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犯罪被害者の「声」を加害者に伝える「心情等伝達制度」 利用者が少ないのはなぜか?

2015年11月09日 16:31  弁護士ドットコム

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犯罪の被害者や遺族などが、保護観察中の加害者に意見などを伝える「心情等伝達制度」。共同通信によると、法務省がまとめた2012年~14年の利用件数が、33県で一桁台にとどまり、福井、鳥取、佐賀の3県はゼロだったことがわかった。


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この制度は、犯罪の被害者が、刑務所から仮釈放されるなどして保護観察中の「加害者」に謝罪を求めたり、意見を伝えるために国が設けている。共同通信は、被害者の要望に応じさせる強制力がないことへの不満や、事件を思い出すことへの抵抗感が利用低迷につながっていると推測している。



この「心情等伝達制度」とは、どのような制度で、何のために設けられているのか。そして、もっと利用してもらうためには、どうすべきなのか。犯罪被害者の支援活動に取り組む宇田幸生弁護士に聞いた。



●被害者に「心情等伝達制度」が知られていない?


「心情等伝達制度とは、刑務所で刑期の途中に仮に釈放されるなどして、社会復帰した加害者などのうち、保護観察所において改善更生のための指導を受けている加害者(更生保護法48条、49条)に、被害者が心情を伝えられる制度です(同法65条)」



どのような目的で設けられたのだろうか。



「制度の趣旨は、被害者側に対しては、保護観察中の加害者に、想いや意見を述べる機会を提供することにあります。そして加害者側に対しては、保護観察中も、被害の実情を直視させ、反省を深めさせようとすることにあります」



被害者の心情として、たとえば「死んでほしい」といった憎しみの声も伝えられるのか。



「この制度では、加害者の改善更生を妨げるおそれがあるなど、一定の事情により相当でないと判断される場合には、伝える内容について制限されることもあります(同法65条)。



ですから、『死んでほしい』という内容や、罵詈雑言の類は、制限される可能性が高いでしょう」



報道によると、制度の利用は低迷しているということだが・・・



「利用状況が伸び悩んでいる要因としては、まず、制度そのものを被害者が知らないということが、考えられるでしょう。2つ目に、制度を利用するためには、保護観察所まで被害者が赴かなければならない場合があることも、利用低迷の要因と思われます。



そして、制度を利用しても、被害者の意見に従うよう、加害者に強制することはできないという限界がある点も、利用が低迷している一因でしょう。



この制度を周知するとともに、被害者の負担を減らす運用に改善する必要があります。そして、被害者が想いを伝えた後に、加害者がどのように変化していったかなど、被害者にも目に見える形で成果が体感できるような制度の改善が望まれます」



このように宇田弁護士は話していた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
宇田 幸生(うだ・こうせい)弁護士
愛知県弁護士会犯罪被害者支援委員会委員長。殺人等の重大事件において被害者参加等の被害者支援活動に取り組んでおり、平成21年には全国で最初の損害賠償命令事件の申立てを行っている。
事務所名:宇田法律事務所
事務所URL:http://udakosei.info/