内閣府が発表した7-9月期のGDP(実質国内総生産)は前期比マイナス0.2%で、2四半期連続のマイナス成長となった。これを受けて甘利経済再生担当相は11月16日の会見で、日本労働組合総連合(連合)が来年度の春闘で2%程度の賃上げ要求方針を示したことに触れ、「(これでは足りないので)3%は目指してもらいたい」と述べた。
経済の好循環を実現するためには、より高い賃上げが必要という考えだ。賃上げを促す声は、海外からも出ている。来日中の国際通貨基金(IMF)副局長ジャン・フェレッティ氏は同じ日の会見で、「日本企業の賃金の伸びは緩やか。人手不足といわれるが、もっと賃上げすれば労働者は確保できる」と指摘したという。
労働者へのアンケートでも「賃金より安定」という回答が
こうした発言から、政府やIMFは日本の大手企業にはまだまだ賃上げの余力が残っていると見ていることが分かる。さらに、甘利氏は連合に対し「まず雇用という考えが定着していて、そこからなかなか脱し切れていない」とも指摘し、企業経営にプレッシャーをかけるよう促している。
確かに労組としては、特に大手企業の社員であれば、賃金を無理に上げて経営が不安定になるよりも、現状維持の方でいいと考える人も少なくないだろう。IMF副局長が指摘する「新しい雇用」にも関心が低く、むしろ自分の立場が危うくなるなら社会全体の雇用が増えなくていい、と考える可能性もある。
実際、働く人を対象としたアンケートでも、保守的な結果が出ている。日本法規情報が働く男女1263人から回答を得た調査でも、有名大企業で働きたい理由として「やりがいのある仕事ができそうだから」(31.5%)や「将来的に安定しているから」(20.8%)、「有名だから」(12.9%)がトップ3となり、「賃金が高そうだから」(12.8%)を上回った。
「社会全体の持続的成長」をねらって賃上げを促す政府と、「当面の安定」を優先して現状維持を願う大企業の社員とでは、思惑が微妙に食い違っているのかもしれない。
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