2015年11月07日 10:31 弁護士ドットコム
グーグルが小型の無人飛行機「ドローン」を使った宅配サービスの実現を目指しているようだ。
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報道によると、グーグルは米国の連邦航空局(FAA)と、ドローンの飛行高度など技術面の調整を続けており、2017年中に宅配サービスを開始することを目標としているという。同社はこれまでも、ドローン開発の米ベンチャー企業を買収するなど、その技術に高い関心を示してきた。
ドローンを利用した宅配サービスをめぐっては、ネット通販大手のアマゾンもFAAから試験飛行許可を得ており、新しいビジネスとして注目されている。はたして、日本でも同じようなサービスは実現できるのだろうか。小林正啓弁護士に聞いた。
「これまで日本には、ドローンを直接規制する法律がありませんでした。今回、航空法が改正されて、今年の12月初旬までに施行されます。これに伴って、航空法施行規則(国土交通省令)も改正され、同じ時期に施行される予定です」
小林弁護士はこのように説明する。どのような規制内容なのだろうか。
「改正航空法やその施行規則によると、『重量が200グラム以上』のドローンは、国勢調査の結果による人口集中地域(東京23区や大阪府の大半、全国の県庁所在地など)の上空を許可なく飛行することが禁止されます。
また、飛行方法は目視による常時監視が必要とされ、モノの投下が禁止されます。
特に、貨物も含む最大離陸重量が25kg以上のドローンについては、堅牢性や耐久性のほか、フライトレコーダーやフェイルセーフ(故障や操作ミスなどを想定して、その被害を最小限にとどめる設計)の装備が義務づけられるなど、非常に厳しい規制が課せられる見通しです。
このような規制を前提とする限り、日本でドローンを使った宅配サービスを実現することは無理だと思います」
一方で、政府は現在、ドローンの技術開発をすすめるため、地域を限定して規制を外す「国会戦略特区」(ドローン特区)を検討しているようだ。こうした特区での宅配サービスの可能性はどうか。
「ドローン特区をつくって、特定の市町村内だけ、これらの規制を外すとしても、現実問題として、ドローンが墜落したり、建物に衝突したりする事故は容易に想定されます。
また、日本の住宅は米国のものよりも小さくて、密集しています。集合住宅も多いので、戸別に宅配することは技術的に困難で、危険が大きすぎます」
千葉市などが「ドローン特区」に名乗りを上げているようだが、どうなるのだろうか。
「ドローン特区はおそらく、過疎地に設けられるか、都市部でも河川や運河、陸地沿いの海の上に飛行ルートとして設けられることになるでしょう。
そして、ドローンが担うのは、戸別配達ではなく、物流基地間のピストン輸送になると予想されます」
小林弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
小林 正啓(こばやし・まさひろ)弁護士
1992年弁護士登録。一般民事事件の傍ら、ヒューマノイドロボットの安全性の問題と、ネットワークロボットや防犯カメラ・監視カメラとプライバシー権との調整問題に取り組む。
事務所名:花水木法律事務所
事務所URL:http://www.hanamizukilaw.jp/