2015年11月06日 10:51 弁護士ドットコム
コーヒーは買えない、でもネットは使いたい――。就職活動を控えた女子大生のサヤカさんは、商品を買わずにスターバックスの無料Wi-Fiを利用してしまったことを悩んでいる。
【関連記事:「あまりにかわいくて」女性店員に電話番号を渡したら、店長から警告ーー法的にNG?】
サヤカさんは、外出先でネットを使うために、頻繁にスタバの無料Wi-Fiを利用している。スタバの無料Wi-Fiサービスは、簡単な登録をすますと、店舗で無料でWi-Fiを使うことができる。突然の会社説明会の予約や、ウェブテストの受験も、パソコンとスタバがあればすぐに対応できる。お金に余裕はないが、スタバでコーヒーやスナックを購入して利用していた。
ある日、サヤカさんは会社説明会の申し込みなどの手続きをしようと、パソコンを持ってスタバに来たが、財布を開くと中身は空っぽ。あきらめて帰ろうと思ったが、店のすぐ側であれば支障なくWi-Fiが使えることに気づいた。「少しの間だけなら・・・」と考え、サヤカさんはその場でWi-Fiに接続し、作業をした。
飲食店が無償で提供しているWi-Fiを、商品を購入せずに「タダ乗り」することは、法的に問題ないのだろうか。鈴木義仁弁護士に聞いた。
「『電波』を無断で利用しても、窃盗罪にはあたりません。また、他人になりすましたり、セキュリティを破ってアクセスしたわけではないので、不正アクセス禁止法違反にもなりません」
どうやら犯罪にはあたらないようだ。だが、商品を購入せずに勝手にWi-Fiの電波を利用したということで、損害賠償を求められたりしないのだろうか。
「利用規約を見てみると、11条に禁止条項が定められていますが、『Wi-Fiを利用するためには、スタバでの商品を購入することが利用の条件です』と、はっきり書かれているわけではありません」
規約に書かれていないということは、今回のケースも問題なしということだろうか。
「そうとも言い切れません。無料Wi-Fiは、スタバの店舗利用者へのサービスということが当然の前提となっていると考えられます。そのため、店舗外での利用を無制限に承諾しているとは考えられません。
今回のケースのようなWi-Fi利用は想定外であるか、または想定されていたとしても、許諾しているとは考えられないでしょう。
また、今回のようなケースは、損害賠償責任を負うことはないとしても、利用規約の11条18に定められている『当社が不適切と判断する行為』に該当する可能性はありそうです。
そのため、場合によっては利用停止ということになるかもしれません。サヤカさんも、次回からはきちんとコーヒーなどを購入したうえで、Wi-Fiを利用したほうがよいかもしれませんね」
鈴木弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
鈴木 義仁(すずき・よしひと)弁護士
神奈川大学大学院法務研究科教授。横浜市消費生活審議会会長。著書に「悪徳商法にご用心」(共著:日本評論社)、「訴える側の株主代表訴訟」(共著:民事法研究会)「くらしの法律相談ハンドブック(共著:旬報社)」
事務所名:鈴木法律事務所