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大野いとが語る、恋愛映画と自身の感情「辛い思いをしたときに、誰かの言葉を思い出して頑張れる」

2015年11月04日 00:21  リアルサウンド

リアルサウンド

大野いと

 新堂冬樹の小説を原作として、ハン・サンヒ監督がメガホンを取った恋愛映画『忘れ雪』が、11月7日より公開される。子供の頃に瀕死の子犬を偶然拾った深雪と、その子犬を治した韓国からの留学生ユン・テオの、不思議な運命と純愛を描いた同作で主演を務めたのは、K-POPアイドルグループ・2PMのメンバーであり、その演技力にも定評があるチャンソンと、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』への出演で注目を集め、さらなるブレイクが期待される若手女優・大野いと。儚くすれ違うふたりの物語に、大野いとはどのような心境で臨んだのか。本人に話を聞いた。


参考:大野いと、ツンデレ演技をどうこなすか? 『馬子先輩の言う通り』先輩キャラに期待すること


■「自分なりに前よりも進歩していたように感じた」


ーー今回の主人公の深雪は、初恋の人を想い続ける純粋な性格の持ち主でした。演じてみてどう感じましたか?


大野:とにかく全力で役になりきろうと思って臨んだのですが、撮影中はなかなかうまくいかない部分もあり、自分の力不足を感じました。たとえば、最初にユン・テオ(チャンソン)と再会してお話しするシーンでは、監督から何度も「もっと明るく演じて」と言われたんですけど、自分では気持ちを高く持っていったつもりが、すぐには演技に反映できなかったり……。でも、初めて完成した作品を観たときは、自分なりに前よりも進歩していたように感じて、小さいけれど達成感もありました。


ーー彼女の恋愛観についてはどう思います?


大野:すごく素敵だなって思います。ひとりの相手をずっと思い続けるなんて、なかなかできることではないし、実際、わたしを含めて周囲ではあまりそういう話は聞かないから。一途に過去の思い出を温めていられるのは、とてもロマンチックなことだなって。わたしは幼馴染のひとをずっと好きでいたりはしないから、わたし自身の恋愛観とは違うかもしれないけれど、でも、自分が辛いときに優しい言葉をかけてくれたひとは、友達でも大きな存在だから、もしかしたら彼女にとってのテオは、そういう存在だったのかもしれない。


ーー冒頭のカフェのシーンでは、恋する女性の表情がうまく表現されていました。


大野:テオが優しい言葉をかけてくれたときのことを思い出すだけで、彼女は笑顔が溢れてきちゃうんです。辛い思いをしたときに、誰かの言葉を思い出して頑張れるっていう気持ちは、きっと誰しもが持っていると思うんですけど、それが彼女にとってのテオだって思えたから、自然とそういう表情が出てきたんだと思います。


ーー大野さん自身が、辛い時に思い出す顔は?


大野:家族だったり地元の親友だったり、それからいつも親身になってくれるスタッフさんとかですね。「いとちゃんは大丈夫だよ」とか、いつも優しい声をかけてくれる人たちの顔が浮かびます。


ーー共演のチャンソンさんの印象についてもお聞かせください。


大野:わたしはチャンソンさんの話し方や声がすごく好きで、優しくて柔らかいんですよね。わたしが撮影で緊張しているときも安心させてくれたりして、それがテオの優しさと通じるなって思いました。相手がチャンソンさんだったから、気持ちを乗せて演じることができたと思う。本当に優しくて魅力的な方なのでドキドキさせてくださる相手だし、いまも会うとちょっとドキドキしちゃいますね(笑)。


ーー撮影時以外は、どんなやり取りがありましたか?


大野:チャンソンさんのお母さんが手作りした梅キムチを頂きました。カリカリ梅みたいな小さい梅をキムチに漬けたやつで、野菜とかも入っていなくて、酸っぱ辛いんだけど美味しいんです。「すごく家族を大事にされているんだな」って感じて、チャンソンさんの自然な優しさが感じられました。


■「まずは仕事に自信を持てるようになりたい」


ーー映画のストーリーについても聞きたいと思います。深雪はかなり波のある役というか、ジェットコースターのように状況が変化していきますよね。


大野:本当に、波がありすぎて必死でしたよ、わたしは(笑)。多分、わたしが思っている辛さと、深雪が抱えている辛さは全然違う種類のものだから、そこに気持ちを近づけようとすると無意識のうちに疲れてしまうこともありました。でも、大変だったけれど、できるだけ彼女の心情に寄り添えるように努力はしました。すごくキュンキュンさせる映画というのとは少し違うけれど、全体としてピュアなラブストーリーになっていると思うので、その辺を楽しんでほしいかな。


ーー自身の経験を越えた役柄に挑む時は、どういった工夫をしていますか?


大野:関連のある本を読んでみたりとか、周囲のひとに体験談を聞いたりして、想像を巡らせますね。今回で言えば、実はわたしは犬が苦手なんですけど、犬好きの人から情報を仕入れて、自分で自分を洗脳して頑張りました(笑)。


ーーそれは意外ですね! あんなに犬と触れ合っていたのに。ハン・サンヒ監督は、日本の監督と比較して何か大きな違いはありましたか。


大野:やっぱり言葉の壁は大きかったですね。なにか質問をしても聞きたいことが伝わらなかったりして、お互いに根気よくコミュニケーションを重ねる必要がありました。でも、映画に対する熱意は日本の監督と一緒で、そういう意味ではもちろん信頼していました。作品でいうと、監督の映画は全体的に映像が柔らかい印象で、どこかふんわりしているんですよね。数年前の『初恋の雪~ヴァージン・スノー』という作品も、今作もどこか白っぽい印象で、もしかしたらそれが監督のカラーなのかなって思いました。それと、言葉のニュアンスや台詞の選び方も、どこか穏やかだなって思いました。


ーーでは最後に、もし大野さん自身が忘れ雪に願い事をするとしたら、どんなことを願うかを教えてください。


大野:たくさんありすぎてどうしようって思うんだけど……まずは仕事に自信を持てるようになりたいかな。わたしはコメディというか、笑いのある役がすごく好きなので、そういうところにも挑戦してみたいかも。あと、これはまだまだ先の話かもしれないけれど、お母さんの役を素敵に演じられる女優さんに憧れがあるので、いつかはわたしもそうなりたいと思っています。(松田広宣)