トップへ

Perfumeの新曲はJ-POPシーンでどう受容されるか? 従来のイメージと異なるシングルを分析

2015年11月08日 17:01  リアルサウンド

リアルサウンド

Perfume『STAR TRAIN(初回限定盤)(DVD付)』

参考:2015年10月26日~2015年11月01日のCDアルバム週間ランキング(2015年11月9日付)(ORICON STYLE)


 今回もオリコン週間CDシングルランキングの1位から10位までの楽曲を聴いたのですが、その結果取りあげるのは4位のPerfumeの「STAR TRAIN」です。


 5位のSHINeeの「Sing Your Song」における「日本語ネイティヴではない歌手による日本語ラップ」や、6位のEXILE SHOKICHIの「IGNITION」のファンキーさにも惹かれました。しかし、一番の衝撃を私にもたらす結果になったのは、大ブレイク後の一時期に彼女たちについての原稿を大量に書いて、もはや書き尽くしたとすら考えていたPerfumeでした。


 その最大の理由は、「自分が街中でこの楽曲を聴いてもPerfumeだと気づかないだろう」という曲調、サウンド、そしてヴォーカルであること。曲調はまるで1980年代のフリートウッド・マックを聴いているかのようで、「Wow...」と歌っている部分も含めて壮大です。Perfumeのヴォーカルのオートチューンも、薄くエフェクトをかけている程度と感じられるほど生々しく、繊細な歌唱です。


 生っぽいサウンドのなかで際立つのは、サビの前でEDMっぽく昂揚していく電子音です。しかし、予想を裏切るかのようにサビではEDMっぽい音は消えうせ、続く間奏ではアコースティック・ギターの響きを聴くことになります。鮮やかな肩すかし。3分過ぎからは、オートチューンの施されたヴォーカルはコブシのように響き、2007年の「ポリリズム」での手法を思いださせます。


 こうしたポイントに着目すると、中田ヤスタカ(CAPSULE)ならではのギミックが施されたサウンドです。しかし、全体としては「テクノポップ」というPerfumeのパブリック・イメージとはかなり乖離しています。テクノポップ然としていないサウンドは、前作「Relax In The City / Pick Me Up」の「Relax In The City」からの路線を継承していますが、それをさらに推し進めています。


 先日、Perfumeが徳間ジャパンに在籍した時代の5作品が来年アナログ盤でリリースされることがアナウンスされましたが、その時代のPerfumeのイメージを軽々と置き去りにしてみせるのが「STAR TRAIN」です。アナログ盤化される2006年のアルバム「Perfume~Complete Best~」に収録されていた「パーフェクトスター・パーフェクトスタイル」がフレンチ・ハウス、「エレクトロ・ワールド」がフレンチ・エレクトロの影響下にあったこととは対照的に、「STAR TRAIN」には全米トップ40的な王道感があります。


 そんな故郷をはるかに遠ざかったかのような感慨の一方で、「STAR TRAIN」の初回限定盤には初CD化となる「イミテーションワールド」が収録されています。ライヴで初めて聴いてから9年も経ってこの楽曲をCDで聴くとは思いませんでした。ずっと作詞は木の子だと思っていたのですが、クレジットには中田ヤスタカの名があります。「イミテーションワールド」が初めて商品化されたのは、2007年にリリースされたライヴDVD「ファン・サーヴィス [bitter]」。そこから数えても8年です。


 アレンジが一新された「イミテーションワールド」は、「AORのようだ」と感じるほどの落ち着きがあります。この新しいヴァージョンに比べると、記憶のなかの「イミテーションワールド」は今となってはもっと儚いものに感じられます。感傷とはまた異なる複雑なものがわきだしましたが、そういう意味でも過去の「イミテーションワールド」とは別物にすることに成功しているのでしょう。


 冒頭で「一番の衝撃を私にもたらす結果になった」と書きましたが、それは私の主観によるものに過ぎません。「STAR TRAIN」という楽曲が、J-POPシーンのなかでPerfumeのファン以外にどのように受容されるのかは気になります。「受容の行方が気になる」というのは私のなかでは珍しい感覚で、「STAR TRAIN」はそのぐらいPerfumeのシングルのなかでは異色の作品です。ここまできたらもう後戻りはしないでほしい、とも思います。過去に拘泥する私を振り切るように。(宗像明将)