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WANIMAが語る、バンドの強さと音楽への情熱「うちは個人技よりもチームワーク!」

2015年10月31日 17:11  リアルサウンド

リアルサウンド

WANIMA

 PIZZA OF DEATHが、レーベルとしてだけではなく、マネジメントとして初めて契約したことが話題となったWANIMAのデビューミニアルバム『Can Not Behaved!!』から1年。バンドはぐんぐん名と音を広めていき、ライブのチケットは瞬殺でソールドアウトするほどとなった。そんなタイミングで、1stフルアルバム『Are You Coming?』がリリースされる。これが、状況に流されることなく、自分たちの魅力を詰め込んだ、語り継がれるべき傑作なのだ。レゲエの心地いいグルーヴを取り入れたメロディックパンクに、エロから郷愁まで人間臭さがぷんぷんする日本語詞がのった名曲の数々は、彼らの揺るがざる才能を証明している。リアルサウンドとして初インタビューで、彼らの自然体に迫った。(高橋美穂)


・「三人が信じてきた、好きな音を出したくて」(松本健太)


ーー昨日、EP『Think That…』のリリースツアーを終えたばかりの真っ昼間ですが、みなさん爽やかな表情ですね。


松本健太(以下、松本):疲れはないです。好きなことなので、また元気になっちゃったぐらいです。


ーーライブでは、大合唱が巻き起こっていたようで。


松本:凄かったですね! バンドメンバーってこんなに多かったっけ!?って思ったくらい、みんな歌っていました。


ーー大合唱のボリュームは大きくなってきました?


松本:そうですね。一発目のミニアルバム(『Can Not Behaved!!』)を出してから、初めて行く場所も多かったんですけど……『Think That…』では、11本ソールドアウトして、初めて行った宮崎だけは、あと20枚チケットが残っちゃって! 


ーー具体的な数字(笑)。『Can Not Behaved!!』をリリースしてからの1年間を、振り返ってみてどうですか?


松本:いやあ、振り返る暇もなく。東京出てきて音楽やれない時期が長かった分、今はやりたいことがやれているので、あっという間でした。


ーー楽しめています?


松本:そうですね。課題はもちろんあるんですけど。ほとんどのフェスにも出させてもらい、一個一個やっていったら、あっという間でしたね。まあ、その中でもワンチャンしつつ。


ーーそこは大事なんですね(笑)。状況は盛り上がっていますけど、ニューアルバムも気負わずに作れましたか?


松本:はい。三人ともアガれる音っていうところに対しては、妥協はしなかったですね、今回“も”。三人が信じてきた、好きな音を出したくて。


ーーどんな流れで作っていったんですか?


松本:歌詞は僕が作っているんですけど、曲は三人で集まって、ドラムとギターを鳴らしてもらって俺が適当に歌うっていう、シンプルな作り方をしています。こんな感じって伝えて。


ーーどれくらい「こんな感じ」っていうのを伝えるんですか?


松本:びっくりするぐらいざっくりです。他の人だったら理解できないレベルです。表情とかで伝えるんですよ。


ーーそれ、会話でもないし、テレパシーレベルじゃないですか(笑)。


松本:まず、スタジオに入っておはようもないですからね。


ーーえ!?


藤原弘樹(以下、藤原):ないです。


松本:それで、それぞれチューニングして鳴らし始めるっていう。特に、ギターの人とは一言も喋らないです。


藤原:ギターの人(笑)。


ーーそれで、光真さんはくみ取れるんですか?


西田光真(以下、西田):はい(笑)。


松本:4歳から一緒にいる幼馴染なんで。とは言え、人間的にどうなのかって感じですよね(笑)。


・「前のめりで行こうとは思っています」(藤原弘樹)


ーー収録されているのは、最近作った楽曲が中心ですか?


藤原:最近作った曲ばっかりです。「THANX」と「1CHANCE」以外は。


松本:「THANX」のサビは高3の、(地元の熊本から)東京に出てくる前からあったんです。やっとこのタイミングで出せるなって。


ーー「1CHANCE」はWANIMAの個性でもあるエロさが炸裂している楽曲ですが、今や女の子もガンガン歌っていますよね。


松本:アガりますよ。音楽ってすごいな!って思う。


ーーこういうエロい楽曲って、男の子の欲望として無邪気に生まれたのか、それとも他に歌っているバンドがいないからっていう戦略的なところで生まれたのか、どちらなんでしょう。


松本:いやあ、無邪気なものですね。それをエロカッコよくしたくって。海外なら、エッチなこともカッコよく歌っているじゃないですか。でも、日本だと引かれる。それが嫌だなって思っていて。それプラス、欲求として、これからもこういうことを歌っていこうと(笑)。


ーー宣言(笑)。エロカッコよくする上で、気を付けているところってありますか?


