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HaKUが新曲で打ち出した、オリジナルな音楽と自信「好きにやってたどり着けた感覚がある」

2015年11月13日 11:11  リアルサウンド

リアルサウンド

HaKU

 HaKUが11月18日、ニューシングル『衝動』をリリースする。10月25日(MBS/TBSは10月27日~)からスタートしたTVドラマ『監獄学園-プリズンスクール-』のオープニングテーマに起用されている表題曲は、ドラマのイメージに沿いつつ、HaKUの現在進行形の音楽性が全面に出た仕上がりだ。バンド演奏とエレクトロニック的要素を拮抗させつつ、ツインボーカルがポップかつ緊張度の高い音空間を生み出す。今回は辻村有記(Vo&Gu)と三好春奈(Ba&Vo)にインタビュー。サウンドや歌詞を中心に今のHaKUについて語ってもらった。(編集部)


・「自分たちの窓口のような曲になれば」(辻村有記)


ーーHaKUの新曲「衝動」は、ドラマ『監獄学園-プリズンスクール-』の主題歌です。辻村さんと三好さんの男女ツインボーカルで、サウンドもエレクトロニック感を前面に出したナンバーとなっていますが、曲自体はどのようにできていったんですか。


辻村有記(以下、辻村):今回、ドラマの書き下ろしは初めてだったんです。原作のマンガを読ませていただいたら、曲のイメージがすぐ出て来て、インスピレーションをそのまま形にしました。この曲を作る伏線になったのが、前作のミニアルバム『I HEAR YOU』で、僕も28歳にして、ポップなものができるんじゃないかなって、挑戦してみようって気持ちがあったんですよ。三好(春奈)がメインボーカルを取った「happiness ~シアワセノオト~」をリード曲にしたり、自分にとってのポップってものを突き詰めて、HaKUの振り幅が大きくなった作品だったんです。日本で音楽をやる意味を自分の中で見つけられた気もしましたね。


ーー前作『I HEAR YOU』がバンドのターニングポイントとなり、新曲への布石となったと。


辻村:はい。間口を広げた結果、自分では歌えない歌詞も、彼女なら歌えるとか、なんでもできるんじゃないかって思えたんです。


三好春奈(以下、三好):私がリードで歌うことで、(辻村)有記さんの中でも、歌詞も一歩踏み出せて書くことができたそうです。


辻村:前作の経験からの新曲「衝動」で、今のHaKUがやりたいこと、みんなで聴いてもらえるもの、ドラマのイメージに沿ったものが出せた感がありますね。


ーー現在進行形のHaKUが、「衝動」に込められたと。


辻村:そうです。サウンドはソリッドな自分たちの攻撃的なダンスミュージックを基本に置いて、ポップで耳に馴染むメロディラインだったり、歌詞はいろんな人たちに聴いてもらえる言葉を選んで考えました。今回はドラマだったので、聴いてくれる人もたくさんいるってことで、自分たちの窓口のような曲になればなって気持ちで作りました。


ーーツインボーカルにしたきっかけは?


辻村:今までもツインで歌ってる曲もあったんですけど、この曲に関しては、特にこの形が合ってるからやったって感じですね。


ーーサビでの突き抜け感が印象的ですね。


辻村:テレビで聴いてもらえるのは30秒なので、その中で、どうしたらワンコーラスをフルで聴いてもらえるのかを考えました。BPM143くらいで作ればきっちりハマるとか、今までやったことない挑戦でしたね。あと、サビのメロディと歌詞を、今まで出したことがないくらい、いろんなパターンを出したんです。最終的に、一番耳に残るものを形にしました。


ーー作っていく面白さもありましたか。


辻村:すごく楽しかったです。全て初めての経験だったので無我夢中でやりました。でも、できないって悩むこともなくて、逆にアイディアが多すぎて、それをどうするかってことの方が多かったです。


三好:2人で歌うので、キーをどうするか何回か試したり。


辻村:2人の歌のおいしいところはどこだって見つけるのは大変でしたね。でもそれも、いい意味での大変さでした。


ーーシンセ音も多用されていますが、サウンド面でこだわったところは?


辻村:個人的にエレクトロが好きなので、ここ1年ぐらい楽曲にシークエンスをバンドの音と混ぜたらどうなるかっていうのを考えていて、最近、上手くハマってきたんです。シークエンスのシンセを鳴らしたらギターはこう入れようとか、見えるようになってきたんですよ。今回もやってて楽しかったです。


ーー前回のインタビューも、EDMが好きだってお話してましたね。今は好きな音楽を、バンドの音として上手くミックスした形で出せるようになってきたと。あと、グルーヴ感がありますが、三好さんがベースで心がけたことは?


