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MACOが『FIRST KISS』で挑んだ多彩な音楽「『ラブソングといったらMACO』と言われるようになりたい」

2015年10月31日 15:01  リアルサウンド

リアルサウンド

MACO

 MACOが、ファースト・フルアルバム『FIRST KISS』を11月4日にリリースする。テイラー・スウィフト「私たちは絶対にヨリを戻したりしない~We Are Never Ever Getting Back Together」をはじめとした洋楽曲の日本語カバーで彼女の名前を知った人も多いだろう。その後リリースした『LOVE』『ふたりずっと』などのシングルは、ティーン層を中心に次々ヒットを記録し、MACOのラブソングはリスナーの間に定着しつつある。


 今作の『FIRST KISS』は、「ラブソングしか作れなかった」というMACOが、ラブソングの王道であるバラードはもちろん、tofubeatsとの競演から興味を持ったというディスコサウンドや、前作『22』でも意識したR&B要素のある曲など、バラエティに富んだ曲調でより多くのリスナーに自身の楽曲を届けることを意識した意欲作だ。これまでのシングル表題曲からすると少し意外に感じるものの、どこか懐かしさを感じるサウンドという共通項で「MACOらしさ」をしっかり表現している。“流行”ではなく“スタンダード”を目指す彼女の姿からは、シンガーとして、アーティストとして成長を遂げ、次なるステップへと歩み始めている様子がうかがえた。


 今回リアルサウンドでは、MACOにインタビューを行い、1年前のインタビューからの成長や今作に至るまでの変化を、じっくり語ってもらった。


■「曲を書くモードがラブソングだな、と」


―ご自身では1年前と今、どのような変化があったと感じていますか。


MACO:ファーストシングル『LOVE』のリリースからの変化が大きいですね。これが自分にとって一番の分岐点になったと思っていて。MACOはカバー曲のイメージが強かったのですが、テレビで「LOVE」を歌わせていただいたりして、オリジナルが定着してきたので。


―その分岐点となった楽曲「LOVE」を1曲目に持ってきたのが今回のアルバム『FIRST KISS』ということですね。タイトルはいつごろ決まったのでしょうか。


MACO:製作の序盤に決めました。まだ曲名が「Kiss」と決まっていなかったころに、この曲はリード曲にしようとあたためていた曲があって、それが「Kiss」なんです。自分の中に降りてくるであろうものをずっと信じて待ち続けて、最終的に切ない曲にたどり着きました。今のMACOは楽曲の歌詞にたくさん出てくる“KISS”に包まれているなと思って。そしてMACOからみんなへの初めてのフルアルバム、“初めてのKISS”ということでこのタイトルをつけました。


―歌詞がより大人っぽくなったように感じます。以前は思いついたらiPhoneに歌詞を書くと話してくれましたが、作詞の方法は変わりましたか。


MACO:今も一緒ですね。文章になる時もありますし、言葉のフレーズだけの時もあります。歌詞として書きためておいて、曲を作る時はスタジオに入って今日はこれを作る、と決めてやるようになりました。


―作詞方法自体は変わらず歌詞の印象が変わったということは、MACOさん自身に少し変化があったということでしょうか。


MACO:変わってきたんですかね。今回はよりストレートに素直に表現することを大事にしました。


―「素直に表現する」ということが、今回のように恋愛についての歌詞が増えたことにつながったと。


MACO:曲を書くモードがラブソングだな、とアルバムを作る時に思って。ラブソングにも「Kiss」や「マフラー」のように切ない曲もありますし、ハッピーな曲もある。それを素直に書かせてもらったらこんなアルバムになりました。


―ラブソングが続く中でも、8曲目の「24才の私からママへ」は特別な曲である印象を受けました。この曲だけ作詞・作曲でMACOさんなんですね。


MACO:そうなんです。自分でメロを書くというのが久しぶりでした。でも歌詞と一緒にメロディーも浮かんできて、すぐ完成しましたね。ママへの気持ちがたくさん溢れてきて、一人で泣きながらスタジオで作りました。


