話し合い、同意を得ている」
しかし、この決定に異を唱える者もいる。筆頭はフェラーリのマウリツィオ・アリバベーネ代表だ。スイスの『スピードウイーク』に対して「私は同意した覚えはないし、そもそも非公開には反対の立場だ」と明言している。
アリバベーネはフィリップモリス社のマーケティング部門で仕事をしていた経験があり、技術者たちが何もかも隠したがる傾向に対して警鐘を鳴らしてきた。今季の開幕前にスペイン・バルセロナで行われたテストでは「ファンの目線に立ってF1を見たい」という理由から、パドックを出て、グランドスタンドからテストを観戦していたほどである。
アリバベーネは「メディアに公開するだけでなく、スタンドを開放して一般のファンにもテストを見てもらうべきだ」と考えているのだろう。いかにもファンの存在を大切と考える、アリバベーネらしい反論である。
12月1日にテストをやることに問題はない。それを一般公開するのは、それほど難しいことではない。一度「非公開」のアナウンスはあったものの再検討するのに、まだ遅くはない。
(尾張正博)