松本:エロに関わらずなんですけど、クサくならないようにしたいと思っています。お客さんに上から言うのは違う気がするし、同じ目線で歌っていきたいので。


ーー自然体な姿勢は、お客さんが増えた今も変わらないんですね。


松本:カッコつけてもカッコ付かないところはあるので。こんな頭でこんなヒゲで(苦笑)。


ーーカッコつけようとした時期はあったんですか?


松本:服は好きなんでオシャレはしますけどね。カッコつけようとすると、どうもムズムズするんですよね。お客さんもWANIMAにはそれを求めていないと思うので。……(西田に)ずっと(写真に)撮られているからな、光真!


ーー急に!(笑)。


松本:ギターの人はヒゲを触る癖があるんですよ。


西田:(小さな声で)パターンは変えとった……。


松本:いけんよ! そこの自然体はいらんわ! はき違えるな(笑)。


ーー質問に答えて頂きながら、よくメンバーを見ていますね(笑)。また、エロい歌詞の一方で、真逆とも言える、郷愁の思いが書かれた歌詞が多いのも、WANIMAの個性ですよね。


松本:歌詞を作るときに思い浮かべるのは、田舎の熊本の景色が多いので。それが染み付いているので、やっぱり出てしまうんだと思います。


ーー真逆のようで、エロさと郷愁って、人恋しさっていう意味では同じなんですよね。みなさん、寂しがり屋なのかなあなんて想像しちゃっていて。


松本:そうですね。人も好きですし女の子も好きですし。僕ら地方から出てきて、いろいろ置いてきたものも多いので、そういう寂しさはあるんだと思います。


ーーだから、ライブでお客さんとの距離感も近いんですかね。


松本:そうなんですかね。お祭りとか好きなんで、みんなで一緒になって。


藤原:前のめりで行こうとは思っています。結構表情とかも見えるので。


松本:昨日も当日券を買いたくて何十人、下手したら何百人が来とったかもしれないですけど、そういう人たちのことも気になります。だから、ライブが終わった後も写真を撮りますし、サインが欲しいって言われたら書きますし。街中で会ったら、下手したらワンチャン狙うときもあるでしょうし(笑)。


ーー(笑)。発言にワンチャン願望を付け足すことは欠かさないですね!


松本:言っちゃいますね。(笑)。《迷いなら捨てて 後腐れ無しで‼》(「1CHANCE」歌詞)っていうことはずっと言ってきたテーマなので。


ーー自分の歌っているところからブレない生活を送る男らしさがありますね(笑)。


松本:そうです、男らしいです!ちからー!!


ーーそういうところって、隠すバンドも多いですけど。


松本:普通の人間は隠すんだと思います。でも、いつ消えるかもわからないので。


ーーこれだけバンドの状況が盛り上がっているのに、危機感があるんですか?


松本:ありますよ!


藤原:常々。


松本:指導してくれる人も周りにたくさんいますし、そのたびにまだまだやなと思います。焦るくらいです。


ーーアルバムを聴いて、もうそういう心配は無用だと思いましたけどね。 


松本:ありがとうございます! こんなもんじゃないよなあ?


・「一緒におればおるだけ、士気が高まるっていうところはある」(西田光真)


ーー特に後半から極まっていく流れが素晴らしくて。「エル」の泣き笑いのメロディが堪らなかったです。


松本:ありがとうございます。


西田:泣き笑いって、想像したら凄いな(笑)。


松本:そこ!?


西田:でも、そのアルバム自体が日常っぽいですよね。一日っていうか。朝起きて、昼があって、「エル」あたりで一日を振り返って、寝るっていう。


ーー確かに、一日に寄り添ってくれるような流れがある曲順ですよね。貴重な発言でいい一言を、ありがとうございます(笑)。一日っていうところとも繋がってくるんですけど、絶対に前に進めるような歌詞を書いていますよね。そこは、健太さん自身の性格ですか?


松本:そうだと思います。何とかして抜け出したいとか、そういう思いがあるので。


ーー裏を返せば、どん底を見ている人ではなければ書けない歌詞だと思うんですよね。


松本:そうですね……いろいろありましたね。僕の周りにおる人たち、辛い思いをしている人たちが多かったんですけど、そういう人って、凄く笑うんですよ。そういう人に憧れて育ったところがあったので。


ーー健太さん自身は、そうなれてます?


