2015年11月07日 12:11 弁護士ドットコム
アサヒビールのノンアルコールビール「ドライゼロ」に特許を侵害されたとして、サントリーホールディングスが製造・販売差し止めを求めていた訴訟で、東京地裁は10月下旬、サントリーの請求を退ける判決を下した
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報道によると、サントリーは2013年10月、ノンアルコールビールに飲みごたえを出すエキス分や糖質などの数値を一定の範囲にしたノンアルコールビールの特許を取得した。一方、アサヒはドライゼロの糖質やカロリーを抑えた改良品を出したが、サントリーが「特許を侵害された」として、今年1月に提訴していた。
東京地裁の長谷川浩二裁判長はサントリーの特許について、「同業者なら容易に考えつくことで、無効にすべき」と判断したという。サントリーは控訴の方針を示しているようだが、今回はどうして敗訴したのだろうか。特許にくわしい早瀬久雄弁護士に聞いた。
「そもそも、特許が与えられるには、いくつかの要件が必要です。
その一つに、『進歩性』という要件があります。つまり、既存の技術との違いがあるだけでなく、その違いが同業者によって『容易に考えつくものでない』ということが、特許には必要なのです」
早瀬弁護士はこう述べる。今回のケースでは、その「進歩性」が争点になったのだろうか。
「特許を出願すると、まず特許庁が『進歩性』などの要件を検討します。そこで問題ないと判断されれば特許が与えられます。
ただ、特許庁の審査で『OK』となっても、特許侵害訴訟という裁判の中で、『進歩性などの要件を欠く』として特許の有効性を争うことが可能です。
差し止めなどの請求は、特許が有効であることが大前提なので、特許が無効と判断されてしまえば、敗訴してしまいます。
今回のケースはまさにこれで、アサヒビールは訴訟において、サントリーの特許は進歩性を欠く無効なものだと主張し、それが認められたためにサントリーは敗訴しました」
サントリーは控訴するようだが、今後どのような点がポイントになるのだろうか。
「サントリーの特許は、糖質などの数値を所定範囲に特定したものです。既存のノンアルコールビールと比べると、一部の成分の数値に違いがあるだけでした。数値の最適化は、同業者であれば普通に行うことなので、進歩性が認められるには一般にハードルが高いです。
控訴審では、その高いハードルを越えられるだけの説明ができるかどうかにかかっていますね」
早瀬弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
早瀬 久雄(はやせ・ひさお)弁護士
特許技術者を経て弁護士登録した後、名古屋駅前にて、特許事務所とともに知財ワンストップサービスを提供している。弁理士として特許出願業務にもかかわる。ブログにて、知的財産などに関する情報も発信中。
事務所名:あいぎ法律事務所
事務所URL:http://law.aigipat.com