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Superflyがツアーで体現した、シンガー/アーティストとしての音楽的進化とアイデンティティ

2015年11月05日 12:21  リアルサウンド

リアルサウンド

Superfly(写真=渡邉 一生)

「新しいSuperfly、楽しんでくれていますか!?」


 この日のライブを通して、越智志帆はこの言葉を何度となく口にしていた。新しいSuperflyのスタイルを直接オーディエンスに体感してほしい——そのことこそが、今回のツアーの骨子だったことは間違いない。


 アルバム『WHITE』のリリースに伴う全国ツアー「Superfly WHITE TOUR 2015」東京・国際フォーラム ホールA公演。この日、Superflyはアルバム『WHITE』でトライした大きな音楽的変化を色鮮やかに体現してみせた。


 ライブはアルバムの1曲目「White Light」からスタート。重厚なバンドサウンドとアーシーなメロディとともに「何も言わず 白になれ/変幻自在で生き抜いてみせましょう」というフレーズが響き渡る。白の衣装が赤、青、紫などに変化していく演出も、このツアーのコンセプトを端的に示していた。さらにセクシーな手触りの旋律が印象的なロックチューン「リビドーに告ぐ」、さらにブルースロックの進化型とも言えるアンセム「マニフェスト」へ。強烈なハイトーン・シャウトが高らかに鳴らされ、どよめきにも似た歓声が巻き起こる。声の存在感、歌の上手さで観客をここまで沸かせられるロックボーカリストは、本当に稀だと思う。


「『WHITE』というアルバムは、いままでのSuperflyの作品とはちょっと違う内容になっていて。今回はいろんな人の色に染まるということをテーマにして作っていました。個性豊かなアーティストの方々といっしょに作詞をしたり、作曲をしたり、作ってもらったり。カラフルな作品になっているし、新しいSuperflyを思い切り楽しんでもらえると思います」


 今回のツアーの趣旨を改めて説明した後は、アルバム『WHITE』の世界をさらに深く表現していく。まずは「ここからは幻想的な世界を楽しんでほしいと思います」というMCとともに、憂いに満ちたボーカルラインが心に残る「Live」。さらに静謐な雰囲気を持ったバラードナンバー「Space」、バンドメンバーがステージ前方でリコーダーなどを演奏、さらにオーディエンスがクラップと足ふみで参加した「極彩色ハートビート」、USインディーロックのトレンドを反映したサウンドと「まだ本気出してない」「えいやあ 行こ 行こ」というユニークな歌詞がひとつになった「A・HA・HA」などを次々と披露。これまでのSuperflyのイメージを完全に覆すような楽曲ばかりなのだが、不思議と違和感はない。楽曲のコンセプトを視覚的に表現したステージングも効果的だったが、もっとも大きなポイントは、アルバム『WHITE』を制作したことによって越智志帆のシンガーとしてのポテンシャルがさらに引き上げられたことだろう。アルバムに関するインタビューのなかでも「自分から“こうしたい”って主張するタイプではなくて、提示されたものに対してアレンジを加えるほうが(性分に)合ってる」とコメントしていたが、本作における“素材に徹する”というスタンスは、彼女のボーカルの表現力を一気に広げたようだ。


 後半では「タマシイレボリューション」「Alright!!」などのアッパーチューンを続け、ロックスターとしての存在感を改めてアピールし、会場を沸かせた。本編ラストは彼女自身が作詞・作曲に携わった「Beautiful」。「アルバムの制作に取り掛かったとき、自分がどういう人だったか分からなくなってきたんですよね」「でも、いろんな人の色に染まってみたときに、かえって自分のことが見えてきたんです」「いままでは自分にないものを探して、葛藤してきたんですけど、これからは自分に与えられたものを大切にしていきたい」というコメント、「世界で一つの輝く光になれ」というフレーズは、アルバム『WHITE』と今回のツアーのなかで得たひとつの結論なのだと思う。


 アンコールでは竹内まりやの「Sweetest Music」をカバー。最後はアルバムのプロデューサーでもある蔦谷好位置とふたりで「いつか私は歌をうたう」をリリカルに歌い上げた。シンガー/アーティストとしてのアイデンティティを掴み直した『WHITE』。その制作過程における意識の変化をダイレクトに反映した、意義深いステージだった。(文=森朋之)