2015年11月16日 12:41 弁護士ドットコム
円安などを背景に日本を訪れる外国人観光客が急増するなか、旅行客に一般の家屋を貸し出す「民泊」に注目が集まっている。宿泊施設の不足を補うとして期待されるいっぽうで、トラブルも起きている。11月上旬には、京都府内の賃貸マンションが、無許可でホテルのように大勢の旅行客を泊めていたことがわかり、メディアをにぎわせた。
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報道によれば、京都府警は、このマンションの居室を30部屋以上、借り上げていた東京都内の旅行会社顧問ら2人について捜査を進めている。市の許可を得ずに7月以降、中国人の観光客ら300人を宿泊させたとして、旅館業法違反の疑いがあるという。
これほど大規模なケースはまれだろうが、最近は「Airbnb」といったネットの予約仲介サービスも充実しているので、空き家や空き部屋があれば、簡単に貸し出しを始められそうだ。では、「民泊」をスタートするうえで、どんな注意が必要だろうか。京都市で空き家対策に取り組み、民泊事情にくわしい中島宏樹弁護士に話をきいた。
「民泊をしようとするホスト側は、通常、旅館業法上の許可を取得する必要があるという点に、まず注意しなければなりません。
マンションの居室を観光客相手に対して、繰り返し、宿泊料を取って賃貸することは、旅館業に該当します。これは、都道府県知事等の許可が必要です。もし、無許可で営業すると、6カ月以下の懲役または3万円以下の罰金が課せられることとなります。
もっとも、たとえ許可を申請したとしても、フロントの設置が求められるなどの理由により、一般のマンションで旅館業許可の要件を満たすことができる物件は、そう多くないでしょう」
仮に許可が取れた場合、営業にあたって注意すべきことはあるだろうか。
「周辺住民との関係には十分に配慮しなければなりません。民泊をめぐっては周辺住民から、『民泊の宿泊客が深夜に騒ぐ』『共用部分を汚す』『インターホンを鳴らされた』『不特定多数人が出入りしており、セキュリティーが不安』などの苦情が寄せられています。
また、誰が使用しているのか把握できないことから、不法滞在者の隠れ蓑や違法営業の拠点等に使用される恐れがあるという不安もあります。さらに、感染症等が発生した場合など不測の事態に対処が困難となるなどの問題もはらんでいます。このような事態が続くと、マンションの管理規約により、民泊としての運用を禁じられる物件も出てくることが想定されます。
また、ホスト側に納税義務が発生するということも忘れないでください。ホストは、個人事業主として収益を上げていることになりますので、民泊の営業が軌道にのり、収益が上がってくると、確定申告の義務が発生します。申告義務を果たさないと、事後的に追徴課税等がなされるおそれがあります」
ただ、トラブルはあっても、民泊は各地でニーズが高い。今後も増えていきそうだ。
「そうですね。外国人観光客の増加で需要は高まり、一部の自治体では、特区が設けられるなど空家の活用法として脚光を浴びています。しかし、くれぐれも、民泊を始める際は、法的な面、近隣への影響などに十分、留意してくださいね」
中島弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
中島 宏樹(なかじま・ひろき)弁護士
弁護士法人大江橋法律事務所、法テラス広島法律事務所を経て弁護士法人京阪藤和法律事務所京都事務所に至る。京都弁護士会所属
京都弁護士会:刑事委員会(裁判員部会)、民暴・非弁取締委員会、法教育委員会、消費者問題委員会
日本弁護士連合会:貧困問題対策本部
NPO法人京都町並み保存協議会:代表理事
事務所名:弁護士法人京阪藤和法律事務所京都事務所
事務所URL:http://www.keihan-towa.com/