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攻めるテレ東「ドラマ24枠」ーー『監獄学園』のエロス描写が伝える、深夜番組スピリッツ

2015年10月30日 19:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『監獄学園-プリズンスクール-』公式サイト

 ゴールデンタイムのドラマには飽き足らない大人のドラマ欲を“そそる”ドラマとして、ここ数年大成功を収めているのが、テレビ東京が2005年に開始した「ドラマ24枠」だ。この枠は『湯けむりスナイパー』の遠藤憲一、『孤独のグルメ』の松重豊ら、知る人ぞ知る映画の脇役を主演に起用しブレイクさせた。その一方で、『モテキ』や『勇者ヨシヒコ』シリーズ、『リバースエッジ 大川探偵社』など、老若男女のサブカル好きから熱い支持を集める作品も送り出してきた。関東ローカルのテレ東はキー局に比べると自由度が高いため、攻めた企画が通りやすいのかもしれない。


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 他キー局の深夜ドラマの状況はというと、日本テレビとテレビ朝日はジャニーズ事務所所属の若手タレントの起用が目立つ。TBSはMBSと共同体制で、漫画原作をドラマ化するパターンが多い。『荒川アンダーザブリッジ』や『深夜食堂』など、映画化にもっていったら成功という、ビッグ・プロジェクトの一部分という印象を受ける。


 TBSで10月27日、MBSで25日深夜に第一話がオンエアされた連ドラ『監獄学園-プリズンスクール-』も、平本アキラが週刊ヤングマガジンに連載している人気コミックが原作だ。女子生徒の数が圧倒的に多い元女子校の共学高校で、キヨシら5人の生徒が学園を牛耳る裏生徒会と繰り広げる戦いと恋、そして友情が描かれる。このドラマ化が発表されたとき、原作を知る者は誰もが「無理だろ」「どうせ中途半端に終わるんじゃね?」とネガティブな反応を示したに違いない。なぜなら、原作は女性のキャラクター描写がとにかくエロいから。一流のカメラマンが撮影したようなアングルで捉えた女体を超絶技巧で描く平本原作のエロチシズムを、この規制の厳しい時代に深夜とはいえドラマで表現することは間違いなく難しい。


 ところが、役の扮装をしたキャスト画像が発表されると、その本気の再現度に一気にドラマ化への期待値が跳ね上がる。そして第一話ではさっそく、主人公のキヨシが女風呂に脚を踏み込むエロシーンが描かれた。洗い場に配置された10数人の女子高生たちは、バスタオルを身体に巻いている者、泡で「見えてはいけないポイント」を隠している者、背中から裸体がバッチリ映されている者、キヨシの妄想映像では手ブラで微笑んでいる者など、今のテレビにできるギリギリを攻めている。また、胸の谷間やパンチラ、モリマンなどにも果敢に挑戦している。


 キヨシを演じる中川大志は『家政婦のミタ』などでその演技力が注目され、今後多くの女性ファンを魅了していく正統派美形俳優だ。インタビューで「17歳の自分が、こういう(エロスを扱う)作品や役に挑戦できるのは貴重な機会」と発言していたように、学園ドラマでは役の年齢よりも年上の俳優がキャスティングされる傾向があるなか、中川はほぼ同年代の役に挑戦する。素の中川よりも鼻の下が伸びているように見え、美形俳優の面影を見事に払拭している芝居が見事である。


 また、キヨシに木陰での放尿姿を目撃されて以来、キヨシに対しての恋心を暴力でしか表現できない重要女子キャラの花に、同世代の女優とは一線を画す覚悟と資質の持ち主・森川葵をキャスティング。肝の据わった彼女が、第2話以降に登場する花の放尿シーンや、キヨシと花のキスシーンをどこまで表現するのかが俄然楽しみだ。


 もちろん本作のエロチシズムは、ネットに転がっているエロ動画に比べたら爽やかとすら言える範囲のエロスだが、今の時代にテレビでエロスをストレートに表現しようとするスピリットが称賛に値する。共同脚本と監督を務めるのは、『片腕マシンガール』の鬼才・井口昇。彼ら作り手を突き動かすのは原作への敬意はもちろんのこと、親が寝静まった真夜中にエロスへの期待を胸に洋画や『11PM』を見ていたあの頃へのオマージュ、つまりは深夜のテレビ番組への愛情のような気がしてならない。(須永貴子)