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「夫婦別姓」最高裁で弁論――原告団「政治が動かない以上、司法が積極的な判断を」

2015年11月04日 19:41  弁護士ドットコム

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夫婦で別々の姓を名乗ることを認めない民法の規定は、憲法が保障する「婚姻の自由」を侵害しているなどとして、5人の男女が国に損害賠償を求めている裁判で11月4日、最高裁大法廷の弁論が開かれ、原告と国側がそれぞれ意見を述べた。


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原告は「調査結果によれば、96%の夫婦が夫の名字を選んでおり、(形式的には平等に見えても)男女差別を生み出している」と主張。夫婦同姓の制度を定めている民法750条は「憲法13条に由来する『氏の変更を強制されない権利』を侵害し、婚姻の自由を認めた憲法24条にも違反する」と述べた。



一方、国側は「夫婦はどちらかの名字を選ぶことができるので、差別ではない」「『氏の変更を強制されない権利』は憲法で保障された人権ということはできない」と反論した。



弁論後の記者会見で、榊原富士子弁護団長は「大法廷に回付されたのは、『憲法判断から逃げない』という最高裁の意思表示だ。大きな一歩だと感じている。政治が(法改正に)動かない以上、司法が積極的に判断するべきだ。今回の裁判を法改正につなげたい」と語った。



●自分の名前がなくなるのは、自分という存在が消されるのと同じような感覚


日常生活では結婚前の姓を「通称」として名乗ることができるので、法改正は必要ない――。そんな意見があることについて、原告の吉井美奈子さんは「通称を使える場面は限られている」と、記者会見の席で反論した。



「社会保障などの公的な手続きでは、戸籍の氏名が求められる。職場でも、通称でいい場面と、戸籍の氏名が必要な場面があり、事務方に確認作業などのコストが生じている。旧姓を使用できる範囲を広げたとしても、根本的な解決にはならない」と述べた。



また、原告の一人である小國香織さんは「夫婦別姓を望むか望まないかは、根源的な問題だ。『どんな色を好きか嫌いか』の問題に似ている。『名字はただの記号だからなんでも構わない』という人もいる」としたうえで、「私にとっては、自分の名前がなくなるということは、自分という存在が消されるとのと同じような感覚。非常に切迫した問題だ」と訴えた。


(弁護士ドットコムニュース)