2015年11月12日 11:21 弁護士ドットコム
勤務時間中にスマートフォンでゲームをしていたとして、埼玉県飯能市の男性職員が10月中旬、市から戒告処分を受けた。飯能市によると、水道部に所属する職員は約1年前から、勤務時間内の移動中やトイレなどで、1回10分程度スマホゲームをしていたという。
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職員が参加していたのは、実際の観光地や公共機関などをインターネット上で取り合う陣取りゲーム。飯能市役所もその陣地の一つで、他の参加者が市役所を攻めると妨害されていたことから、不審に思った人が市役所に連絡して発覚した。市の調査に対して、職員は事実関係を認めたという。
たしかに、勤務中にゲームをするのは、市役所の業務とは関係がなさそうなので、懲戒処分を受けてもやむをえないようにも思える。だが、企業などの勤務時間の移動中やトイレ中に、スマホを見ている人は多いのではないか。スマホでゲームをしたら、勤務先から処分されても仕方ないのだろうか。大部博之弁護士に聞いた。
「企業が労働者に対して、『懲戒処分』を課すことができるのは、就業規則に懲戒事由を規定している場合に限ります。そして、どの企業の就業規則にも、『勤務中は職務に専念し、正当な理由なく勤務場所を離れないこと』といった職務専念義務の規定があるはずです。
また、それとあわせて、職務専念義務を違反した場合について、その程度に応じて、(1)けん責(2)戒告(3)減給(4)停職(5)免職などの処分を可能とする懲戒事由を定めているはずです。
なお、公務員の場合は、職務専念義務や懲戒事由が法律によって規定されています」
どんなことをしたら「職務専念義務に違反した」と評価されるのだろうか。
「勤務中とはいえ、移動中やトイレの中で、数分程度のスマホゲームをやることが、はたして職務専念義務違反にあたるのか・・・なかなか一概に基準を設けることは困難です。
結局、こうしたゲームによって、『本来の業務にどの程度の影響を及ぼしているのか』という観点から考えるべきです」
移動中やトイレは手持ち無沙汰な時間といえそうだが・・・。
「通常の移動やトイレでは、事実上、業務は遂行できません。その時間を利用して、ゲームに興じたことが原因で特段、移動時間やトイレの時間が長くなったといえないような場合、職務専念義務に反したとまではいえないでしょう。
一方、ゲームやりたさのあまり、必要がないにもかかわらず、あえて移動するとか、またトイレに行くなどした場合、本末転倒であり、職務専念義務に違反したといえます。
ただ、その場合でも実際に、懲戒処分を下すまでに至る場合というのは、そうした頻度が高く、明らかに業務に支障をきたしていることが明白である場合や、一度注意しても改めようとしなかったような場合に限られると思われます」
今回のケースについてはどうだろうか。
「飯能市のケースは、1年にわたって継続的になされていた点や、ゲームに熱中していた様子から、業務に支障が出ていたと評価されるに十分であったため、懲戒処分を下されたのだと思います」
大部弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
大部 博之(おおべ・ひろゆき)弁護士
2006年弁護士登録。東京大学法学部卒。成城大学法学部講師。企業法務全般から事業再生、起業支援まで広く扱う。
事務所名:小笠原六川国際総合法律事務所
事務所URL:http://www.ogaso.com/