―MACOさんの楽曲エピソードでは、お姉様の話が出てきたり、お母様に向けた今回のような曲もあって、家族に対する愛も大きいということが伝わってきます。


MACO:大きいですね。離れているから余計に感慨深いというか、大切にしなきゃなって。あとどれだけ親孝行できるかなとか、それを考えたら今回ママに向けた歌を入れようと思って。「24才の私から」はママに向けて素直に書いて作りました。家族は大事ですね。


―そういった要素を入れられるのもMACOさんらしいのかなと。ラブソングモードでも恋愛だけで終わらないという。


MACO:本当は友達の曲とか入れるべきなのかもしれないんですけど、今はそういうモードになれなくて。ファースト・アルバムはMACOのやりたいことをやらせていただきました。


―収録曲の中で、思い入れのある曲はありますか。


MACO:やっぱり「Kiss」ですかね。もちろん「24才の私からママへ」もですし、これまでにない強いフレーズを入れたのは、11曲目の「君の背中に」です。<その背中めがけて>なんて今まで使ったことがないので。曲のインスピレーションから、ちょっとかわいさもありつつ力強いラブソングができました。でも、どれも本当に思い入れがあるんですよね。「LOVE」は初のシングルCDで、悩んで悩んで作った曲でしたし。


■「tofubeatsと一緒に楽曲を歌って、ディスコっていいなと思っていた」


―全体を聴かせていただいて、かなり華やかでバラエティに富んだ印象を受けました。これまでの作品からの大きな変化としてMUSOHさんによるトラックが多くなっていて、それがアルバムの印象を変えた要因の一つだと思うのですが。


MACO:「LOVE」がヒットしたのは、私になかったものを見つけて引き出してくださったMUSOHさんのおかげというか。リスナーの方に「MACOと言ったらこういうハッピーなラブソングだよね」と言っていただけるようになったのもMUSOHさんの楽曲があったからで。今回アルバムを作るにあたって、このタッグが一番しっくりきていると感じました。MACOが挑戦したことのないような楽曲もあったりして、自分でも楽しく歌える曲がたくさん作れました。「Kiss」もそうですしね。聴いた瞬間にこれで作りたいって思えるのがMUSOHさんの楽曲なんですよね。自分にしっくりくるというか。


―MACOさんの楽曲を支えている方として、ライブではギターでもご活躍されている山口隆志さんがいらっしゃいます。


MACO:ぐっさん(山口隆志)は、『LOVE』のカップリング「春の風」という曲のような、MUSOHさんとはまた違った生のギターの音で温かみのある楽曲を作っていただいています。MACOが持っていなかった色を、MUSOHさんだけでなく、ぐっさんも引き出してくれるんです。ベタだったものにここをこうしたらもっと良くなるよ、とアドバイスをいただいたりして。一緒にスタジオに入ることも多かったです。収録曲でぐっさんに書いていただいた「マフラー」「告白」、これもまたいい感じのラブソングになっています。ギターの音色が綺麗なので、温かい曲に仕上がりました。


―MUSOHさんとの楽曲を中心に、山口さんのあたたかみのあるエッセンスも入りつつ、他の作曲家の方のアレンジ曲も散りばめられて。


MACO:そうですね。海外作家に手がけていただいた楽曲もありますし。


―聴くと今までと違う表情がたくさん見えるアルバムですね。


MACO:ありがとうございます。よかったです。初めはこんな曲、MACOに歌えるのかな? と思うような曲もあったんですけど、どこか聴いていて全部MACOらしいなと思います。流行のサウンドに乗せていないというか。土台としているものが80年代の楽曲だったりして、6曲目の「アタシノスキナヒト」は昔のR&Bというか。R&Bは『22』のアルバムの時からやっているんですよね。MACOらしい……みなさんからしたら、バラードとかそうなんですかね。自分では全部MACOらしい楽曲だと思っています。でも多分、9曲目の「We Gonna Be Happy」だけは聴いたらみんなびっくりするかもしれません。


