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渋谷の街にHMVが復活ーー複合エンタメショップ「HMV&BOOKS TOKYO」潜入レポート

2015年11月19日 14:01  リアルサウンド

リアルサウンド

「HMV&BOOKS TOKYO」店内(撮影=中村拓海)

 11月19日、渋谷の街にHMV旗艦店が進化を遂げて帰ってきた。その名も「HMV&BOOKS TOKYO」。渋谷・公園通り「マルイシティ渋谷」跡地にオープンするライフスタイル提案型商業施設「渋谷モディ」内の5階から7階までの3フロアが店舗となる。


(関連:音楽の街=渋谷は復活するか? 『HMV』新店舗出店がもたらす効果


 オープンに先がけて11月17日、報道関係者向けの内覧会・説明会が開催された。


 説明会には、ローソンHMVエンタテインメント代表取締役社長・坂本健氏、同社HMV&BOOKS事業本部長・盛谷尚也氏が登壇し、出店の狙いや店舗概要について語った。ローソンチケットが、HMVの経営を引き継いだのは2010年のこと。2011年にローソンチケットとHMVを統合したときには、すでに渋谷のHMV旗艦店は撤退した後だった。「いつの日か渋谷にHMVを戻そう」「今の時代に戻ってくるのであれば、CD専門店ではなく新たな形で戻りたい」との思いを抱きながら、渋谷での新店舗準備を進めてきたという。


 「お店自体が日々編集されていくような、新しい出会いや発見があるショップをつくれないかと検討していたときに、モディのコンセプトと一致した。フロア内に他店舗が入り、コラボレーションするという点でも一致した」と坂本社長。各フロアには、カフェや雑貨店、占いコーナーなどが共存している。


 そんな「HMV&BOOKS TOKYO」は、書籍・音楽・映像を起点とした様々なエンタメ体験を、ユーザーに360度で提供する店舗形態が最大のポイントだ。


 まず、多様な商品を陳列した店内構成が、実にユニークである。CD、DVD、本だけでなく、一人のユーザーがいろいろなものを買える店舗を目指し、店内はコンセプトやテーマでカテゴライズされている。「世界の食と旅」「生きるヒント」「TOKYOカルチャー」というコンセプトで区切られた各フロアに並ぶ棚には、それぞれテーマが設定されており、CDや書籍とともに文房具や雑貨、エリアによっては食料品が並ぶ。


 音楽関連の商品に関しては、5階と7階を中心に展開されている。そこでは興味を持った音楽ジャンルやアーティストから派生するCDや書籍をあわせてチェックすることができ、興味の幅を広げることができそうだ。


 すべての商品は、それぞれのエリアの担当者がアイデアを出し合いながらセレクトしているという。現在の商品構成は、書籍6:CD3:グッズ1。若干書籍が多いイメージだが、状況を見ながら今後もラインナップを見直し、商品数の増加を行っていくとのこと。


 また、各フロアのイベントスペースで毎日イベントが開催されるというのも面白い試みの一つである。ライブ、トークショー、セミナー、ワークショップなど、年間の開催本数は約1000本を予定。取扱商材の幅広さはイベント内容の自由度にもつながり、他店舗では企画できないような様々な切り口のイベント開催が期待される。7階のイベントスペースには、InterFMのサテライトスタジオが隣接しており、公開生放送も連日行われるそうだ。


 そのような店舗展開へのこだわりとともに、ユーザーの利便性も考慮されているのは、ローソン含め数万店舗をグループに持つ、同社の強みではないだろうか。


 一つは、同社初の試みとして導入されたスマートフォン専用アプリだ。アプリをダウンロードすると、商品検索、在庫検索、予約、取り寄せを各自のスマートフォン上で行うことができる。さらに店内のWi-Fiに接続することで、取扱商品の試聴もできるという。店内設置のタブレット端末でも、商品やイベントに関する情報などを簡単に閲覧することができる。


 さらに、HMVオンラインで注文した商品の当日店頭受取、著名人の声が使われたセルフレジの導入、都内初のローソンチケットカウンターの設置など、ユーザーの利便性につながるサービスも各種用意されている。


 「リアルな場所で、感じながらモノと出会うことを大事にしていきたい」と説明会で坂本社長が述べたように、インターネットですべての物が手に入る時代、店舗に足を運ぶ最大の収穫は「思いがけない出会い」「実体験」である。「HMV&BOOKS TOKYO」は、時代や環境の変化に合わせ、CDショップという言葉だけにおさまらないスタイルの複合ショップとなった。様々な要素をミックスすることで、ユーザーと音楽との距離を自然と縮め、「思いがけない出会い」「実体験」が起こりやすい環境を作り出している。


 「HMV&BOOKS TOKYO」は、旧HMV渋谷店の存在が大きな影響を与えたように、音楽シーン全体に影響を与えるものとなるか。音楽好きならずとも、一度足を運び、その新たな空間を体感してみてはいかがだろうか。(久蔵千恵)


※記事初出時、誤表記がございました。訂正してお詫び申し上げます。