FIAが、コスト制限の代わりにF1により安価なスタンダードエンジンを導入するというプランを発表したが、これに関してホンダF1プロジェクト新井康久総責任者が否定的な発言を行った。
現在の1.6リッターターボエンジンにカスタマーチームは1シーズンあたり1,500万ポンド(約27億6,000万円)から2,000万ポンド(約36億8000万円)を支出、700万ポンド(約12億9000万円)程度だったV8時代から大幅に費用が上がったと考えられている。
中小チームの負担を減らすため、FIAはカスタマーエンジンの価格に制限を設けたい考えだったが、フェラーリが拒否権を行使してこれをブロックした。そのためFIAは2017年にインディペンデントエンジンサプライヤーを招き入れ、安価なクライアントエンジンの入手が可能になるようなプランを推し進めると発表した。
FIAのプランは、新仕様のエンジンを現行パワーユニットと共に走らせるというもので、新たに導入するエンジンの仕様として2.2リッターV6ツインターボが提案されているようだ。
しかし2種類のエンジンが混走することへの懸念が出てきている。Speed Weekのインタビューに対し、新井総責任者は次のように発言した。
「FIAが完全に新しいエンジンの導入を望むなら、2種類のエンジンが存在することになります。そういう状況に適応するのは難しい。2種類のエンジンが走るとF1の面白さと興奮が減ることになるでしょう」
「全体的に状況はとても複雑です。ホンダが関心を持っているのはレースと市販車との相乗効果です。ホンダがF1に復帰した理由のひとつは、環境にやさしいテクノロジーの魅力なのです」
ジェンソン・バトンは、平等に2種類のエンジンを走らせるのはほぼ不可能だとCrash.netに対して発言した。
「新しくF1に参入するチームを助けるなら、いいことなのかもしれない。でもメルセデス、フェラーリ、ホンダといったマニュファクチャラーにとってはとても難しい問題だ。この複雑なパワーユニットに膨大な作業を費やしてきたんだ」
「今年の僕らを見ても分かる。競争力をつけるには時間がかかるんだ。だから突然誰かが競争力のあるエンジンを搭載できるという状況はかなり難しい」
「それにどうやって平等化を図るんだろう? 一番パワーのない1.6リッターに合わせるのか、一番パワーのある1.6リッターに合わせるのか……。どうやって判断するのかな? 今の段階でも十分複雑なのに、他の種類のエンジンを取り入れつつ平等化を図るなんて、ほぼ不可能だと思う」
ザウバーのチームプリンシパル、モニシャ・カルテンボーンは、自分たちが望むのはあくまでエンジン価格の引き下げであって、新エンジンの導入ではないと述べている。
「新しいエンジンがコストを引き上げる大きな要因になっていることは確かです。2013年と比べてコストが上がりました」とカルテンボーン。
「ですが違う種類のエンジンを導入するのが正しいことだとは思いません。あるマニュファクチャラー(BMW)との経験から、彼らはそういう選手権に参戦したくないと考えていることは分かっています」
「それにどのようにして平等を実現するのでしょう。それは簡単なことではありません。そういったことは不可能だと思います」
「私たちとしてはエンジンの価格を解決したいのです。それが一番の目標です」
メルセデスは現在の価格でもすでに多額の赤字を被っていると主張している。