政府は10月20日、「国家戦略特区」諮問会議を開催し、外国人観光客の増加に対応した規制緩和などについて議論した。安倍総理は会議のなかで、規制改革を積極的に行う姿勢を示し、決意を次のように表明した。
「『戦後最大の経済、GDP600兆円』の実現に向けて、生産性を抜本的に向上させてまいります」
「Uber」「Airbnb」の解禁は利用者には歓迎できるが
今回の規制緩和は限定した地区で、マンションの空き部屋など一般住宅を宿泊施設とする「民泊」利用を可能にし、バスやタクシーが少ない過疎地の交通手段として「ライドシェア(自家用車の相乗り)」も認める方向で検討する。
日本を訪れる外国人は2013年から急激に増え、この10年で2倍以上に。都市部では宿泊施設の不足など対応が追いついていないのが現状だ。自家用車をタクシーのように使える「ライドシェア」も、日本では規制によって営業が認められていない。
また安倍総理は「外国人を積極的に受け入れ、地方創生を図る自治体の取り組みを後押しする」と発言し、入国管理の迅速化も進める方針だ。日本のアニメ・和食・デザイン・ファッションなどを学びに来た留学生が、日本で働きやすくなるよう在留資格の見直しも行う。
このほか、秋田県仙北市では農業の人手不足解消のため、今まで週20時間だったシルバー人材センターからの派遣の就労時間を40時間まで拡大するなど、合わせて14の事業計画を正式に認定した。
ここまで聞くと、欧米ですでに実現している「Uber」「Airbnb」などの新サービスを日本でも可能にする規制緩和は、ライドシェアが過疎地に限定されている不満はあるものの、利用者としては歓迎できることだ。しかしNYやロンドンでタクシー運転手が反対のデモを行うなど、既存の労働者へのネガティブな影響もある点が気になる。
海外から観光客や働く人を誘致するしかない手はないのか
「戦後最大の経済」を実現するための方策が、外国人頼みばかりという寂しさもぬぐえない。少子高齢化で日本のGDPが減少する中、海外から観光客や働く人を誘致するしかないという発想は理解できる。
しかし国内にも、卒業時の景気に左右されて新卒一括採用から零れ落ちた「氷河期世代」という長期失業者層がいることも忘れないでもらいたい。ツイッターにはこんな不満の声が寄せられて皮肉な思いがした。
「まず先に就職氷河期世代の日本人を積極的に受け入れてもらえませんか?」
就職氷河期時代の日本人がやりたい仕事と、政府が外国人や女性・老人にやらせたい仕事は違うのだろう。しかし言いたいことはよく分かる気がする。(ライター:okei)
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