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モーニング娘。'15・鞘師里保はなぜ卒業? グループにおける軌跡と今後への期待

2015年10月31日 15:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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 モーニング娘。'15の鞘師里保が10月29日、自身のブログでグループからの卒業を発表した。


 鞘師は9期メンバーとして2011年に『まじですかスカ!』でCDデビュー。以降グループを主にパフォーマンスの部分で牽引し、道重さゆみの卒業後は名実ともにグループの顔ともいえる存在だった。今回の卒業について、彼女はブログ内で「走り続けている中で今後の人生を考えることが今年に入り多くありました。一人の人間として強く生きていくために経験しなければいけないことがあるのでは?と思うようになりました」と思い悩むことが多かったことを明かし、事務所には所属し続けながら、「英語やダンスを学ぶために留学をしたい」と、今後の目標について綴っている。


 まだ弱冠17歳での卒業を、なぜ鞘師は決断することになったのだろうか。『アイドル楽曲ディスクガイド』の編者であり、同事務所のタレントに詳しいピロスエ氏は、彼女のグループ内におけるキャラクターから、その背景をこう推察する。


「彼女はアクターズスクール広島の出身ということもあり、モーニング娘。加入当初から将来のエースと目されていましたし、当時グループを牽引していた高橋愛さんや田中れいなさんの卒業後は、パフォーマンス面で大きく貢献していました。突出しているからこそグループ内で孤高の存在になったといえるかもしれませんが、鞘師さん自身の人柄に起因するところも多少あったと思いますね。彼女はどちらかといえば不器用なタイプで、“ひとりほりほ”という愛称が生まれるくらい、ぼっちキャラが定番化してきて、自分からもネタにするぐらいでしたが、本当はそんなキャラなんか捨ててただみんなと仲良くなりたいと考えていただろうなというのは容易に想像できるし、それが彼女のストレスになっていたのかもしれません。また、道重さゆみさんが彼女のことを『りほりほ』と呼んで可愛がり、鞘師さんも決して甘え上手なタイプではないのですが、道重さんがすすんで接近していたので、いい関係を築いていました。しかし、2014年に道重さんが卒業して以降、9期の4人が上の立場になり、頼れる存在がいなくなってしまった。それもプレッシャーの一つになっていたことでしょう」


 続けて、鞘師がグループに与えた影響について、同氏は先輩メンバーから受け継いだ役割を踏まえてこう述べた。


「モーニング娘。に『スキルが高い』という評価が定まってきたのは“プラチナ期”と呼ばれていた時代で、そのあとに入ってきた9期メンバーは、そんなグループの伝統を持ち前のスキルや頑張りで継承してきました。また、先日の『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日)では、ライブ終了後の反省会で、鞘師さんが振り付けを間違えた佐藤優樹さんに厳しく注意する場面が放送されたのが象徴的でしたが、あれで彼女本人およびグループ全体のストイックさが世間にもアピールされたかと思います。彼女が卒業することで、グループ自体の戦力ダウンは否めないですし、それは同時に、遅かれ早かれ訪れるであろう新メンバーオーディションの開催時期を早めることになるでしょう。しかし残されたメンバーも歌唱力が高い小田さくらさんや、鞘師さんと同じくダンスでグループを牽引してきた石田亜佑美さんなど、高いパフォーマンス力を持っているメンバーが多いので、今後の展開に期待したいところです」


 また、このタイミングで卒業を発表したことについて、同氏はこう分析した。


「今回の卒業発表と似たタイミングとして思い出されるのは、7期メンバーの久住小春さんの卒業の時のケースですね。彼女は2009年秋ツアーの初日で卒業を発表し、同ツアーの12月の最終公演がそのままラストライブだったため、ずいぶん急な話でした。今回は他グループも出演する大晦日のハロプロカウントダウンライブが最後の場となるため、どういう心境でその日を迎えればいいのかわからない人も多そうです。今回も急な話ではありますが、今から振り返って考えてみると、例えば7月18日から21日の4日間に鞘師さんが体調不良で公演を欠席したことがあり、後日の『MBSヤングタウン土曜日』(毎日放送)で、その理由を『疲れ果ててしまって、立ち上がりたいけど立ち上がれない』と話してましたが、そのような予兆は他にもあったのかもしれません」


 ピロスエ氏は続けて、鞘師が今後「海外留学」を見据えていることについて、OGメンバーの活動や彼女の心境から、その理由を探った。


「海外留学を志したきっかけとして、帰国子女の野中美希さんが12期メンバーとして加入したり、グループとしても2014年にニューヨーク公演を行ったり、『J-MELO』(NHKワールド)の主題歌として起用されている新曲『One and Only』が全編英語詞であること、同じアクターズスクールに在籍していたSU-METAL(中元すず香)の所属するBABYMETALが海外進出をどんどん進めていくなど、英語や海外との距離がどんどん近くなったことも、鞘師さんに決断をさせる一因だったのではないでしょうか。また、過去には小川麻琴さんと光井愛佳さんが、卒業後海外留学へ行っており、帰国後に芸能活動を再開させました。鞘師さんはまだ17歳で、数年留学して帰国してもまだ20歳前後なため、もう一度ソロ、もしくはグループで活動を再開させてもおかしくないため、彼女の今後が楽しみでもあります」


 最後に同氏は、ハロー!プロジェクト全体としての動きを踏まえ、彼女とグループの今後についてこう語った。


「2014年の道重卒業以降、ハロプロ全体として大きな動きが続いているのですが、今回の一件は、そうした変革期だった1年の最後にまた起こった大変な事案といえます。近年ファンになった方は、ハロプロそのものの存続を心配するかもしれませんが、十数年ファンをやっている人間からすると、その大きな地殻変動を含めてハロプロだと思っているため、心配しなくていい、と言い切るのもまた違うのですが、すべてを引っくるめて受け止めるしかないのかな、と思っています。また、17歳でこの決断をした鞘師さんには、個人の強さ、そうせざるを得ない周囲の状況、ひいてはアイドルとしての強さや厳しさ、尊さみたいなものを感じます。誤解を恐れずに言うと、そこにはロマンがあると思います」


 年末に訪れた、グループやファンにとっても衝撃の一大ニュース。この出来事がまた一つグループを強くするのかどうか、引き続き動向を見守りたい。(向原康太)