2015年11月01日 09:41 弁護士ドットコム
強姦罪や強制わいせつ罪を処罰しやすくし、強姦罪の法定刑を重くする「刑法」の改正案がこの10月、法制審議会に諮問された。
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現行法では、強姦罪や強制わいせつ罪は、被害者の告訴がないと加害者を処罰できない「親告罪」となっている。また、強姦罪の対象となる行為は、男性器を女性器に挿入する場合に限られている。
今回の改正案では、被害者の告訴を不要にする。強姦罪について、肛門性交や口淫も含めた「性交等」を処罰対象とし、性別の縛りを無くす。
また従来は暴行・脅迫が必要とされていたが、「父母などが、その影響力を利用した場合」も、強姦・強制わいせつ罪の対象とする。
さらに、強姦罪の法定刑を「3年以上」の懲役から「5年以上」にひきあげるなど、刑罰を重くしている。
今回の改正案は、性犯罪の被害者支援に携わる弁護士の目には、どう映っているのだろうか。岩崎哲也弁護士に意見を聞いた。
「従来、強姦罪等の性犯罪は、『性的自由に対する罪だ』と考えられてきました。つまり、性犯罪は、個人の自由の侵害になるから犯罪とします、という考え方です。
しかし、強姦罪などの性犯罪は、単に『性的な自由を奪う』という側面だけではなく、より重大な人格や尊厳を著しく傷つけるという側面もあります。この側面を抜きにすることは、本来できないはずです。
諮問のもとをつくった、有識者による検討会でも、こうした認識がおおむね共有されました。こうした認識は、性犯罪被害者の実感にも沿うものでしょう」
「このような認識をふまえると、人間の尊厳を害する強姦罪の法定刑を、身体と財産を害する強盗罪と同等以上とすべきことをはじめ、議論が素直に理解できます。
もちろん、それだけで話が済むほど単純ではありません。
ただし、議論をするときには、性犯罪が人間の尊厳を害する『魂の殺人』であるということを、必ず念頭に置く必要があります。
しかし、このような議論以前に、性犯罪の加害者が、その点に思い至り、犯行を踏みとどまってほしいと思います。
今後の議論と、できあがる法律が、『加害者を踏みとどまらせる力』を持つことを期待しています」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
岩崎 哲也(いわさき・てつや)弁護士
東京弁護士会所属。北海道大学法学部卒。元検事。弁護士法人中村国際刑事法律事務所の犯罪被害者支援部門長。弁護士登録後は、犯罪被害者支援だけでなく、一般民事、交通事故、家族関係、相続等の事案の経験を積んだほか、刑事弁護、殊に重大刑事事件の弁護を担当し、また、企業不祥事調査等も手掛けている。
事務所名:中村国際刑事法律事務所
事務所URL:http://www.t-nakamura-law.com/?gclid=CMKWmun5wMgCFdcjvQodCpQDnA