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乃木坂46が『アンダーライブ4thシーズン』で見せた、パフォーマンスの“懐の深さ”

2015年11月01日 17:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『アンダーライブ4thシーズン』の様子。(C)乃木坂46 LLC

 10月15日から始まった乃木坂46の『アンダーライブ4thシーズン』は、25日の公演で幕を閉じた。この4thシーズンは、すでに発表されている今年12月17、18日の『アンダーライブ日本武道館公演』への助走としての意味合いも持っている。アンダーメンバーのみによるこのライブが昨年の春に始まったことを思えば、その翌年の日本武道館公演実現は、順調すぎるほどの展開にも感じられる。それは乃木坂46というグループ全体が昨年から今年にかけて自身のブランドをいっそう大きくしてきたことの成果でもあるが、その進化をライブパフォーマンスの面から支えたのがアンダーメンバーであることは間違いない。昨年12月に東京・有明コロシアムで行なわれた『アンダーライブ セカンド・シーズン Final!~Merry X'mas “イヴ”Show 2014~』ではすでに、アンダーライブ初年度の経験値に裏付けされて選抜メンバーをしのぐようなパフォーマンスを見せていたアンダーメンバーだが、今年に入り「ライブパフォーマンスのアンダー」としての力をさらに強化する試みを重ねている。


 今年4月の3rdシーズンでは、MCの時間をほぼ排してノンストップライブで駆け抜ける構成でプライドを示したアンダーメンバーだが、今回の4thシーズンの構成で特筆すべきは楽曲のセレクトだった。乃木坂46の表看板になるはずの歴代シングルの表題曲をほとんどセットリストに入れず、かわりに各シングルのアンダーメンバー楽曲を並べるかたちをとった。そのことによって、まだアンダーライブが存在しなかった時期も含めてのアンダーメンバーの歴史を振り返りながら、現在の彼女たちの厚みを感じることができる。全曲披露が恒例になっている毎年2月のバースデーライブとはまた違う、アンダーのみの歩みをライブパフォーマンスで確認するような機会になっていた。たとえば、初期アンダー曲の「狼に口笛を」のライブでの強さもあらためてうかがい知ることができるし、アンダーとしての物語が鮮明になる2014年のアンダー曲「生まれたままで」や「ここにいる理由」をあらためて現アンダーメンバーで位置づけ直すような興味深さもある。もちろん、シングル表題曲に頼らない構成でライブに臨めたことは、現在のアンダーメンバーたちの自信の現れでもあるはずだ。アンダーライブ出演に際して、メンバーたちが自らのアイデンティティに誇りを見せるセットリストになっていたように思う。


 春開催の3rdシーズンは、その直前まで研究生だった伊藤純奈、佐々木琴子、鈴木絢音、寺田蘭世、山崎怜奈、渡辺みり愛といった2期メンバーが、初めて他のメンバーと同じく正規メンバーとして迎えたライブだった。正規メンバーとしてのフォーメーションも初めて与えられるなど他メンバーと横一線に並んだことを祝うように、3rdシーズンでは彼女たちのユニット曲「ボーダー」がアンコールで印象的な位置づけを付与されていた。今回の4thシーズンでは、その「ボーダー」が1期メンバーによって披露されたことで、他の曲と同じように乃木坂46のレパートリーに溶け込んでいく契機であることをうかがわせた。ここに垣間見えるように、今回の4thシーズンは2期メンバーが完全に正規メンバーとして1期メンバーと混ざり合っていることも大きな特徴だ。研究生だった2期生の正規昇格を祝うような段階もすでに通過し、現行メンバーでの一体感は3rdシーズン以上に増している。それによって、今回のライブには学業で不参加だったメンバーが戻ってくる際の受け入れ準備も、自然にできているように感じられた。


 アンダーライブでは、それぞれの時期において牽引役を務めるメンバーの継承もまた大きなストーリーになる。初期のアンダーメンバーを中心的に支えた伊藤万理華や齋藤飛鳥らが今年のアンダーライブからは去り、またフロントとバックを柔軟に移動しながらアンダーライブの支柱になってきた井上小百合も選抜メンバーとなったため、4thシーズンには参加しない。そんななか、彼女たちと同様にアンダーライブを引っ張ってきた中元日芽香が、センターを務めた3rdシーズンに続いて今回もグループを牽引した。井上らの抜けた現行メンバーを先導する中元はこれまで以上に頼もしく、アンダーメンバー内での主軸の継承が確かに行われていることがわかる。


 もっとも、12thシングルのメンバー配置に基づく今回のアンダーライブでセンターに立つのは、「別れ際、もっと好きになる」のセンターポジションを務める堀未央奈だった。アンダーライブにとって、堀という存在はある種、異質である。シングルへの参加開始と同時にセンター抜擢というかたちで選抜入りし、11th『命は美しい』まで選抜に入り続けていた堀は、これまでアンダーライブの歴史に名を連ねることのなかった人物だ。選抜メンバーとしては独特の存在感を示してきた彼女だが、今回センターを務めたアンダーライブという場では他の誰よりも経験が浅い。アンダーライブのフロントにとって、こうしたパワーバランスはかつてなかったことだ。けれども、中元を中心としてアンダーを引っ張ってきたメンバーたちと堀とが、今回のライブでは予想以上に自然に溶け合っているようにみえた。それは、選抜メンバーへの対抗としてライブを得意とするアンダーが存在していた時期を経て、よりグループとして一体になることのできた今夏の全国ツアーの成果のひとつなのかもしれない。一方でアンダーライブを中心的に支えてきたメンバーたちのストーリーはありつつも、それとは関係なく、誰がどのポジションに入ろうとも違和感なくアンダーライブとしての統一感を見せることができる。今後もシーズンによって参加メンバーが移り変わっていくことが避けられないこの企画にとって、そうした柔軟性は不可欠だ。新たなバランスで挑んだ4thシーズンのアンダーライブは、そんな懐の深さをごく自然に見せていた。


 12月に控える日本武道館でのアンダーライブに向けてのポジティブな材料は、このごく自然に獲得していた懐の深さなのだろう。昨年の有明コロシアムでのアンダーライブは、当時の研究生も含めてすべてのメンバーが楽曲のセンターを経験する「全員センター」が鮮やかな驚きを生み、それが今年のアンダーの一体感へとつながる機運を盛り上げた。今回はそうした水準がすでに当たり前のものになっているからこそ、また別の段階のさらなる驚きを期待したい。(香月孝史)