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"10人のために作られた服" パリで活動する砂川卓也が「mister it.(ミスター イット)」立ち上げ

2015年11月01日 11:22  Fashionsnap.com

Fashionsnap.com

mister it. デビューコレクション
パリのクチュールメゾンでデザイナーとパタンナーを務めてきた砂川卓也(いさがわたくや)が、メゾンの同僚たちに感謝を込めて「collection zero(コレクションゼロ)」と題した2016年春夏の展示会を、ビンテージショップの「THANX GOD I'M A V.I.P」で開いた。ブランド名は「mister it.(ミスター イット)」で、「ちょうどいい非日常=日常にある光景、見たことのあるものをちょうどいい視点で切り取る。服一着一着に愛着を持って、大切にしてくれる人に着てもらいたい」がコンセプト。そして何よりも「人や物をリスペクトする気持ちを大切にしたい」と言う。(文・写真:アナログフィルター『Journal Cubocci』編集長 久保雅裕)

パリから新ブランド始動の狼煙「mister it.」の画像を拡大

 「パリに来て言葉で苦労したが、笑わせようとすれば笑顔になるし、伝えようとする気持ちがあればコミュニケーションがとれる」という気持ちを込めた「コレクションゼロ」は、パリでお世話になった元同僚のデザイナーとパタンナー10人に感謝の気持ちを伝えると共に、自身のブランド立ち上げという新たな一歩への礎を築くという意味合いのコレクション。それぞれの型は、10人それぞれを想像し、その人の為に作られた一点物だ。一般販売は行わず、展示終了後にギフトとして渡す予定だという。
 眼鏡をよく忘れる人には眼鏡チェーン付きのトップ、子供心を持った女性には花一輪を胸に挿せるディテールを、髭を気にする男性には内ポケットに鏡を差し込んだシャツ、最近結婚した女性にはバックに大きなスリットが入りマタニティーにもなる白のトップス、といった具合にそれぞれのキャラクターに合わせたストーリーが設定されている。そして白のトップスの下には、地面に裾が大きく広がった歩けない黒のパンツが展示されており、これは自分自身に向けた服。3年間メゾンで走り続けてきたが、一度立ち止まって周りを見回したら面白い人たちがたくさん居たことを表現しているという。
 ベージュのコートは、手に同素材のファストフード店のトレイとポテト、ドリンクを携えている。この服をイメージした女性は普段、ボディーにフィットしたセクシーな服しか着ず、ファストフードには行かなそうなキャラクターなのだが、逆にシックなファストフードであれば行くのではと想像し製作したそうだ。 またイメージビジュアルは、街中で風船を頭に付けてもらい、ストリートフォトで仕上げた。ここにも笑顔が溢れているという趣向だ。 砂川は「今回のコレクションは、多くの人に支えられて実現できた。本当に感謝している」と語っていた。
 砂川は、エスモード大阪と同校パリでデザインとパターンを学び、在学中には「2010年度オンワード樫山 Tokyo 新人デザイナーファッション大賞」で秀作賞、「2012年仏ディナール国際ファッションコンクール ・ウィメンズ部門」でグランプリを受賞した。エスモードパリを主席で卒業後、パリのクチュール メゾンでデザイナー及びパタンナーとして3年間に渡り、オートクチュールをはじめウィメンズプレタポルテのメインコレクションやプレコレクションまで数々のコレクションを手がけてきた。2016-17年秋冬シーズンに向けた展開については、まず「THANX GOD I'M A V.I.P」と自社サイトで販売を開始し、その後セレクトショップや百貨店での展開を計画している。(文・写真:アナログフィルター『Journal Cubocci』編集長 久保雅裕)