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ドラマ『サイレーン』主題歌で話題に 18歳のシンガーソングライター、Anlyの突き抜けた才能

2015年11月06日 00:31  リアルサウンド

リアルサウンド

Anly。

 シングル『太陽に笑え』でメジャーデビューを飾る、沖縄の離島・伊江島出身の18歳(1997年生まれ)の女性シンガーソングライター、Anly(アンリィ)。初めて彼女の生歌を聴いたときのことは、いまもハッキリと覚えている。レコード会社のスタッフだけのクローズドな状況だったのだが、アコースティックギター1本で彼女は、豊かなブルース・フィーリングとポップな手触りを共存させた素晴らしいボーカルを聴かせてくれたのだ。アーシーな手触りのオリジナル曲も良かったが、ビートルズの「ブラックバード」のカバーにおける、憂いを帯びた歌声と繊細なギターも強く印象に残っている。


 音楽好きの父親の影響で60~70年代の音楽に親しみ、おもちゃに触るようにギターを弾いていたAnly。中学卒業までインターネットにもPCに触れたこともなかったという特殊な環境のなかで、芳醇なルーツミュージックをたっぷりと吸収してきた彼女は、高校に入ると那覇市内で弾き語りライブをスタートさせ、その表現力に磨きをかけてきた。“音楽が体の中に染み込んでいる”という感覚、そして、目の前のオーディエンスにまっすぐに歌を届ける姿勢は、シングル「太陽に笑え」からもはっきりと伝わってくる。


 アコースティックギターのエモーショナルな響きから始まるこの曲は、骨太のバンドサウンドとドラマティックなメロディがひとつになったロックチューン。中心にあるのはもちろん、彼女のボーカルだ。一聴すると強烈なダイナミズムと迫力に圧倒されるが、ちょっとした歌い回し、フェイクのなかに含まれるブルース、カントリーのエッセンス(本質)もきわめて魅力的。ただ歌が上手いだけではなく、ルーツ音楽の豊かな部分が滲み出ているのだ。また、自己顕示欲をまったく感じさせず、「歩け 歩け 負け続けても」といったストレートなメッセージを素直に響かせられることも彼女の大きな武器だろう。


 ブルース、フォーク、カントリーなどのルーツミュージックを持つ女性シンガーソングライターといえば、ノラ・ジョーンズ、アデルなどを思い浮かべる人も多いかもしれない。実際、彼女の音楽的なスタイルは、それらの洋楽アーティストと重なる部分もあると思う。ここ数年、日本では“アコギ女子”に象徴されるシンガーソングライターが数多く登場しているが、Anlyのスタイルは明らかに一線を画している。“洋楽を取り入れた”のではなく、オーセンティックな音楽をナチュラルに血肉化したうえで表現できるアーティストは、本当に稀だ。


 「太陽に笑え」のアレンジは、Cocco、中島美嘉などの楽曲を手がけてきた根岸孝旨が担当。ロックシンガーとしてのAnlyの魅力を上手く引き出しているが、言うまでもなく、シンガーとしてのポテンシャルはこの1曲だけでは測れない。彼女の奥深い才能をさらに開花させるようなプロダクションを期待したいと思う。(森朋之)