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Kis-My-Ft2と『キスマイBUSAIKU!?』が持つ新しさと可能性 グループは今後どう変化していく?

2015年11月17日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

(C)タナカケンイチ

 Kis-My-Ft2の冠番組『キスマイBUSAIKU!?』(フジテレビ)の11月16日放送回に、ゲストとしてTOSHIが出演。「失恋した先輩をなぐさめて片思いを伝えるラブソング」をテーマに、メンバーがかっこ良さを競い合った。


 同番組は、Kis-My-Ft2のメンバーが“自分のカッコ良さが最も出る瞬間”をテーマに、各メンバーが本気で“かっこいい”と思うシーンを考え、自らが主演した映像を制作。そのセルフプロデュースした映像を、キスマイのことをよく知らない女性100人に審査してもらい、1位(=チョーカッコイイ)から7位(=BUSAIKU)まで順位付けされるという体当たりな企画を売りにしており、人気や見た目の優劣ではなく、立ち居振る舞いで毎回変化するガチさに、ファンやメンバーが毎回一喜一憂している。


 また、オンエアをきっかけにして横尾渉・宮田俊哉・二階堂高嗣・千賀健永による派生ユニット・舞祭組が誕生するなど、グループの躍進に大きく影響している同番組だが、ジャニーズ史においてはどう位置づけることが出来るだろうか。『中居正広という生き方』や『紅白歌合戦と日本人』の著者で、リアルサウンドで『ジャニーズとテレビ史』を連載に持つ社会学者の太田省一氏はこう解説する。


「『キスマイBUSAIKU!?』が他のジャニーズタレントの持つ冠番組と違う面は、メンバーが行う立ち居振る舞いを評価するのが、ファンではなく一般女性に近い感性の人たちだということです。ジャニーズの番組がジャニーズファンの視聴者を中心に考えるのは当然ですが、『キスマイBUSAIKU!?』はそれに加えてストレートに一般女性の意見が反映されることで風通しが良いものになっていて、ファンにもそうでない人にとっても面白い企画性を持ったものになっています。また、一般女性が考えていることを知れる“恋愛マニュアル”として機能している側面もあり、男性視聴者を獲得できていることも、ファン以外へ人気が波及している理由の一つなのかもしれません」


 また、同氏はグループの前列と後列メンバーに生じる“格差”を逆手に取った舞祭組の登場も、『キスマイBUSAIKU!?』がオリジナリティを持った契機だと指摘する。


「舞祭組の活動は毎回のランキング企画とは別に、SMAPの中居正広がプロデュースを手がける形で進んでおり、Kis-My-Ft2というグループの中だけで完結していません。また、バラエティ番組が広く浸透していく条件として、ストーリーが生まれていくこと、いろんな展開が次々と生まれることで視聴者を飽きさせないという仕掛けが必要です。舞祭組にはこのストーリー感があり、グループが誕生した後、他局の番組にも活躍の場が広がり、また先日アルバムが出るとサプライズ発表されて今度はチャート1位を獲得できるかどうかなど、期待感が持続していくところも番組自体のファンを増やしているといえるでしょう」


 続けて太田氏は、グループ全体に親しみやすさが生まれたこと、光る個性を見つけたことも同番組の功績だと述べた。


「また、グループ全体として“メンバーの素を出していく”うえで必要なバラエティ力が、2012年4月4日から2012年9月26日に放送されていた『濱キス』(テレビ朝日系)などから一貫して培われてきた結果、例えば藤ヶ谷太輔だとワイルドでクールに、玉森裕太は優しいソフトな対応、横尾は料理の才能、千賀はメンバーから“女子力”と言われる気遣い、二階堂は場を仕切る能力、宮田は普段のオタクキャラとたまに見せる二枚目な一面のギャップなど、それぞれが個性を打ち出すことに成功しました。そして『キスマイBUSAIKU!?』では毎回のテーマによって、その個性とかみ合うかどうかで順位がどんどん変化します。イケメンキャラであるメンバーですら最下位になることが起こっていて、個々がよりお茶の間に親しまれやすくなるような役割を果たしていることも同番組の功績だと考えられます」


 最後に同氏は、『キスマイBUSAIKU!?』が今後のグループ、ジャニーズ史にもたらす可能性について、こう語った。


「これまでは“前列・後列”などをタブーにするのではなく、積極的に活用することで良い結果が生まれていましたが、最近はするめさんに扮した中居から『北山君もブサイクなんですよね』というフリがあるなど、またひとつ物語が進展しそうな気配です。大きな方向性としては、今後は全員が同列に立ってそれぞれの個性を発揮できるように持っていき、SMAPや嵐のようなグループになっていくようなストーリーも期待ができますね。舞祭組の4人も含めて、演技や歌、ダンス、あるいはMCなど、それぞれがさらに新しい個性を見つけて発揮していく段階になるのが理想のような気がします。例えば、演技面では今のところ藤ヶ谷や玉森の活動が目立ちますが、北山も『家族狩り』や『サイレーン』などでうまく脇役的ポジションをこなして、“ジャニーズだから”という価値観にとらわれない、老若男女に親しまれる方向性を見せているように、すでにそうした次の段階になりつつあると思うので、今後全員がどのように変化していくか楽しみですね」


 Kis-My-Ft2は個々をどのように打ち出し、今後グループとしてどのように成長していくのか。中堅に差し掛かるキャリアを前に、派生グループを含む今後の展開に注目したい。(向原康太)