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経験者語る、過酷すぎる育児と介護の”ダブルケア”実態

2015年10月31日 03:00  週刊女性PRIME

週刊女性PRIME

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「育児と介護の両立……“ダブルケア”を余儀なくされる方が多くなってきました。この問題は、今後の社会の大きな課題になると思います」 そう危機感を募らせた横浜国立大学大学院の相馬直子准教授は、英国ブリストル大学の山下順子さんと共同で、東アジア社会における、少子化、晩婚・晩産化、高齢化が同時進行している状況について実態調査を行った。その結果、導き出された現実は、 「日本の回答者の平均年齢は41・13歳。そのうち半数以上が育児、介護、仕事を両立していました。夫がうつとか子どもが発達障害などの要素が加わり、“トリプルケア”以上になっている方もいます」 ダブルケアの経験者は現在・過去を合わせて14・2%、『数年先に直面する』と答えた人は17・8%。晩婚化で出産年齢が上昇する一方、きょうだいは少なくなり親戚付き合いが希薄化し、都会を中心に地域ネットワークが築きにくくなっている。今後もダブルケアに悩む人は増えるとみられている。 現在、国際医療福祉大学の小田原保健医療学部看護学科で講師を務める成田光江さん(51)は壮絶な“ダブルケア地獄”を味わった体験者だ。自身が看護師、社会福祉士などの資格を持っていることで、 「“専門職についているんだから当然できますよね。やりますよね”という周りからの圧力がありました。“家の中も大変なのに外で仕事ばっかり”と娘や娘の学校の担任を含めて周囲から責められたこともありました。私はひとりしかいないのに……」 と、苦しかった胸の内を明かす。 ダブルケアは2000年春、突如始まった。成田さんは当時36歳、娘は8歳と5歳。山形で暮らす両親がそろって緊急入院したからだ。 「看護師として2交代の勤務をしながら、遠距離介護と子育てをこなす日々でした。実際は“ダブル”どころではなかった。両親はひとりっ子の私におんぶに抱っこ。交通費や雑費など月に約25万円かかりました」 同年7月、両親を東京に呼び寄せ、自分と同じマンションに部屋を購入、2世帯分の食事の支度や家事を背負うようになった。母は認知症がひどくなり、夫はまったく協力しない。娘との関係は悪化し、睡眠時間は1日にわずか30分から1時間。パソコンを打ちながら、目の前が暗くなり、意識が遠のいたこともあった。どう考えても限界だった。 '03年8月末、父を自宅で看取ったが、負担は薄れない。 「仕事で一時期、愛知の大学に単身赴任したことを、夫は子どもたちに私が悪いと吹き込んでいました。鵜呑みにした次女から“お母さんは自分のために、私たちを捨てたくせに!”と非難されました。私を殺すと言い始めたので、夫を次女から切り離し、一時、保護入院させました」 家族を守り、リスタートするため、成田さんは離婚を決意。'09年に、夫と離れた。次女も内服治療と規則正しい入院生活で、落ち着きを取り戻していったという。 「長女は管理栄養士になり、次女は望んでいた動物飼育関連の職に就きました。母は“お荷物になってすまん”というようになり、'13年の春から施設で暮らしています。今の私は壮絶期に比べればとても落ち着いており、昔のことを考える時間もできました」