三好:シンセのクリック通りのリズムとジャストで弾いてもしっくりこなくて、ドラムの長谷川(真也)とどうするって話して、もっとノリを活かしてちょっとずれてもいいんじゃないって感じはありました。生で来るところはグイグイ押して、上ものの美しい部分はシンセで補えたらなって。今までも、ギターのリフにパンチがあったり、ベースもがっつりリズムが効いてたりってフレーズが多かったんですけど、今回はそれとシンセのバランスが上手くハマりました。


・「そこまで具体的に情景が浮かぶ歌詞ってなかった」(三好春奈)


ーー歌詞は、かなりストレートな表現がされています。


辻村:結構ストレートですね。“恋の衝動”って言えちゃうぜ、みたいな(笑)。これも前作で気づけたとこなんです。昔は、聴く人によって答えが何通りもある、聴くたびに答えが変わって受け取れるような歌詞の書き方をしてたんです。シンプルな言葉をあえて使わず、いろんな鎧を着せて届けるみたいな。それはそれで好きだけど、そこを経て、お客さんに言葉を伝えるときに、わかり易い言葉を使った方がいいんじゃないかなって思うようになってきたんです。シンプルな言葉の組み合わせ方で、詩的になったり、感動させるものになったりできるし。さらに音と組み合わさることで、オリジナルになるって考えられるようになってきたんです。あと、この曲は書き下ろしだったので、原作に答えやヒントがあったので、書いたらナチュラルにできましたね。


ーー男女の距離感、近づきたいって思いが描かれていますが。


辻村:原作がエロいじゃないですか。でも読み進めていったらハマっちゃって。読んでるとめっちゃ切なくなるんですよね。根本的なところは、自分らの学生時代と全然変わらないんですよ。心の揺れ動くさま、触れたくても触れられない思春期の距離感ってあるじゃないですか。その距離感が派手になってるだけで。なので、ギリギリの距離感を大事に歌詞にしてみようと思いました。人物の気持ちの揺れ動くさまを歌詞の中で上手く書きたいなと思っていたら、「衝動」って言葉が出てきたんです。


ーー「衝動」って、初期衝動って言葉があるように、人間の根本の感情を突き動かすものですし、曲の雰囲気にしっかりハマっていますね。あと、“モノクロの感情 始まりの口付けで鮮やかに色をつけて”ってところは、HaKUのバンドのらしさが出てます。


辻村:そこは考えました。1サビはストレートな表現で、2番のサビはもっと詩的に自分の気持ちを書いた方が合ってるんじゃないかなと思ったんです。


三好:私は、2番の“キミのその瞳で見つめてほしいよ 呼吸が止まって鼓動が聞こえる”ってフレーズが好きですね。今まで、そこまで具体的に情景が浮かぶ歌詞ってなかったので、すごくイメージもしやすかったです。もっとこうやって歌おうかな?って考えるのも楽しかったですし、歌の表情もつけやすいですね。


ーーあと、ラストのサビに向かっていくところのタメや、ブレイクが入ることでさらに気持ちの飛距離感が伸びるなと。


辻村:そこもかなりこだわりました。「衝動」のドキドキする感情を最後にもっと演出できたなって。


ーーそして、ミュージックビデオは、ドラマの井口昇さんが監督で、主人公の中川大志さん、武田玲奈さんが出演されたショートムービー的な作品となっています。


辻村:ストーリー性のある実写で、役者さんが出てくれたMVは初めてなんです。ドラマを作っている方たちが、この曲に対してまた新たな世界を作ってくれるのがうれしくて。


ーードラマのパラレルワールドって感覚ですよね。


辻村:そうですね。井口さんは、寿司が人を喰う映画『デッド寿司』とか、過去の作品がすごくて(笑)、怖い人なのかなと思いながら事前に打ち合わせに行ったんですけど、とても笑顔の素晴らしい人でした。


三好:もっと強面の方を想像してたら、すごくニコニコって、穏やかな方で。


辻村:しかも、カッコいいの撮りたいっておっしゃってくれたんです。井口監督も、普通にカッコいいものを撮るのがあまりなかったらしくて(笑)。


三好:MVを撮ることもあまりなかったらしくて、すごく気合を入れてくださって。最初のプロットの段階でしっくりきました。


辻村:あと、役者さんも出てくださることが決まったときに、僕から監督にダンスシーンを入れたいって言ったんです。


ーー中川さんと武田さんのダンスは、辻村さん発信だったんですか。


辻村:そうなんです。僕の中では役者さんはなんでもできるってイメージがあったので(笑)。1度見たら踊りたくなる、頭に残る振り付けを考えていただいて。 そしたら中川くんも武田さんも切なくてキュンとくるダンスを踊ってくれて。バンドとダンスのバランスが面白かったです。僕らの音楽はダンスミュージックって言ってるので、いつかMVにダンスを入れたかったんです。このタイミングでできたのはすごくうれしかったし、いいMVにしていただいたなと思います。


