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クロマニヨンズ、Birthday、キュウソ、coldrain……ロックバンドの“自由な作品群”がチャートイン

2015年10月29日 17:01  リアルサウンド

リアルサウンド

ザ・クロマニヨンズ『JUNGLE 9』

参考:2015年10月19日~2015年10月25日(2015年11月02日付)(ORICON STYLE)


 嵐、14枚目のアルバム『Japonism』が初登場1位。これで彼らの初登場1位記録は13作連続となった。横綱相撲は終わらない、どころか、今もなお加速中。一年前の『THE DIGITALIAN』のとき、発売初週660,204枚のセールスを「脅威!」と書いたけども、今回はさらに飛躍し820,208枚。「…なにそれ!」としか言えない感じ。人気も安定度も変わらないまま、ふわっと16万枚アップってどういうことなのか。嵐以下の2位から10位までのセールス枚数を全部合わせても13万枚強なので、16万枚には遥か及ばない。これ、ヒットチャートの「1位」VS「2~10位」という話じゃないです。あくまで「今回から嵐を買うようになった新規層」とそれ以下を対比しただけの話。すごいなぁ。もう、ほんとにキング・オブ・チャート。


 こういう王者が君臨する週なのでEXILE一族やAKB48グループはおしなべて黙っているが、気になるのは新旧ロックバンドの存在感。チャートを掻き回すロックといえばONE OK ROCKの一人勝ち状態が続いているが、今回はもっとオルタナティヴ。時流やシーンなどは無関係、大物のリリースと日にちが被ってしまうことも「あ、そうだったの?」と言ってそうなロック・バンドたちの、それぞれ自由な作品が目立つのだ。今の代表は4位のキュウソネコカミだろう。あの卑屈さとユーモアがこのチャートに入ってきたのかと興味深い。もちろん、ラウドシーンから食い込んできた9位coldrainの存在も。


 また、3位のザ・クロマニヨンズと5位のThe Birthday。すなわち甲本ヒロトとチバユウスケ。90年代ロックシーンの2大スターと言える両者は、現バンドで奇しくも同じ10周年を迎え、今も変わらぬストレートな……いや、昔よりも動物的な勘だけを頼りにしたようなロックンロールを放っている。THE BLUE HEARTSにしろTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTにしろ、ヒットチャートを駆け上がる「台風の目」になった時期があったが、それをとうに超えた現在、シブい円熟に向かったりしないところがいい。昔と同じロックンロールを鳴らしながら、ただ自分の本能に立ち返るだけ。残るべくして残ったものがそれだったというか。そういうロッカーたちの作品がまだちゃんと支持されているのだろう。


 いわゆるポップカルチャーで、ロックはもう売れない。存在そのものがポップではない。それも事実だと思うが、その音楽自体が不要なのかと言えば、否だと思う。そのことを意外な方面から教えてくれるのが2位の『Splatoon ORIGINAL SOUNDRTACK-splatune-』。大人気のゲーム・サントラで、子供たちがよくやっているので私もなにげなく聴いているが、これ、実はバキバキのロックサウンドが主軸になっている。レッチリのフリーをイメージしたとおぼしきベースラインだけのインストとか、若いポップパンクバンドが書きそうな爽快かつアグレッシヴな曲だとか。もちろん「Splatoon」を楽しむゲーマーがロック好きかと言えばそこは関係ないと思うのだが、ゴリッとした迫力のベース音、ノイジーなエレキギターの音は、今もまだまだいろんな場所から聴こえてくる。そういえば、嵐の新作でギターを弾いているのは布袋寅泰であった。(石井恵梨子)