松本:心掛けているんですけど、まだまだ子供ですね(苦笑)。もっと成長したら、もっと綺麗な女性を抱けると思うんですけど。


藤原:最終的にはそこ(笑)。


ーーブレないなあ(笑)。どんな経験をされてきたんですか?


松本:みんな経験するようなことですけどね。簡単に言うと、出会いや別れとか、そういうもんです。


ーー歌詞にも出ていますよね。 


松本:そうですね。歌っても歌っても消えないもんはあるし、歌わんとどうしようもない感じもありますし。まあ、そういう曲もあるし、エッチな曲もあるし。


ーーシリアスだけにならないですよね。


松本:三人共通して、真面目な歌ばっかりだとムズムズするっていうか。お客さんにも、頑張れ頑張れ言われ過ぎても、いやいや頑張っとるから!って怒られそうな気がして。


ーーでも、実は真面目な三人ですよね。


松本:そうですよぉ! 三人とも簡単に落ち込みますし。人間っぽいですね。


ーー三人はバラバラに見えますけど、根っこが近いんですかね。


松本:三人助かっていることは、笑いのツボが一緒なんですよね。趣味は釣りだったり。


藤原:三人で行ったりします。


ーーバンド活動以外も一緒にいるなんて、仲良しですね!


松本:なるべく一緒におったら、無駄な時間がなくなるし、同じ方向を見やすいんやないかなって。強いチームは個人技よりもチームワークだと思うんで。うちは個人技なんかね、下手したら中学生に負けるレベルだし、三人の力を合わせなきゃいけないんで。


ーー光真さんも、三人が一緒にいることが大事だと思います?


西田:大事……と思ったことはないですけど。


松本:ないんかい!


西田:一緒におればおるだけ、士気が高まるっていうところはあると思います。僕は寂しがり屋なんで、常に誰かといたいんですよね。人間が好きなんで。


ーー藤原さんはどうでしょう。


松本:(藤原は)二つ年上なんで、合わせてくれているところもあると思う。元々団体行動はしないんですよね。


藤原:苦手なタイプです。でも、大切さがだんだんわかってきましたね。一緒にいる分、三人で話す機会も増えますし。純粋に楽しいっていうのもあります。


ーーそこがWANIMAにとって重要ということが、よくわかりました。


松本:そうですね、チーム戦なんで。


ーー戦いですか?


松本・藤原:(声を揃えて)戦いですよ!


ーー勝負感あります?


松本:ありますね。負けず嫌いっていうのもあるので。


藤原:常々。


松本:一過性の流行で終わりたくないですし。


ーー負けた!って思うことはありますか?


松本:ありますあります。反省会は欠かさずやりますし。ライブの映像を見て。それでも、いやあ、完璧だった!って思ったライブは一回もないので。


ーー一回も?


藤原:はい。良かったねえ、はありますけど。


松本:これが究極だ、っていうのはなかった気がしますね。藤くんが入ってもうすぐ3年、光真とは高校生の時から音楽をやっていますけど、ないですねえ。まだまだここはこうできたよなって。バンドってすごいな、ってよく思います。


ーーやってもやっても勝てないっていう。


松本:そうですね。毎回ライブで同じ曲をやるじゃないですか。先輩バンドは20年同じ曲をやっているわけで。それでも……ねえ。飽きないっていうのは、そういうところもあるんじゃないかな。


ーーそういうマインドで活動していれば、これからも油断せずにいけそうですね。


松本:そうですね。アリーナ、スタジアムを埋められたら、一回調子に乗ります(笑)。もっともっと多くの人に聴いてほしいので。こんなんじゃないと。


ーー具体的に、あの場所でやりたい、こんなライブをやりたいっていう目標はありますか?


松本:それがないんですよ。そこが、最近危ないんじゃないかと思っていますけど。三人一緒におって、三人音楽好きで、一緒の方向を向いているようやけど、おおまかな目標を持たんのはどんなんやろうと。目の前の一本一本は大事にやりますけどね。


ーーなるほどね。このピュアなままで、でっかい会場を埋められるようなバンドになっていってくれることを願っています!


松本:はい。無邪気に正直に、女の子には優しく!


藤原:ふはははははは! お腹空いたー!!


(取材・文=高橋美穂/撮影=石川真魚)