会社の常識が、世間の非常識であることも少なくない。11月8日放送のバラエティ番組「スクール革命!」(日本テレビ系)で紹介された「知らないと恥ずかしい 大人の常識クイズ!」が、ネットで批判の対象となっている。
マナー研究家の住友淑恵さんがゲスト出演し、「上司に出す印鑑の押し方」を出題。複数人の承認が必要な稟議書などへの押印例として提示されたのは、左斜めに傾けたAと、まっすぐ押したB、そして右斜めに傾けたCの3つだ。
「部下が上司にお辞儀をするように見える」ので正解
同じくゲストとして登場した落語家の林家たい平さんが「これは実際に官庁とか金融系などでビジネスとして使われているマナーなんですよね」と確認すると、住友さんは「そうですね、はい」と断言。クイズの正解は、Aの「左斜めに傾けるのがマナー」だった。
住友さんは「まっすぐはもちろん間違いではなく、大丈夫なんですが」と断りつつ、左斜めがよりよい理由について、こう解説を加えた。
「押された印鑑を見ると、部下が上司にお辞儀をしているように見えるのでAが正解。だから、本当に少し気を付けていただけると、おしゃれな押し方かなと」
なお、このマナーは電子書類にも適用されており、「電子印鑑」にも左に傾ける機能があるという。出演者からは「そういうことか!」「へぇ~」という声があがっていたが、視聴者はそう思わなかったようだ。ネットには、印影の向きにまでお辞儀を強要するマナーに激しい批判があがった。
「狂ってる」「社畜魂だな」「お辞儀とかねーよ馬鹿かよw」
「マジでこんなくだらないこと考えた奴誰なんだよw」
押印は「内容を確認した」「承認した」という意味であり、まっすぐ押すのが正しいと考える人からは、「くっだらねぇぇぇぇぇぇ!!曲がったハンコが良いわけあるかボケ」「これ怒られるからやめた方がいいぞ」といった反論もみられる。
官庁「やってない」、商社経験者「大企業の慣例でしょ」
「印鑑の斜め押し」は、11月10日発売の週刊SPA!も取り上げている。金融業界に勤める複数の人が、このマナーが実在することを証言。他業界に転職して斜め押しをしたところ、「『まっすぐ押せ』と注意を受けた」という話も紹介されている。
この記事には、ネットから「銀行勤めてたけどそういえばこんな習慣あったな最初は冗談かと思った」という経験談もあがったが、疑問の方が圧倒的に多い。
「田舎信用金庫だけど、そんな風習ねぇわ」
「地方銀行だけどそんな奇習ないわ、メガバンクは大変だな」
「財閥系の1部上場金融機関の行員だが印鑑の押し方で文句いわれたことなんか1度もないぞ」
テレビで紹介されていた官庁ではどうなのか、キャリコネニュースが某省庁に勤務する30代の女性職員に聞いたところ、「そんなルールは初めて知った」と驚いた様子だった。
一方、ある大手銀行に勤める20代の女性行員は「確かに左斜めに傾けている」と明かした。最初は意味が分からなかったが「お辞儀をするように」と教えられ、いまでは違和感がなくなったそうだ。
大手商社に勤務経験のある40代女性は、入社時に左に傾ける教育を受けた際「右に傾けるとふんぞり返っているように見えるし、右肩下がりは縁起が悪い」と指導されたと振り返る。そして「たぶん金融だけというより、何かと難癖をつけて足の引っ張り合いをする大企業に多い慣例」と感想を述べた。
社外では「まっすぐにビシッと押す」が正解
確かに押印の角度を問題にするのは、よほどヒマか陰湿な職場としか思えない。ネットからも、マナーが「不信感とか恐怖感ベースで成り立ってる」といった指摘や、「マナーじゃなくてただの悪習」「TPPでアホな慣習をぶち壊して欲しい」といった意見もあがっていた。
もしも職場で「左斜めがマナー」とされていても、それを社外で主張しない方がよさそうだ。「印鑑.com」内のハンコの正しい押し方を紹介するコーナーでは、斜めに押す慣習が存在する会社はあるとしながらも、
「まっすぐな押し方じゃないとだらしがないと思われたり、雑に見えたりすることがありますので、社外では斜めにせず、まっすぐにビシッと押すように心がけましょう」
と勧めている。
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