「無事に終わった、という感じです」。新しくなったアウトドローモ・エルマノス・ロドリゲスで、初日の2セッションを終えた心境をホンダの新井康久F1総責任者は、そう語った。
もちろん、まったく問題がなかったわけではない。フリー走行1回目の後半で、フェルナンド・アロンソは左リヤタイヤがデブリ(破片)によってカットされるというトラブルに見舞われた。金曜のフリー走行1回目は、最初の30分間に限ってプライムタイヤ(今回はミディアム)が1セット余分に供給される。これは30分を経過した時点で返却しなければならず、残りの60分間には使用できない。
アロンソがデブリを踏んだのはセッション後半の60分間で、装着していたタイヤは週末に使用できる6セットのミディアムのうちの1セットだった。残りのミディアムタイヤを前倒しで使うことも可能だが、そうすると予選やレースにしわ寄せがくる。しかし、新サーキットでの走行データは貴重だ。そこで、チームはアロンソにインターミディエイトタイヤを装着して、データ収集のために周回を重ねることにした。フリー走行1回目にアロンソの順位が17位だったのは、そのせいだった。
「パワーユニットのセッティングのために走ってもらっただけなので、データを収集した時点で早めにセッションを切り上げてもらいました。もちろん午前中、フェルナンドはタイムアタックをしていません」
フリー走行1回目は、ジェンソン・バトンにもトラブルが発生していた。
「高電圧系のセンサーが障害を検知して、システムをシャットダウンしたためにデプロイが行えない状態になった。原因は、いま調査中です」
もともとバトンはフリー走行1回目のあとにパワーユニット交換を行う予定だったので、早めにセッションを切り上げて午後のフリー走行2回目に臨んだ。だが、またも同じトラブルに見舞われる。
「すべてを解析している時間がないので、考えられる部品を交換して、再び走りました」。幸いセッションの途中からは問題なく走行できるようになり、フリー走行2回目はアロンソのコンマ2秒落ちとなるベストタイムを出し、9位で終了した。
トラブルは起きたものの、現場で克服できたたことが、新井総責任者が安堵のコメントを発した理由だった。
「順位についてはフリー走行2回目の天候が不安定で、チームによってはメニューを変えていたかもしれないので、わかりません。それよりも大切なことはトラブルに見舞われながらも、しっかりと走ってデータを収集できたこと。いい初日だったと思います」
(尾張正博)