今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。F1第18戦ブラジルGPの週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。レース結果だけにとらわれず、3日間コース上のプレーを重視して採点する。(最高点は星5つ☆☆☆☆☆)
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☆ ウィル・スティーブンス
前方ではニコ・ロズベルグ対ルイス・ハミルトン、最後方ではスティーブンス対アレクサンダー・ロッシ、それぞれのチームメイト・バトルが続けられた。マノー勢は、いつもこういうレースを互いに競いあっている。レースペース優先、リヤタイヤ管理に徹した彼が初めてロッシの前でフィニッシュ。最下位マノー・マルシャは、これで13レースに2台完走。ロータスやマクラーレン以上の完走率だ。
☆☆ ジェンソン・バトン
マクラーレン最後の勝利は、ここブラジル。2012年にバトンが記録してから、もう3年が経つ。アロンソに9秒311先行の14位で、日本GPから5レース連続完走。これは今季初めてだが、ランキング8位のザウバーを抜くには、あと10点必要。残るは1戦、1966年チーム創立シーズンに並ぶ年間9位となってしまうのか、嗚呼……。
☆☆ キミ・ライコネン
ナンバー2ではないけれども“ナンバー1.5”のような立場でチームプレーを黙々と遂行。決勝に向けて、使用済みの古いエンジン、ターボチャージャー、MGU-Hに交換せざるをえず、それでも今季5度目の4位を。ベッテルに3ストップ攻撃させ、彼に2ストップでフォローを指示したフェラーリに「結束力」を感じた。
☆☆☆ ルイス・ハミルトン
モナコに住む利点は、税制優遇措置というよりもプライバシーが守られるから。11月10日の未明に起きた交通事故が、どこからどういうルートで明らかになったのか不明だ。ロシアGPから6週間に4戦の過密日程、チャンピオン決定まで心労が続き、すっかり解放されたメキシコではしゃぎたかったのだろう。体調100%ではないなかで精一杯の2位、最終戦では王者らしく50回目のポールポジションと44勝に挑んでもらおう。
☆☆☆ バルテリ・ボッタス
グリッド降格で7番手からのスタートダッシュは際どいが鋭かった。狭いコース幅アウトいっぱい、ニコ・ヒュルケンベルグが右から迫るのを視認していたから、接触もなく抜けた。フェリペ・マッサがセットアップに苦しむ一方、なんとか最適化してメルセデスとフェラーリに次ぐ敢闘賞の5位。136点vs135点、アブダビGPでライコネンとランキング4位を争う──。
☆☆☆ ダニール・クビアト
従来型ルノーのままで、ダニエル・リカルドが使う新パワーユニットとの実戦比較が役割だった。正確に分析するためには常に全力で走らねばデータの信憑性が薄れる。予選前までは後位にまわったものの、Q3で7位、セクター2では4位を刻むベストアタック。レース中は直線スピードで“10km/h”優るヒュルケンベルグに再三仕掛けるも抜けなかった。来季構想に向け、チームに新旧ルノー比較データをたっぷりともたらしたのは確かだ。
☆☆☆☆ ロマン・グロージャン
エースは、ここでも14番手から8位へ「6ポジション・アップ」。今季入賞レースの大半と同じスタイルを貫いた。1コーナーで巧みにラインを変えるオーバーテイクは、まったく危なげない。ロータスにすれば、彼との別れはつらい。パリ同時多発テロ発生下、プロフェッショナルだった彼の態度に☆をプラス。
☆☆☆☆ ニコ・ヒュルケンベルグ
最も得意なコース、2010年の初ポールポジション後も毎年入賞を重ねて今年も6位。秘訣は12コーナーの脱出重視ドライビング、トラクションを高めるためにスローイン・ファストアウトに徹する。予選では上り坂全開区間セクター3が、3位タイム(!)、セクター2を犠牲にして5位グリッドを確保。フォース・インディア過去最高ランク「5位」を決定づける入賞によって2016年の分配金増収、さらには噂されている新スポンサー体制移行交渉にも弾みがつくだろう。
☆☆☆☆ ニコ・ロズベルグ
アップダウン高低差43m、逆バンクコーナーが点在するインテルラゴスで、前後左右バランスがとれたセッティングを構築。激しくない丁寧なコーナーワークによって5連続ポールポジション。タイヤマネージメントも、ほぼ完ぺきな2連勝。これが頭脳派ニコらしいクールな勝ち方。
☆☆☆☆☆ マックス・フェルスタッペン
データを覆すオーバーテイク技だ。直線1コーナー手前の速度は、予選最速のセルジオ・ペレス340.1km/hと比べて約15km/h落ち(予選)。数字上ではメルセデスのパワーユニットを抜けないことになるが、セクター2で相手を追いまわし、12コーナー入口でブロックラインをとらせた。そこで自分は理想のラインを正確に描き、高い速度をキープしたまま直線を駆け上がり背後へ。とどめは1コーナー減速ライン、外から回り込み、2コーナーでインをなぞった。相手がパストール・マルドナルドだったらハイリスクだが、ペレスなら無茶はしてこない……そこまで計算して、ますます腕を上げつつある。戦えるマシンでチャンピオンたちとのバトルを早く見たい。
☆☆☆☆☆ セバスチャン・ベッテル
57周目ロズベルグ1分14秒957、同じ周に1分15秒046。メルセデスに自己ベストラップで0.089秒差まで肉薄。今季13回目の表彰台、7度目の3位に彼自身もチームも達成感を爆発させた。雨がらみやセーフティカーに助けられたのではなく、真っ向勝負で得た手ごたえ。2台全滅のメキシコGP直後に自力でやり返した彼らは闘争心を高めてアブダビへ。現状パワーユニットのマイレッジ状況はメルセデスより、やや有利か。海抜0mコースで3勝しているベッテル、今季最後の挑戦!