アメリカGPのフリー走行1回目、サーキット・オブ・ジ・アメリカズには2種類のホンダ・サウンドが響いた。ひとつは従来の低く太いエキゾーストノートで、ジェンソン・バトンが使っていたもの。もうひとつが、やや高く乾いた排気音でフェルナンド・アロンソのパワーユニットによるものだ。
今回マクラーレン・ホンダのドライバーは異なるスペックのパワーユニットを使っている。バトンはロシアGPと同様のスペックで、アロンソのパワーユニットはトークンを使用した「マーク4」と呼ばれる最新のものだ。この最新スペックはロシアGPフリー走行1回目で走らせて、すでにペナルティを受けているため、今回は降格なしでレースまで使用する予定となっている。
マーク4は新井康久ホンダF1総責任者によれば「排気系と燃焼系を改善した」ICEとなっており、あわせて排気管も新しくなっている。これまでの排気管はシンプルなレイアウトで結合したコンパクトなタイプで、昨年メルセデスが採用したアイデアに似ていた。だが、今季メルセデスは排気管の形状を変更。自然吸気エンジン時代に見られた各排気管の長さを同じにして、1本にまとめる等長エキゾーストマニホールドにしてきた。アロンソが使う最新スペックは今季メルセデスに追従しており、このためエキゾーストノートも変わっているのだ。
しかし、フリー走行1回目はウエット。さらに雨がひどくなったフリー走行2回目はセッションがキャンセルされ、ホンダの新しい排気音を轟かせることはできなかった。
新井総責任者は、そのことよりも雨の中サーキットに足を運んだ観客を案じていた。
「楽しみにしていたファンのみなさんには、とても残念な一日となってしまいました。アメリカでは、このような悪天になると竜巻が起きることもあるのでキャンセルはしかたがない判断だったと思います。この天候は土曜も続きそうなので、心配です」
観測史上最強と言われるハリケーン「パトリシア」が接近中のなか、初日を終えた当地で4回目のアメリカGP。果たして、最新スペックのパワーユニットは実力を発揮できるだろうか。
(尾張正博)