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キスマイは「国民的グループ」への階段を登る? ナオト・インティライミ提供の新曲を分析

2015年10月28日 10:21  リアルサウンド

リアルサウンド

(C)タナカケンイチ

参考:2015年10月12日~2015年10月18日のCDシングル週間ランキング(2015年10月26日付)(ORICON STYLE)


 今週のシングルランキングは、1位にKis-My-Ft2の『AAO』、2位にHapiness『Holiday』、3位がMAN WITH A MISSION『Raise Your Flag』となった。


 1位のKis-My-Ft2『AAO』は初週売上18.2万枚を売り上げ、他を大きく引き離すセールスとなっている。彼らは今年7月にリリースされた4枚目のアルバム『KIS-MY-WORLD』も自己最大となる30万枚を超えるセールスを果たした。アルバムリリース時の当サイトの「チャート一刀両断」コラム記事にて石井恵梨子さんも指摘しているとおり、(http://realsound.jp/2015/07/post-3806.html)、ここ最近のキスマイは順調に人気を拡大してきたと言っていいだろう。


 ただし、この18.2万枚という数字をどう見るかについては意見の分かれるところだ。というのも、直近3作のシングルのセールスの数字を比べると、昨年12月にリリースされキスマイ最大のヒットとなった『Thank youじゃん!』は、発売初週で43.6万枚というセールスを記録。今年3月の『Kiss魂』は初動35.6万枚を売り上げている。それに比べるとセールス枚数としては半減しているのである。


 とはいえ、計11種に及ぶさまざまなバリエーションの初回限定盤がリリースされた『Thank youじゃん!』や『Kiss魂』に比べると、この『AAO』のリリース形態は、初回限定盤、通常盤、キスマイSHOP盤の3形態。セールス枚数の減少はそのことが起因していると言っていいだろう。


 そして、このことから、一つの戦略を探ることができる。つまり、今のキスマイは数あるジャニーズ系のグループの中でも「コアなファンがセールスを押し上げるグループ」から「国民的な人気グループ」へのステップを登っていく時期にあると位置付けられているのではないのか、という読みだ。もちろんその見据える先には大先輩であるSMAPがいる。あくまでこれは深読みではあるが、初回仕様の種類を絞ったことも、セールス枚数の減少を犠牲にしつつ、そうしたイメージ転換を図っているのではないかと考えられる。


 そして何より大きなポイントは、このシングルが2カ月連続リリースのうちの一枚で、この「AAO」の作詞作曲をシンガーソングライターのナオト・インティライミが、続いて11月にリリースされるシングルの表題曲「最後もやっぱり君」を、つんく♂が手掛けていることだ。


 これまでのキスマイのシングル曲は、基本的にはアーティストではなく作家が手掛けている。「SNOW DOMEの約束」でトライセラトップスの和田唱、「光のシグナル」で東京カランコロンのせんせいを作詞に起用したことはあるが、こと作曲に関しては専業作曲家がほとんどだ。そう考えると、このタイミングでのナオト・インティライミの起用は大きなターニングポイントと言えるだろう。


 では、肝心の楽曲はどうか。この「AAO」は80年代のディスコ/ブギーのサウンドを彷彿とさせるサウンドとなっている。イントロのクラヴィネットからファンキーにうねるベースライン、ワウ・ギター、派手なホーン・セクション、そして四つ打ちの軽快のビートに乗せて4拍目のところで「パパン!」とハンドクラップが入るリズムが大きな特徴。これは「Thank youじゃん!」とも共通する曲調。つまり彼らにとっての「王道」をストレートに狙いにいったものになっている。


 ちなみに、つんく♂が提供した「最後はやっぱり君」の曲調は温かみのあるラブバラード。玉森裕太主演の映画『レインツリーの国』の主題歌で、こちらもやはり「王道」の路線だ。


 アルバム『KIS-MY-WORLD』の初回限定盤では初のリミックスCDを収録しbanvoxやAvec Avec、TeddyLoidなど気鋭の若手トラックメイカーを起用するなど「攻め」の姿勢を見せていたキスマイ。今回の2ヶ月連続シングルは、大物アーティストやプロデューサーを起用しポップスの王道を歩むグループの今を象徴するリリースと言えるだろう。


 そして、このターニングポイント以降、さまざまなアーティストやシンガーソングライターがキスマイの楽曲を手掛けるようになったら面白い。個人的には、星野源が彼らに本気のアイドルポップスを曲提供したら抜群に似合いそうな気がするが、どうだろう。(柴 那典)