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4度目のドラマ化『南くんの恋人』注目ポイントは? 作品の背景とキャストの魅力

2015年11月16日 07:11  リアルサウンド

リアルサウンド

『南くんの恋人~my little lover』公式サイト

 フジテレビの月曜深夜枠で現在放送中の『南くんの恋人~my little lover』。80年代後半に発表された内田春菊原作のこの物語は、今回で4度目のドラマ化となる。テレビドラマ黎明期には、同じ作品のリメイクが行われることは決して珍しいことではなかったが、平成に入ってからだと『金田一少年の事件簿』か本作ぐらいであろうか。


 ある日突然身長が16cmになってしまった女子高生と、その恋人である南くんとの恋愛模様を描いたファンタジー要素の強いこのラブストーリーが、最初にドラマ化されたのは90年のことで、そのときは単発の2時間ドラマであった。その後、94年に作られた高橋由美子と武田真治による連続ドラマは、岡田惠和の脚本のもと、平均視聴率15%を超えるヒットとなり、当時中高生から絶大な支持を集めた月曜20時テレビ朝日のドラマ・イン枠の中でも、一際輝きを放つ名作として語り継がれている。もっとも、2004年に制作された深田恭子と二宮和也による第3作目が、いま多くの人にとって記憶に新しい『南くんの恋人』であろうか。『アンフェア』シリーズでも知られる佐藤嗣麻子や、『ただ、君を愛してる』の新城毅彦が演出を務め、脚本は『やまとなでしこ』の中園ミホが務めていたので、安定したクオリティであったことはいうまでもない。今回こうして11年ぶりに再ドラマ化が実現したのも、これまで作られた作品が、名実ともに優れた作品であったからに他ならない。


 思い返してみれば、今回の放送枠と同じフジテレビの深夜で以前『イタズラなKiss』が放送されていた。こちらもテレビ朝日の月曜ドラマ・イン枠で人気を博した同名ドラマのリメイク版であり、今回と同様に小中和哉が演出を務めていた。小中といえば同枠で95年に放送された『さんかくはぁと』の演出を手がけたことでも知られており、このふたつのドラマ枠との関係は非常に深いものと思われる。20年ほど前に一斉を風靡した月曜ドラマ・イン枠は、菅野美穂主演の『イグアナの娘』や、二宮和也と渋谷すばる共演の『あぶない放課後』などの伝説的傑作を多く生み出しただけに、今後この枠から新たにリメイクされるドラマが出てくることも大いに期待できる。


 今回の『南くんの恋人』で注目すべきは、やはり主演カップルのふたりであろう。ヒロインちよみを演じるのは山本舞香。初代の石田ひかりは17歳でこの役柄を演じていたので、現在18歳の彼女はそれ以来となるほぼリアルタイムの年齢でのちよみ役となる。地元鳥取の美少女図鑑でデビューしたのち、三井のリハウスの第14代目リハウスガールを務め、ニコラのモデルとして知名度をあげるという、まさに現在の若手女優の中でも理想的な道のりを進んできた彼女。今年春にヒットを記録した『暗殺教室』や、先日東京国際映画祭でお披露目された主演作『桜ノ雨』の公開も控える注目株である。すでに民放ドラマのレギュラーからNHK大河ドラマの出演経歴も持ち、まだ5年ほどの経歴の中で急成長を遂げているのだ。


 また、相手役である〝南くん〟を演じる中川大志もまた、山本舞香と同様にNHKの大河ドラマへの出演歴を持ち、ニコラのメンズモデルを務めたという、同じような経歴を持っている17歳である。代表作と言えば『家政婦のミタ』での長男役であろうか。今後も人気アニメの実写化となる『四月は君の嘘』への出演や、年末に公開される『ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』で、タイトルロールとなっているイタリアから日本にやってくる少年アンドレアの声を演じるのである。


 話題作への出演が相次ぐニコラ出身のモデルの共演は、それを見てきている中高生世代からすれば、非常に気になるドラマであることは間違いないだろう。とはいえ、平日の深夜枠に中高生向けのドラマをやるというのは、いくら録画文化が中心になっているとはいえ、なんだか寂しいところである。そう思っていると、なんと第2話の放送終了翌日である11月17日から早くもDVDのレンタルが始まるというのだから、ありがたい限りである。


 ところで、もうひとつ注目しておかなければならないことが、シリーズを通して常に課題となってきた、原作のラストをどう変えるか、ということである。原作では転落事故によって、ちよみが死亡してしまうという残酷な結末を迎えるのであるが、それまで物語を追ってきた視聴者には明らかにショッキングすぎる幕切れであり、これまでのドラマ化の際にはほぼ全て結末を変えられてきた。94年版も、最終回では悲しい結末を迎えながらも、その後にスペシャル版を制作することで、ショッキングさを中和させるという方法を取っていたのである。今回も、あらかじめ原作とは異なるエンディングが用意されていることが公言されているので、それがどういう着地点として描かれるのかは注目したいところである。(久保田和馬)