11月4日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)では、新卒者の採用活動を短期間で済ませる動きを取材していた。「焼肉きんぐ」や「丸源ラーメン」など300店以上の飲食店を展開する物語コーポレーションは、職場見学から内定までを3日間に集約した短期間選考を今年から開始している。
東京・町田市の店舗では、10人ほどの学生を集めて食事を出しながら職場見学を行い、その場で面接も行っていた。人材開発部の加藤さんは、短期間採用には企業と学生の双方に利点があると語り、来年以降も「内定直結型イベント」を続ける方針を明かした。
「人が集まりやすいので会社にメリットがあり、短期間で結果が出て会社の理解度も浅くならないのは、学生にもメリットがあります」
「早く採ろうは、数合わせになる危険性」
番組では10月12日に、アプリ開発企業の「1日完結採用」も紹介。説明会から内定までをたった1日で終わらせるやり方で、優秀な学生が集り内定承諾率も向上した。IT社会のスピード化もあり、こうした動きは当たり前になっていくのかもしれない。
しかし、識者からは厳しい指摘もあった。番組コメンテーターでモルガン・スタンレー証券チーフエコノミストのロバート・フェルドマン氏は「後で変えにくいことを短期間で決めるのは難しい」と危うさを指摘し、次のように警告した。
「若い人にとって売り手市場はいいことだろうか。それで10年先の自分が鍛えられるのか。(簡単に採用されたことで)スキルを身につける意識を忘れてしまう盲点がある」
とりあえず現時点での有名企業や待遇のよさだけを追い、将来を熟考せずに決めてしまうことのリスクを指摘した意見だろう。若いうちは未来のために、あえて厳しい環境に身を置くべきだというメッセージと受け取った。
さらにフェルドマン氏は、会社側の問題として「早く採ろうは、数合わせになる危険性が高い」とも指摘した。確かに彼が勤務する外資系金融機関などでは、大学生が数か月にわたってインターンシップに参加することが定着している。
筆記と面接で採否を決めるよりミスマッチ減るのでは
グローバル金融機関のインターンでは、実際の業務に携わり、その仕事ぶりで採否が決まる。入社するときには「即戦力」という扱いだ。そういう感覚からすると、1日で雇ってしまう方法があまりに性急すぎるように見えるのも当然だろう。
ただし外資系金融機関と外食産業では、職場の事情がだいぶ異なる。外食で働き始めるには、金融ほど高い専門性も要求されない。フェルドマン氏は「10年先のニーズに合った採用に集中すべき」と指摘しているが、「10年先のことは分からない」という考えもある。経営スタッフと店長クラス、アルバイトで採用方法も変えていることだろう。
大企業のように説明会や面接などに何日もかけられない側面もあるだろうが、他社に合わせて筆記と面接で採否を決めるより、食事をとりながら職場見学をした方がミスマッチは減るのではないだろうか。(ライター:okei)
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