2015年10月23日 11:01 弁護士ドットコム
ツイッター上で、恋人同士が一つのアカウントを共有することが、中高生の間で流行っているという。こうしたアカウントは、俗に「カップル垢」と呼ばれる。その特徴は、仲の良さそうな男女の写真がプロフィール画像として使用されていたり、2人の名前を組み合わせたアカウント名が使われているところだ。
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投稿される内容も、記念日に関するものやデート話など、憎たらしくも微笑ましいものが多い。だが、若い2人だけに「別れ」もやってくる。そんなカップルの破局後、どうなるかというと、たいていは「別れました」などと簡単な告知が書かれるだけで、アカウントが削除されないまま残っていることも多い。カップルが別れても、アカウントそのものは分けることができないのだ。
そんなとき、別れた後に、カップルの一方が「カップル垢」を使い続けたら、どうなるのだろう。無断でログインしたり、勝手に書き込みをしたら、法的に問題ないのだろうか。IT問題にくわしい深澤諭史弁護士に聞いた。
「カップルが別れた後、一方が『カップル垢』を使い続けた場合、『不正アクセス禁止法』違反に問われる可能性があると考えます」
深澤弁護士はこう切り出した。不正アクセス禁止法とは、どんな法律なのだろうか。
「端的にいうと、正当な権利や許可がないのに、他人のパスワード等を入力してアカウントにログインする行為を処罰する法律です。違反した人は3年以下の懲役または100万円以下の罰金になります(同法3条・11条)。
なお、ログイン行為そのものが処罰されますので、『ログインしただけで、閲覧も投稿もしていない』という場合でも、処罰されます。このあたりは『住居侵入罪』のネット版だと考えてもらえれば、わかりやすいかと思います」
もともとは問題なく利用できた「カップル垢」を使い続けると、なぜ処罰される可能性があるのだろうか。
「まず、自分のアカウントや他人のアカウントに許可を得てログインすることは、犯罪に問われません。
なので、たとえば『カップル垢』が、もともと自分の個人アカウントであれば、『交際相手に譲渡した』というような事情でもない限り、交際終了後に使用しても問題がない可能性が高いでしょう。
一方で、もともと交際相手のアカウントだったり、あるいは2人で取得したというような事情であれば、半分ないし全部は他人のものといえますので、無断でログインすると、不正アクセスになる可能性が高いと考えます」
このように述べたうえで、深澤弁護士は次のように注意を呼びかけていた。
「ツイッターに限らず、SNSは日常を記録して公開するものであり、プライバシーが集積されているといえます。いわゆるリベンジポルノ問題にも共通するものがありますが、いくら信頼できる交際相手であるといっても、このようなセンシティブな情報(慎重な取り扱いを要する情報)の共有は避けるのが無難でしょう。
また、不正アクセスにならない場合であっても、交際関係終了後の投稿が名誉やプライバシーの侵害になると評価される場合もありえます。『役割』を終えたアカウントは削除しておくのが無難です」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
深澤 諭史(ふかざわ・さとし)弁護士
ネットやコンピューターにまつわる法律事件を中心に取り扱う。ネット選挙の法務では関係者向けの講演などを実施。近著に「その『つぶやき』は犯罪です(共著、新潮新書)」がある。
事務所名:服部啓法律事務所
事務所URL:http://hklaw.jp/