家計の通信費は10年前より2割以上増え、収入減の家計を圧迫している。そんな中、安倍首相が「携帯料金の家計負担の軽減は課題」と発言。総務省は10月19日、携帯電話料金の引き下げを検討する有識者会合を開いた。同日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)は、困惑する事業者の思惑を伝えている。
有識者会合では、金額よりも「複雑で何にいくら払っているか分からない。透明性がない」と、料金体系の分かりにくさが指摘された。キャリアを乗り換える人のほうが、そのままの人よりも年間12万円も得をするという「不公平感」も課題だ。
格安スマホ事業者も「値下げ要請は余計なこと」と漏らす
菅官房長官も同じ日の会見で「大手3社が同じような料金なのが、国民から見ても問題ではないか」と発言したが、これに対し携帯大手3社は困惑ぎみだ。
ソフトバンクの宮内謙社長は「世界で見ても日本は結構安いと思う」と取材者たちに苦笑いで答えた。KDDIの田中孝司社長は「見る相手はお客さんであって、別に政府じゃないですから」と不満顔。NTTドコモの加藤薫社長も「お客様の声にもう一度耳を傾けながらじっくり検討したい」と微笑んで答えたが、目は笑っていなかった。
突然やり玉にあげられた大手が慎重な姿勢を見せるなか、もうひとつ値下げを歓迎しない業界があった。大手キャリアの回線を借りて事業を行う「格安スマホ」業者だ。
同日、格安スマホ大手3社が集まり事業戦略を示した会合で、安倍首相の値下げ要請も議題に上がった。ケイ・オブティコムの津田氏は、要請自体が余計なことという本音を漏らす。
「正直、キャリアさんが値下げをされると我々の存在意義がなくなるので、今の料金水準を保っていただく方がいい」
家族3人で6000円台に下げたケースも
格安スマホ利用者は、信頼性の低さなどから全体のおよそ2%にとどまっているものの、最近は消費者の抵抗感をなくす取り組みに力を入れており、攻勢を強めている。
ビッグローブはスマホとタブレットの新機種を発売。女性向けに商品ラインナップを増やし、動画を見る若者向けに月12ギガの大容量プラン(音声通話の場合月額3,400円)も8月から開始している。
NTTコミュニケーションズは、加入者を特定するためのSIMカードが届いてからパソコンなどで申し込むように変えて、携帯を使えない時間をなくす。同社の岡本氏は、「お客様のニーズを細かく捉え、多様なサービスを展開することで、よりターゲットを広げていきたい」と意欲的に語った。
1月から格安スマホを使っているというTさんは、安価でSIMカードを提供する業者と契約し、中古で買ったiPhoneに入れて使っている。ナンバーポータビリティで電話番号はそのまま、速度が遅いという感じはせず、問題なく利用しているという。某キャリアと契約していたころは夫婦で月1万5000円ほどだったが、母親も加えた3人で6000円台まで下げた。
利用料の高止まりに「価格カルテル」の陰口
ヨドバシカメラ秋葉原店では、格安スマホの売り場を半年前と比べて5倍に拡大。対面カウンターを設置し、7社それぞれのスタッフが常駐して客の相談を受けている。大浜キャスターが、昼時に通信速度が遅くなる問題は改善されたのか質問すると、「相変わらずだと思いますね」という答えだったが、ユーザーの使用状況に合わせて特性を説明するという。
安倍首相の発言に不満気だったキャリア大手のトップたちだが、2015年3月期決算における営業利益が3大キャリア合わせて2兆3630億円にものぼると聞くと、さすがに儲けすぎだと感じる人も多いだろう。
利用料の高止まりに「価格カルテルじゃないの?」と陰口も聞かれるほど。政府の態度には賛否あるものの、おごったビジネスをしていれば消費者にしっぺ返しを食らうのではないだろうか。(ライター:okei)
あわせてよみたい:通勤中に「スマホでエロ画像」どう思う?