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ネクストブレイク筆頭株か? 『俺物語!!』ヒロインに抜擢された16歳=永野芽郁の魅力

2015年11月07日 10:51  リアルサウンド

リアルサウンド

(C)アルコ・河原和音/集英社 (C)2015映画「俺物語!!」製作委員会

 20年以上前に人気を博した少女漫画の単行本のあとがきに、創作時の裏話としてこんな話が書かれているのを思い出した。企画段階ではキャラクターの男女設定が逆で、男性キャラが主人公になる予定だったが、担当編集者が「女性作者が描く男性キャラは女々しくなりがち」と言われたため、主人公を女性キャラに変えたのだと。結果としてその漫画は90年代を代表する人気少女漫画になり、台湾でドラマ化され、現在も続編が連載されているのだが、今考えると色々なところから指摘を受けそうな発言だ。とはいえ、やはり少女漫画となると、読者層に合わせて女性主人公が選ばれるのがひとつのセオリーであって、男性主人公の作品というとギャグ漫画やサスペンス風のもの、はたまた男女のダブル主人公を配したものが多く見受けられる。


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 それを考えると、『俺物語!!』という作品は極めて特殊というか、前述のエピソードを完全に逆手に取って、数十年前の少年漫画でも描かれないような極端な男性主人公像を構築しているのだから、それだけで面白い。しかも、ギャグ漫画調でありながら、しっかりと青春恋愛ドラマを軸にした王道の少女漫画的プロットを継承しており、同じ河原和音原作による『高校デビュー』と同様に、映画にしやすいタイプの作品である。


 もちろんのこと、映画版『俺物語!!』は予告編やポスターの段階から、主人公剛田猛男を演じる鈴木亮平の変身ぶりに目を見張るものがある。30kg増量し、このあまりにも個性的なキャラクターをほぼパーフェクトに演じきったことは、彼の役者としてのキャリアにおいて非常に大きな一頁になるであろう。だが、いざ完成した作品を観てみると、主人公の圧倒的な個性にも負けないほど、ヒロイン大和凛子を輝かせることに成功しているのだ。


 男に絡まれているところを猛男に助けられる登場シーンから始まるヒロインの映し方は、もはや男性客を狙い撃ちしようとしているしか思えないほどあざとい。あざとすぎるのだが、にくめない。猛男の目線から映し出された、やや上目遣いの表情を画面いっぱいに映し出されると、その直後に猛男を追いかけて制服の裾をつかんでいるショットで画面が引くと、彼女のつま先が少しだけ上がっているのだ。その後も主人公主観による真正面からのショットを多用し、あたかも観客が、彼女に恋心を抱く主人公と同じ目線でヒロインを見続けることを意図しているかのように描き続ける。


 この大和凛子を演じる永野芽郁は、オーディションでこの役柄を獲得した、まだ16歳の逸材。これまで数本のドラマや映画への出演があるが、本作のような大役は初めてであろう。その出世作となる本作で、こんなにも魅力的なヒロインとして映し出されるのは、女優として本望であろうし、何よりそんな作り手側の作為に完璧に答えられるだけの素質が彼女にあるということだ。


 彼女のこれまでの出演作としては、数年前のバレンタイン時に放映されていた明治のチョコレートのCMで“友チョコ”を作る少女を演じていたのを記憶している。その時に共演していたのが嵐の松本潤で、彼のクールさとコミカルさを活かした絶妙な演技が中心になっていたせいもあってか、あまり彼女にフォーカスが当てられてはいなかったが、今と違ってストレートの髪型で、まだあどけない少女の活発な姿が描かれていた。それから2年ほど経ち、先日まで放送されていたフジテレビの深夜ドラマ『テディ・ゴー!』では、哀川翔演じるテディベアに乗り移った刑事の娘役を演じており、何倍も垢抜けた印象を受ける。むしろ『俺物語!!』からの短期間で比較しても、多少雰囲気が違って見える。


 もともとスカウトで芸能界入りし、子役業を積みながら小学生時代にファッション雑誌ニコ☆プチの専属モデルを務めていた彼女。同じ雑誌の専属モデルからは飯豊まりえや三吉彩花がすでに女優として期待されているだけに、彼女も一気にこのラインに並ぶことであろう。また集英社の少女漫画雑誌・りぼんの専属モデルである“りぼんガール”に選出されている経歴もあり、同世代の少女漫画読者とともに成長してきた彼女をヒロインへ抜擢したことは、一層効果的なキャスティングに思える。ちょうど子役からの転換期である彼女の、女優としての成長もさることながら、今後も男女両方から愛されるヒロイン像を演じてくれることに大いに期待したい。(久保田和馬)