スーパーGT第8戦は15日、ツインリンクもてぎで決勝レースが行われ、ポールシッターのTOYOTA PRIUS apr GTが、セーフティカータイミングの不運もはねのけトップチェッカー。今季2勝目を飾った。2位はグッドスマイル 初音ミク SLS、3位はGAINER TANAX SLSが続いている。
朝のフリー走行終了間際に雨が降り止んだツインリンクもてぎ。スターティンググリッドの際も路面は濡れていたが、数周で乾き始めるコンディションだった。ところが決勝直前のグリッドウォーク中に大粒の雨が降り始める。雨は10分程度で止んだものの、各チームともウエットタイヤを装着してのスタートとなった。
そして定刻の13時40分、地元栃木県警の先導による1周のパレードラップのあと、1周のフォーメーションラップが行われたが、この最中には雲の隙間から青空も見える、先を読むのが難しい天候となっていた。
迎えたオープニングラップは大きな混乱もなく、ポールシッターのTOYOTA PRIUS apr GTを先頭に1コーナーへ。ここで3番手スタートだったグッドスマイル 初音ミク SLSが2番手のGAINER TANAX SLSのイン側に入り、2コーナーの立ち上がりでオーバーテイク。またその後方ではマネパ ランボルギーニGT3がVivaC 86 MCを交わし4番手までポジションを上げている。なお、マネパ ランボルギーニには朝のフリー走行中に黄旗区間で追い越しがあったとして、ドライブスルーペナルティが課されている。
そして1周目終わり、16番手スタートだったUPGARAGE BANDOH 86がフロント部分を大破して状態で緊急ピットイン。また、90度コーナーでは15番手スタートのB-MAX NDDP GT-Rが右フロントを壊し、グラベルでストップ。リタイアすることとなってしまった。この2台には接触があったようだが、審議の結果レーシングアクシデントと裁定されている。
7周目、13番手スタートだったARTA CR-Zが猛プッシュをみせ、6番手まで浮上。前を走るExcellence Porscheの後方に迫ると、ヘアピンの立ち上がりでオーバーテイク。5番手を奪っていく。
トップのTOYOTA PRIUSは8周目にはギャップを12秒まで広げ、独走態勢に入る。2番手には初音ミクSLSが続き、その0.5秒後方にGAINER SLSが続き、接近した2位争いを繰り広げる。両車は1コーナーでテール・トゥー・ノーズにの状態で1コーナーへ飛び込むが、前をいく初音ミクSLSがポジションをキープした。しかし、その後も2台はテール・トゥー・ノーズの状態でバトルを繰り広げ、12周目にGAINER SLSがオーバーテイク。2番手に浮上した。
2番手争いが白熱している間に、トップのTOYOTA PRIUSはリードを拡大。12周目には25秒もの大量リードを構築することに成功した。2番手にGAINER SLS、3番手に初音ミクSLSが続いている。4番手はマネパ ランボルギーニがペナルティを消化したことでARTA CR-Zが浮上。5番手にはGAINER TANAX GT-Rがつけている。また、14周目にはテール・トゥー・ノーズ状態で6位争いを繰り広げていたSUBARU BRZ R&D SPORTがS字区間でExcellence Porscheをオーバーテイクしている。
18周目には3番手の初音ミクSLSの後方にARTA CR-Zが急接近。V字コーナーの立ち上がりで、後方にピタリとつけるとヘアピンでイン側に飛び込みサイド・バイ・サイドでバックストレートへ。ここでは立ち上がり加速にアドバンテージのある初音ミクSLSがポジションを守っていく。しかし、ARTA CR-Zは90度コーナー~ビクトリーコーナーでもスリップに入り、ホームストレートで再びサイド・バイ・サイドになり1コーナーへ。ここはイン側のラインにつけたARTA CR-Zに軍配があがり、3番手へ浮上した。
22周目終わり、4番手の初音ミクSLSが先陣を切りピットイン。GAINER GT-Rもルーティンのピットワークを実施。初音ミクSLSは5番手で、GAINER GT-Rは7番手でコースへ復帰した。また、その4周後には2番手、3番手にあがっていたARTA CR-Z、SUBARU BRZもピット作業を行っている。
直後の27周目、2コーナーの立ち上がりでGT500クラスのS Road MOLA TG-RとPACIFCマクラーレンwithμ'sが接触したのか、S Road GT-Rのリヤカウルが大破。パーツが散乱したためセーフティカーが導入された。
この時点での順位は、トップがTOYOTA PRIUS、2番手にGAINER SLS、3番手にARTA CR-Z、4番手に初音ミク SLS、5番手にSUBARU BR-Zと続いている。なお、トップのTOYOTA PRIUSのみルーティンのピット作業を行っていない状態だ。
隊列が整った30周目にピットレーンがオープン。ここでトップにつけていたTOYOTA PRIUSがルーティンのピットへ。大きく順位を落とすかと思われたが、前半スティントを担当した嵯峨宏紀が5番手以下を周回遅れにしていたため、4番手でレースに復帰した。トップには代わってGAINER SLSが浮上した。
31周目にセーフティカーランが終了。レースが再開された。リスタートでは大きな混乱もなく、1、2コーナーをクリアしていく。34周目にはトップのGAINER SLSのすぐ後方には初音ミク SLSが接近。ヘアピンの飛び込みで並びかけると、立ち上がりでイン側につけた初音ミクSLSがオーバーテイク。トップに躍り出た。
その後方では、ピットのタイミングで首位の座を失ったTOYOTA PRIUSの中山雄一が35周目のヘアピンでARTA CR-Zをオーバーテイクし3番手に浮上。その翌周の最終コーナーでは2番手GAINER SLSを捉えることに成功した。
中山はトップを走る初音ミク SLSの谷口信輝まで2.3秒まで迫るが、谷口はそれに反応して1分50秒前半のタイムを連発。追いかける中山はフレッシュなタイヤを履く1分49秒台にいれるタイムで応戦し、ギャップをじりじりと縮めていく。
そして42周目、GT500クラスのトップ争いを巧みに利用した中山が谷口に急接近。5コーナーの飛び込みでアウト側からオーバーテイクし、首位の座を奪い返した。2番手に後退した谷口は、じりじりとギャップを広げられてしまっている。
トップにたった中山は、1分50秒台で周回を重ね、残り3周の時点で3.3秒のマージンを構築したかに思えたが、残り2周で谷口が1.5秒近くマージンを削り急接近。1秒以内まで接近して最終ラップへ向かっていく。しかし、最終ラップでは中山が意地の走りをみせ、谷口を寄せつけず。そのままトップでチェッカーを受けた。2位は初音ミク SLS、3位にはGAINER SLSがつけ、メルセデスSLSが2位、3位を獲得した。4位はこれがラストレースとなるARTA CR-Z、5位はLEON SLSとなっている。
チェッカー後、嵯峨は「セーフティカーが導入された時はレースが終わったと思いましたが、中山選手がストレートで勝るSLSをうまく抜いてくれました」と語ると、中山は「ピットアウト後、4位で復帰できましたし、マシンもタイヤも完璧だったので、あとは僕が頑張るだけかなと。なにより、金曽さん(金曽裕人監督)が作ったマシンで勝てたことが嬉しいです」とコメント。これを聞いた金曽監督は涙をこらえきれない様子だった。