―ちょっと80’sっぽいサウンドの曲ですよね。シンディー・ローパーを意識したというのをお聞きしています。


MACO:はい、こういうのを作ってみたかったんですよ。ちょっとディスコっぽいような。トーフくん(tofubeats)と一緒に楽曲を歌ったことがあって、そのときにディスコっていいなと思っていて。この曲でMACOらしさに加えて、ポップなイメージが出せたと思います。


―前半はMACOさんのこれまでの楽曲イメージともいえるシングル曲から始まり、少しずつ新たな一面を覗かせる曲順ですよね。


MACO:確かに。11曲目とか。


―「君の背中に」ですね。すごく好きです。


MACO:ありがとうございます。これもちょっとイントロを聴くと意外かもしれないんですけど、私の声とメロが入ることで、懐かしいというか、ちょっとレトロなテイストが出ていると思います。『22』の時にあった、どこか懐かしいようなR&Bサウンドを今回も取り入れました。それも「MACOっぽいね」とみなさんに言ってもらえたらいいなと思って。


―そういう曲が良いエッセンスになっていて、楽しい流れでしたね。アルバムを通して聴くと、ライブが見たくなるような、ひとつのショーを見ている気分になりました。


MACO:私もそうなんですよ。自分が歌ってる姿を想像して、ちょっとニヤニヤしちゃって。でも私、緊張しいなので、12月12日のワンマンライブまでにたくさん練習を積んで、いいものを見せたいと思っています。そのためには、ステージ上以外でも自分をコントロールしなければならないので、この日に照準を合わせて整えていきたいです。


■「『ラブソングといったらMACO』と言われるようになりたい」


―レコーディングやライブなど音楽活動にもさまざまありますが、一番好きなのはなんでしょうか。


MACO:やっぱりライブですね。作りためていたものを綺麗な音源にするのもいいけれど、ライブでしかできないし、聴かせられないMACOの世界があると思うので。あとみんなの顔を見て歌えるし。スタジオは……製作期間は地獄です(笑)。そのくらいスタジオに篭もりっきりで作業するので、できた時の達成感はとてもあります。そしてそれを放出するのがライブなので、やっぱりライブが一番楽しいと思えますね。


―前回のインタビューで、「身近な歌姫になりたい」とおっしゃっていたのですが、1年経ってみていかがですか。


MACO:リリースイベントやアルバムの予約会も再開して、「Kiss」のリリースにあたってはSNSで質問に答えたり、ファンクラブイベントを開催したりしているので、ファンの方とは身近だと感じています。テレビに出たり、活動の幅が広くなっていくと「遠くなった」と言われることもあるんですけど、MACOはそう感じていなくて。これからも身近でいられればな、と考えています。そしてファンのみんなと一緒に成長していけたらなとも思います。


―今後さらに目指していきたい姿は。


MACO:「ラブソングといったらMACO」と言われるようになりたいですね。あと1人の女性シンガーとして確立した地位に行けたらと思います。このアルバムを通していろいろな世代の人に聴いてもらいたいですし、ライブもたくさんやって、みんなに会いに行きたい。この熱が冷めないうちに、これからもたくさん曲作りしていきます。



 年明けからは、『FIRST KISS』を携えた全国5都市ワンマンツアーも決定している。MACOが活動の中でもっとも大切だと語るそのライブでは、ファン一人一人に向けて歌いかける温かみのあるステージや、のびやかな歌声からシンガーとしてのポテンシャルの高さを体感することができるだろう。より多くの音楽ファンにMACOのラブソングを届けたいという思いが込められた『FIRST KISS』は、MACOというシンガーを次なるフィールドへ導くものとなるのだろうか。今後もチャートの動向含め、活動を注視していきたい。(久蔵千恵)