2015年11月07日 10:51 弁護士ドットコム
検索サイト大手「グーグル」で名前を検索すると、過去の逮捕歴がわかるとして、歯科医師が検索結果の削除を求めた仮処分申請について、東京地裁がグーグルに削除を命じる仮処分決定を出していたことが明らかになった。
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報道によると、歯科医は5年以上前、不正な診療行為をした疑いで逮捕されて、罰金刑を受けた。その後、グーグルで自分の名前などを入力すると、当時のニュース記事を転載したサイトが検索結果に表示される状態だった。
そこで歯科医が「更生を妨げて、人格権を侵害する」として、検索結果を削除する仮処分を申し立てたところ、東京地裁は今年5月、歯科医の主張を認める仮処分決定を出した。
今回のように「職業にかかわる犯罪歴」の検索結果を削除するよう命じる決定は珍しいということだが、今回の削除命令のポイントは何なのだろうか。インターネット情報の削除問題に取り組む神田知宏弁護士に聞いた。
――そもそも「犯罪報道」は、インターネット上から削除できるのでしょうか?
「最高裁は『更生を妨げられない利益』という考え方を示しています。この考え方を受けて東京高裁でも、『知る権利』よりも『更生を妨げられない利益』が優先するときは、インターネットの犯罪報道を削除できると判断しています」
――どんな場合に削除できるのでしょうか?
「裁判所は、いろいろな事情を総合して削除の可否を判断するとしています。
いろいろな事情とは、犯罪が社会に与えた影響や、その人の社会的地位や犯罪からの時間経過の長さといったものです。
ふつうの人の軽微な犯罪であれば、反省して更生し、3年くらい経過すれば、裁判所で削除決定が出ているケースは多数あります」
――「検索結果」も削除できるのでしょうか?
「検索結果の削除を命じる『判決』は、今のところ知られていません。もっとも、大阪高裁では、検索結果が違法となり、削除の対象となりうるケースがあるという判決が出ています」
――今回のように職業にかかわる事件の場合も同じなのでしょうか?
「一般論として、医師における医師法違反や、税理士や会計士の行政処分のような職業にからむ事件について、インターネットから削除できるのかという問題があります。
国民の『知る権利』に直結しますので、裁判所の判断も慎重になります。ただし、やはり裁判所の考え方は、いろいろな事情を総合的に検討するというものです。
別の仕事に就かない限り削除を認めないというのでは、資格を剥奪するのと同じ結果になりかねません。そのため、何らかの条件を満たせば、削除を認めるという結論になるのでしょう。
もっとも、職業に絡む事件ですので、相当長い反省期間が必要になると考えられます」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
神田 知宏(かんだ・ともひろ)弁護士
フリーライター、IT企業経営を経て弁護士、弁理士登録。著書に『ネット検索が怖い「忘れられる権利」の現状と活用』(ポプラ新書)、『ネット社会と忘れられる権利―個人データ削除の裁判例とその法理』(共著、現代人文社)ほか、パソコンソフト入門書も多数。元、日弁連コンピュータ委員会副委員長。
事務所名:小笠原六川国際総合法律事務所
事務所URL:http://www.ogaso.com/