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三谷幸喜、不敗神話崩壊!? 『ギャラクシー街道』にファンからも失望の声

2015年10月28日 10:21  リアルサウンド

リアルサウンド

『ギャラクシー街道』公式サイト

 2006年の『有頂天ホテル』、2008年の『ザ・マジックアワー』、2011年の『ステキな金縛り』、2013年の『清須会議』。この10年間、東宝&フジテレビがタッグを組んだ製作体制によって、2~3年に1本の間隔でコンスタントに新作映画を発表してきた三谷幸喜。『有頂天ホテル』の60.8億を頂点に、どんなに悪くても30億近くは稼いできた、この日本映画界屈指の(ヒットという意味における)テッパンの座組が根底から揺らいでいる。


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 先週末に433スクリーンで公開された香取慎吾主演の『ギャラクシー街道』は土日2日間で動員19万9340人、興収2億7045万7900円。もちろん初登場1位ではあるのだが、注目すべきは2年前の前作『清須会議』との対比だ。三谷作品としては少々物足りない数字の29.6億の最終興収だった『清須会議』と比べても、今回の『ギャラクシー街道』は動員比で51.5%、興収比で55.9%。つまり、ほぼ半減してしまっているのだ。


 ヒット作連発とはいえ近年は下降傾向にあった三谷幸喜作品。ここ数年間、映画でもテレビドラマでもヒットから遠ざかっている香取慎吾の主演作。これまで洪水のような番宣をたれ流してきたフジテレビの急速な影響力低下。副次的な理由はいろいろと考えられるが、今回の『ギャラクシー街道』における大失速に関して言うなら、最大の原因は「作品の出来そのもの」と分析するしかない。


 既にここ数日ネット界隈で話題になっているように、各映画情報サイトの観客満足度において稀に見る低水準の数値を叩き出している『ギャラクシー街道』。個人的には、そうした得点集計形式の映画情報サイトの数値やレビューをあまり参考にしすぎるのもどうかと思うが、実際に確認してみると「さすがにこれは……」な結果となっている。


 その中でもよく目につくのは、三谷ファンを自認する観客からの悲鳴にも似たリアクションだ。先週末の「動員19万9340人」はかなりの比率で「三谷作品だったらなにがなんでも初日か二日目に駆けつける」という熱心なファンだろう。逆に言えば、「宇宙空間を舞台にしたコメディ」という、外国映画だと『ギャラクシー・クエスト』のように絶対に日本では当たらないような題材でも、三谷作品のブランドがあればとりあえず1位にはなるのだ。もし、『ギャラクシー街道』でその最も大切な三谷幸喜ファンの信頼を裏切ってしまったのだとしたら、これは結構深刻な事態かもしれない(すみません、自分は『みんなのいえ』を最後に、それ以降の三谷幸喜作品にまったく感心したことがないので、ファンの立場や気持ちを想像してみるしかないのです)。


 来年はNHK大河ドラマ『真田丸』の脚本に専念することになる三谷幸喜。となると、おそらく次の映画は早くても3年後の2018年になるだろうが、どこかでいいかたちでリセットをしない限り(フジテレビと一度離れる? あの極めてテレビ的な「オールスターキャスト」を一度やめてみる?)、今回失ってしまった信頼を取り戻すのは難しいのではないか。(宇野維正)