ロシアGPで「2~3週間以内に来年のパワーユニットが決まっていないと、マシンの開発という観点から、かなり厳しい状況になる」と語っていたレッドブルのダニエル・リカルド。しかし、それから3週間が経とうとしているメキシコGPでも、まだ進展は見られていない。リカルドは木曜の会見で、次のように現在の心境を述べた。
「正直、状況が読めなくなっていることは確かだ。でも僕は以前よりも、来年もレースできることを信じている。いまは、どのパワーユニットになるのかということがわからないだけ。もちろん誰も僕たちにパワーユニットを供給しなければ、レースを続けることはできない。僕たちはレースがしたい。だから供給してくれるメーカーがあれば、どこでも申し出を受け入れるはずだ」
メルセデスとの交渉が断たれ、フェラーリにも断られたレッドブルに、残っている選択肢はふたつしかない。ひとつはルノーとの復縁で、もうひとつはホンダだ。ルノーはロータスを買収することで基本合意しているが、最終的な決定はシーズン終了後になると言われており、不透明な状況である。
ホンダの新井康久F1総責任者はレッドブルへの供給について、次のように語っていた。
「そんな噂が流れていることはアメリカGPで初めて聞きました。可能性がゼロというわけではないが、いまの我々には噂を気にするより、マクラーレンとやらなければならないことがたくさんある」
だが、かつてホンダがF1に復帰することを発表した翌月、2013年6月の記者会見でモータースポーツ部の佐藤英夫部長は、2チーム目の供給について、こう回答していた。
「2015年はマクラーレンだけで、いまのところ他チームへの供給は考えていません。2016年以降についてはチームから要望があった場合、話し合いをさせていただきながら複数チームへの供給を考えていきたい。そうすることで、F1からホンダが期待されるように、少しでも役に立てればと考えています」
つまり現在その状況が訪れているわけで、ホンダが方針を変えていなければ、レッドブルとの交渉に応じるのは自然なことだと思われる。しかし、新井総責任者は実現は困難との見方も示している。
「だって、もう10月の終わりですよ。我々が初めてマクラーレンのシャシーにパワーユニットを搭載したときだって相当苦労しました。時間だけでなく、技術的にもかなり大変です。ソフトウェアの作りかた、レースマネージメントのやりかたも違う。電気系の配線を1本つなげるにしても信号の形態が違えばデータの送り方が変わってくるので、そこで読み込めなくなったら、もうおしまいです」
だとすれば、ホンダがレッドブルへパワーユニットを供給することに反対していると言われるロン・デニスを、バーニー・エクレストンが説き伏せたとしても時間的、技術的に厳しいということになる。
しかし新井総責任者は「可能性がゼロというわけではない」とも認めている。金曜の会見では「最近チームからのアプローチがあり、話し合いを続けている」と発言。「まだ決まったことは何もない」と付け加えた。レッドブルの来季は、どうなるのか。決断の時が迫りつつある。
(尾張正博)