フォーミュラE第2シーズンの開幕戦、北京ePrix。その決勝レースが行われ、ポールポジションからスタートしたルノー・e.ダムスのセバスチャン・ブエミが後続を全く寄せ付けない走りで完勝。レース中のファステストラップも記録し、獲得可能な最大30ポイントを獲得した。2位にはアプト・シェフラー・アウディ・スポートのルーカス・ディ・グラッシ、3位にはマヒンドラ・レーシングのニック・ハイドフェルドが入っている。
16時からスタートした決勝レース。ポールポジションスタートのブエミが無難なスタートを決めてポジションをキープ。2番手スタートのニコラス・プロスト(ルノー・e.ダムス)は、1コーナーへのブレーキングで大きな白煙を上げ、その隙に3番手スタートのハイドフェルドがアウト側から2番手へと上がる。ディ・グラッシやDSヴァージン・レーシングのジャン-エリック・ベルニュ、そしてドラゴン・レーシングのロイック・デュバルもプロストのポジションを狙うが、プロストはなんとか3番手をキープし、ディ・グラッシが4番手につける。逆にベルニュはブルーノ・セナ(マヒンドラ・レーシング)に交わされてしまい、6番手に落ちてしまう。後方では狭くなった箇所で各車が細かく接触するが、全車無事に1周目を走り終える。
2周目にはプロストがターン3でオーバーラン。ディ・グラッシの先行を許して4番手に下がってしまう。プロストはレース序盤にしてミスが目立つ展開。3周目の2コーナーではシモーナ・デ・シルベストロ(アンドレッティ)がウォールに刺さってしまう。この間にベルニュがセナを狙うも、オーバーテイクできず、逆にデュバルの交わされてしまい、ポジションを落とす。しかし、簡単にポジションを譲らないのがベルニュ。デュバルを再び交わして6番手に。後方ではサラザンを交わしていた7番手のサム・バード(DSヴァージン・レーシング)がデュバルに襲いかかろうとするが、その瞬間にデ・シルベストロのマシンを撤去するためにフルコースイエローコーションとなる。
5周目途中からレースが再開。その最終コーナーで、バードがデュバルを交わして7番手に上がる。しかし続く6周目の3コーナーでバードがオーバーラン。せっかく奪ったポジションを失うばかりか、11番手へと大きくポジションを落としてしまう。7周目にはバード、オリバー・ターベイ(ネクストEV TCR)、ネルソン・ピケJr.(ネクストEV TCR)にファンブーストが与えられたことが発表される。
8周目、各車のエネルギー残量は50%と少しというところ。DSヴァージン・レーシングの2台は、他車より若干エネルギー使用量が心なしか多い。先頭のブエミは快調に飛ばし、後続に9秒近い差をつけ、ひとり旅。ブエミのペースは他車より1.5秒も速いのだ。ハイドフェルド、ディ・グラッシ、プロストの3人は、僅差での2番手争いを繰り広げる。また、5番手のベルニュはペースが上がらず、14番手のビルヌーブまでを従えるトレイン状態。ベルニュはエネルギー残量が厳しく、ペースを上げられないのだ。
ベルニュはその後もエネルギーがさらに厳しくなり、徐々にポジションを下げていってしまう。そのベルニュを抜くマシンで混乱する中盤争いの中、コースに猫が乱入。各車これを避けながら走っていく。
13周目を終えたところで、先頭のブエミを始め各車がピットイン。今回のピットイン時の最低滞在時間は、81秒と規定されている。この間にディ・グラッシがハイドフェルドとプロストを交わして実質的な2番手に浮上。ハイドフェルドはプロストにも抜かれてしまうが、コースに復帰してすぐにオーバーテイクを成功させ、ポジションを奪還する。
13周目にピットに入らなかったのは、デュバル、ダンブロジオ、ターベイ、ナタナエル・ベルトン(チーム・アグリ)、ピケJr.の5台で、彼らは翌14周目にピットインする。
なお、13周目にピットインしたマシンのうち、ピットアウト直後の2コーナーで接触してしまったのがアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(チーム・アグリ)とジャック・ビルヌーブ(ベンチュリ)。ビルヌーブはなんとかコースに復帰するが、ダ・コスタはサスペンションを曲げてしまい、ここでリタイア。このマシンを回収するために、この日2度目のフルコールイエローが発動。これで得したのが14周目にピットインを行ったドライバーたちで、軒並み順位を上げた。
隊列が整ったところで順位を整理すると、ブエミが先頭で以下ディ・グラッシ、ハイドフェルド、プロストで、その後方にデュバル。そしてダンブロジオ、ターベイ、ベルトン、ピケJr.と、ピットインを1周遅らせることができたドライバーたちが5~9番手につけた。
15周目目の途中からレース再開。このタイミングを逃さなかったのがプロストで、再開と同時にハイドフェルドのインに飛び込んでポジションを奪う。プロストはこの後のペースが素晴らしく、2番手を走るディ・グラッシに近づくが、19周目のターン13でウォールにヒットしてしまったようで、リヤウイングを壊してしまう。ただ、プロストのペースはそれでも落ちることなく、ディ・グラッシに迫って行くが、無情にもオレンジボールフラッグ(「マシンの状態が危険なため、ピットに戻り修理せよ」という指示)が掲示される。プロストはピットインの指示を無視して走り続けるが、23周目終了時点でピットに戻り、そのままマシンを頭からガレージに入れてしまう。
ブエミはすでにディ・グラッシに対して10秒近い差をつけて独走状態。ディ・グラッシも単独走行である。注目は3番手争い。ハイドフェルドとデュバルが激しい接近戦を繰り広げる中、デュバルのチームメイトであるダンブロジオが後方からヒタヒタと詰め寄る。24周目にはダンブロジオがデュバルのインに飛び込み、あわや接触……というシーンが訪れるが、寸前でこれを回避する。
結局、ブエミがそのままトップでチェッカー。24周目には1分39秒993というファステストラップも記録し、優勝(25ポイント)+ポールポジション(3ポイント)+ファステストラップ(2ポイント)の全てを獲得するハットトリックを達成。北京ePrixを完全制覇した。2位フィニッシュは、昨年の同レースウイナーのディ・グラッシ。3位にはエネルギーをほぼ使い切って後続を抑えたハイドフェルドが入り、マヒンドラ・レーシングに嬉しい初表彰台をもたらした。ドラゴン・レーシングは4位デュバル、5位ダンブロジオとダブル入賞。以下予選では苦戦したターベイが6位、バードが7位、デビュー戦のベルトンが8位、ダニエル・アプト(アプト・シェフラー・アウディ・スポート)が9位、ステファン・サラザン(ベンチュリ)が10位でフィニッシュしている。初代チャンピオンのピケJr.は、2台目のマシンもトラブルを抱えていたようで、2周遅れの15位。F1王者として初めてフォーミュラEに挑戦したビルヌーブは14位でフィニッシュしている。
テスト走行~フリー走行~予選と速さを見せていたルノー・e.ダムス勢が、まさに席巻した北京ePrix。アプト・シェフラー・アウディ・スポートのディ・グラッシがなんとか食らいついたが、それでも特にブエミには隙はまったく見られない。今季はこのまま、ブエミ+ルノー・e.ダムスが強さを見せ続けていくのか? それとも、大きく力を伸ばしてくるチームがあるのか? 第2戦プロラジャヤePrixは、11月7日に開催される。