ーーバンドの演奏シーンも、すごく躍動感のあるカッコいい感じになりましたね。


三好:とてもいい青い光の感じになってるんです。カメラワークにしろ、監督の頭の中にあったものなんですよ。


辻村:あと、ストーリーにしていただくのはプロの方たちなので、お2人の演技も素晴らしかったですし、ストーリー性のある映像作品になってほんと感動でした。


・「いい感じでアップデートしていけてる」(辻村有記)


ーーでは、カップリングの「泣くよ」について聞かせてください。ピアノの音の入ったポストロック感から、サビでガンと盛り上がる曲です。ボーカルのキーも高いですが歌い方がソフトですね。


辻村:普通の男のボーカルにしては高いと思いますけど、でもキー的には過去の曲よりも低いんです。「衝動」も「泣くよ」もですし、前作からキーが全体的に低くなったんです。それは、自分の歌で言葉が届きやすいキー、感情を上手く伝えるにはここがいいっていうのが見つけられたからなんです。


三好:有記さんは、今までゴツゴツした歌い方だったので、ここまで柔らかい歌い方をしたのは初めてですね。


ーー歌でも新しい挑戦をしていると。歌詞は、苦悩もありながら生きていく思いが歌われています。


辻村:歌詞は、自分の感情のまま書いたものなんです。ひとりで電車に乗っていたら、嫌だなって思ったことがあって、そしたら言葉がすぐに出たんです。今まで、街中で歩いてて言葉が出るとかなかったんです。そしたら、緩急がある感情が乗った曲になったなって。Aメロは呟くように気持ちを吐露して、サビは感情の赴くまま歌い上げるって。


三好:「衝動」のカップリングに入れるとしたらこれがいいんじゃないってメンバーで決めたんです。今までの作品は、タイトルにしても曲のアレンジでもカッコつけるみたいに、いろいろ武装してたことがあったんですが、有記さんの中から出てくるものがどんどん素直になってきて、メンバーもみんなシンプルに演奏を楽しめるようになってきました。「泣くよ」は、それがすごく反映された曲だなと思います。


辻村:この曲、全体的に好きなんですよ(笑)。途中でテーマパークのパレードみたいな雰囲気になったりするし。ドラマでHaKUを知って「衝動」を聴いてもらった方が、そのあとにこの曲を聴いて、HaKUの別の部分も感じてもらえたらうれしいですね。


ーーあと、「衝動」リリース記念ワンマンライブが11月18日に大阪、11月24日に東京で行われますが、どんなライブになりそうですか。


辻村:今までやったことないこともやるし、初めてワンマンをやったときのような気持ちがあるんですよ。恐怖心じゃなくて、“これが今の自分たちの音楽なんだ”っていうのをどうやって楽しんでもらえるかなって。もうちょっと幅広くHaKUの世界を届けられるような選曲だったり仕掛けで、楽しんでもらえるライブになると思ってます。


三好:まさにいろんな「衝動」が詰まったセットリストになってます。なんだか、セトリを組んだりインタビューを受けたりするたびに、「衝動」って言葉の強さを感じてますね。


ーー楽曲もライブも、次のページに進んで行く変化の時期なんですね。


辻村:そうですね。気持ち的にはすごくいい状態です。変わらざるをえないじゃなくて、自分らで好きにやってたどり着けた感覚があるので。やっぱり、なんでもできるんだなっていうのは改めて思いますね。昔から、HaKUは真っ白なイメージだから何にも染まらないってことを言い続けてたけど、自分たちで “HaKUってこうだよね”って決めてたところがあったんです。染まらないでやりたいことやればいいじゃんってところに立ち返ることができたのは、自分らにとってすごく大きいですね。


ーーしかも、バージョンアップした形でバンドの武器を見直せるわけですし。


辻村:いい感じでアップデートしていけてる感じはします。実はもう新しい曲もどんどん作っていて、それはHaKUでしかなしえないサウンドになってます。この先も存分に楽しみにしてほしいです。それくらいの自信はありますね。


(取材・文=土屋恵介)