23日に幕を開けたF1第16戦アメリカGPは、金曜午後のフリー走行2回目が悪天候によってキャンセルされるという異例の事態となりました。
金曜日午前10時(現地時間)からのフリー走行1回目はウエットコンディションで行われたものの、午後2時スタートのフリー走行2回目は豪雨と強風によって開始時間が延期。予定の時刻から約1時間が経過した午後3時前に、レースコントロールは医療用のメディカルヘリが離発着できないとの理由で「FP2の中止」を決定しました。
F1でフリー走行が中止になったのは、台風22号の影響で土曜のフリー走行と予選が中止、日曜のワンデイ開催となった2004年の日本GP以来のこと。これと似たケースでは、2010年の日本GPと2013年の開幕戦オーストラリアGPでも悪天候によって予選が決勝日に延期されています。
今週末の豪雨は、現在メキシコに上陸している大型のハリケーン「パトリシア」の影響によるものですが、このハリケーンは観測史上最大級とも言われています。その勢力は一時、最も強い「カテゴリー5」まで発達、メキシコ政府も3つの州に非常事態宣言を発令する事態へと発展しました。気になる今後の進路ですが、メキシコを南西から北東へ横断した後、アメリカのテキサス州付近へ抜けると見られており、同州オースティンにあるサーキット・オブ・ジ・アメリカズへの影響が強く懸念されています。
ただし、金曜夜には「カテゴリー4」へと一段階ほど勢力が弱まっており、早ければ土曜日にも熱帯低気圧に変わるとの予報。日本のNHKがまとめた最新の情報でも、現時点で「カテゴリー1」まで勢力は弱まっているとのことです。降り始めからの雨量もあるため、今後もオースティンを含めた周辺地域では豪雨や暴風などに高い警戒が続くとみられていますが、最悪の事態は回避される見通しです。
こうした状況のため、アメリカGPの予選と決勝は今後の天候次第ということになりますが、ウエットコンディションで行われたフリー走行では、メルセデスAMGのニコ・ロズベルグがただひとり1分53秒台のタイムを記録しました。昨年のポールシッターであるロズベルグはわずか7周の走行でしたが、比較的雨量の多い早い時間帯にベストタイムをマークしており、開始15分過ぎに行った最初の計測ラップでも1分55秒台でその時点のトップに立つなど、走り出しから速さを発揮。これは週末を通して好調だった前戦ロシアGPと同じ傾向です。
一方、タイトルに王手をかけているチームメイトのルイス・ハミルトンですが、こちらもわずか4周の走行ながら、計測3周目に行った唯一のアタックラップではその時点のトップタイムを記録しました。彼も、インターミディエイトタイヤのグリップが非常に良かったと述べており、同じようなコンディションでは自信ものぞかせているため、ランキング2位のセバスチャン・ベッテルが10グリッド降格(パワーユニット交換)となる今週末は、タイトル獲得の可能性も非常に高いと言えるでしょう。
ハミルトンは開催初年度の2012年と昨年の2回、いずれも逆転で優勝を飾っています。しかもその両方が圧倒的不利と言われるイン側2番グリッドからのもので、いずれもセクター2に控えるバックストレートのDRS区間でトップを奪っています。
天候という最大の懸念材料はありますが、コース上での追い抜きは比較的難しくないと思われるため、前回叶わなかったメルセデス同士の激しいバトルが見られる可能性も。特に、マシントラブルでロシアGPの優勝を逃したロズベルグの奮起には期待が高まるところです。
なお、予選が行われる土曜日も激しい雷雨の予報となっていますが、2日目以降のスケジュールに関しては、現地7時(日本時間21時)から開かれるミーティングで、各チームマネージャーとFIAが協議した上で、決定がなされる予定になっています。