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ヨコハマのタイヤ供給で来季スーパーフォーミュラはどうなる?

2015年11月05日 12:30  AUTOSPORT web

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ヨコハマ・モータースポーツ・インターナショナル企画本部長兼管理部長の阿部義郎氏(左)と開発本部長の秋山一郎氏(右)
10月29日、ヨコハマが2016年からスーパーフォーミュラのワンメイクタイヤサプライヤーに就任することが発表された。ヨコハマにとっては約20年ぶりの国内トップフォーミュラ復帰となるが、これによって来シーズンのスーパーフォーミュラはどのように変わっていくのか。

 1997年に当時のフォーミュラ・ニッポンがブリヂストンタイヤのワンメイクとなって以降、トップフォーミュラへの供給からは離れていたヨコハマだったが、今年、トヨタ/ホンダによるエンジンメーカーテストの中でヨコハマタイヤを装着しての走行が実施されていた。そして9月には、ブリヂストンが今季限りでのタイヤ供給終了を正式発表。ヨコハマが新サプライヤーの最有力候補と目される中、今回のモーターショーで来季からの供給が発表された。

 ヨコハマ・モータースポーツ・インターナショナル開発本部長の秋山一郎氏は、開発の経緯を次のように説明する。

「今年のはじめに開発を始めようという意思を固めて、準備をして一番最初の試作ができたのが4月の中旬。そこからスーパーフォーミュラのエンジンメーカーテストが5回計画されていて、その中で時間を作って頂きタイヤのテストも行いました。5回目が10月の富士だったので、実質の開発期間は4月中旬から10月までの約半年間でした」

 各テストでは、トヨタとホンダでそれぞれ1チームずつがオペレーションを担う形となり、5回のテストを経てひとまず全チームがヨコハマを装着しての走行を行った。開発にあたっては、シリーズを運営する日本レースプロモーション(JRP)からタイヤ特性に関する要望もあったというが、まずは安全面なども考慮して開発を進めたのだと秋山氏は話す。

「レースの戦況が動くような、アグレッシブなタイヤ……というようなお話はありました。ただ我々としては、高速耐久性と荷重耐久性をまずはクリアしなくてはならないという部分もあった。今は、“レースを演出する”という部分ではまだ至っていないところもありますが、それはこれからの兼ね合いといったところです」と秋山氏。

「今のブリヂストンタイヤは、夏場も冬場も、鈴鹿でももてぎでも、いつでもタイヤ交換もせずに走ることができる。それがレース展開を膠着させているというお話もあるのかもしれませんが、タイヤメーカーから見れば“無敵のタイヤ”とも言えます。我々も、まずはそこをクリアした上で、“味付け”や“特性を振る”というお話をしていきたいですね。半年というわずかな期間で開発したというところは、謙虚に考えていきたいと思っています」

 とは言え、ヨコハマが消極的な姿勢でスーパーフォーミュラに参戦しているわけではない。企画本部長兼管理部長の阿部義郎氏は、今回のタイヤ供給の決定について、表現としては「どのようなカテゴリーからオファーがあっても大丈夫なように技術力を高めていく」と、発表会における野地彦旬社長と同様の説明をした。ただし、その表現の言外には、国内トップフォーミュラにとどまらず、F1すら見据えたようなニュアンスも感じられ、さらなる技術力向上を目指すヨコハマの強い意志のようなものが見え隠れしていた。

 また阿部氏は「グリップはかなり出ている」と話し、「速さとしての“第一目標”は達成しています」と好タイムも示唆。ただ、発表されたヨコハマタイヤはフロントが250/620R13、リヤが360/620R13となっており、ブリヂストン(フロント:235/55R13、リヤ:340/620x13)とは数値がやや異なる。「このタイヤではセッティングなどもゼロからになるので、その中でどのようなタイムが出るのか。チーム力が重要になりそうですね」と阿部氏は来季からの勢力図の変化も展望する。

 ちなみに今回発表されたのは、スリックの『アドバンA005』とウエット用の『アドバンA006』の、それぞれ1種類ずつ。将来的なことはまだまだ分からない段階だが、16年シーズンはドライ/ウエットともに1スペックとなることが予想される。

 また、今季は新品3セット(+中古3セット)となっていたタイヤの持ち込みセット数に関しては、14年シーズンまでのように新品4セットを目指したいとの意向も聞こえてくる。ただし、来シーズンはレースウィークの金曜日に走行時間が追加される可能性もあり、そうなった場合はさらにもう1セット増やすのかどうかといった問題もある。持ち込みタイヤのセット数に関してはまだ調整段階と言えそうだ。

 今回のヨコハマ供給の発表を受けて、ファンからも多数の期待の声が上がっている。ただし裏を返せば、それは現状からの“変革”を望む声とも言える。スーパーフォーミュラへの参戦は、無論ヨコハマにとっては意義深いものとなるだろうが、かと言ってブリヂストン時代と同じことをするのでは、それはファンの目には“供給メーカーが変わっただけ”と映ってしまうことにもなりかねない。

 GP2チャンピオンのストフェル・バンドーンの来季参戦がウワサされるなど、高品質のマシン&エンジン、そして国内外のトップドライバーたちが揃うスーパーフォーミュラの魅力と存在感は、世界でも日増しに高まっている。そして今後のヨコハマタイヤは、国内モータースポーツの最高峰でもあるスーパーフォーミュラを支える責任も担うことになる。技術的な開発だけでなく、より多くのファンに愛されるカテゴリーになるためにも、2年目、3年目に向けて運用面、演出面でさまざまなアプローチがあることを期待したい。