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オバマ大統領も一役買う? 『スター・ウォーズ』公開に向けた、ディズニー“攻め”のマーケティング

2015年10月21日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『スター・ウォーズ』メイク用品

 10月10日、オバマ大統領はロサンゼルスに7時間滞在した。その短い滞在のメイン・イベントは、市内の超高級住宅地パシフィック・パリセーズにある映画監督JJエイブラムスの邸宅で行われるグループ・ミーティング。共に民主党の熱烈支持者であるエイブラムス夫妻によるイベントの参加費は一人あたり33,400ドル(約400万円)と目が飛び出るほどの額だが、およそ20名が参加した。その後もオバマはジェイミー・フォックスのプライベート・コンサート、そして駐スペイン米国大使の邸宅などを訪れ、7時間でしめて800万ドルの民主党大会予算を集めあげた。


参考:『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』予告編公開 映像にはダース・ベイダーのマスクも


 アメリカのメディアはファンドレイジング・イベントの仕掛け人の名前と肩書き、最新情報を連日報道。よって、人々の記憶には民主党大会の情報よりも目下の最重要情報がインプットされた。「12月、『スター・ウォーズ』新作、エイブラムス」。それから約10日後、『フォースの覚醒』の最新版ポスターと予告編が解禁になった。あっぱれな情報出しタイミングである。


 この夏以降、ディズニーが仕切る『スター・ウォーズ』は攻めまくっている。スーパーに行けばコラボ商品が溢れ、子供向けのシリアルやヨーグルト飲料から、完全に大人向けのキャンベルスープや、ダークサイド、ライトサイドどちらにも変身できる口紅やマスカラなどの化粧品まで各種取り揃えたコラボ花盛り状態。スナック菓子の箱にミニオンズやスポンジボブにまぎれてヨーダの顔を見つけてしまうと、いい年をした大人もついつい手に取ってしまう罠。ディズニーはコラボする食品に対し厳しい基準を持つことで知られており、コラボ商品はディズニーから“安全”のお墨付きを受けたようなもの。今やFDA(アメリカ食品医薬品局)ではなく、ミッキーやC3POが食品の安全性を示す世の中になってしまったのかもしれない。


 そもそも『スター・ウォーズ/エピソード4』は映画本編よりもTシャツなどのマーチャンダイズで儲けた作品。だが、かつてアメリカ映画がこんなにもコラボ商品を充実させたマーケティング戦略を打ち出したことはあっただろうか? その影には、ディズニー映画の日本におけるコラボグッズ戦略の成功例があったのではないか。一見映画とは関係のない商品ともコラボし、生活に映画(キャラクター)を馴染ませていく。


 アメリカのエンタメ企業の王者であるディズニーだが、本国からのトップダウンではなく日本市場の特異性を理解しローカライゼーションを進め、日本の洋画興行市場のシェアを大幅に拡大した。原題『FROZEN』を邦題『アナと雪の女王』と改題することで大ヒットへと導き、独自の売り方で『マレニフィセント』や『シンデレラ』を本国以上のヒット作に育て上げた。その特異な市場の成功実例を本国のマーケティングにも応用し、未知の領域の成功へとフルスロットルで進んでいる。


公開まであと2ヶ月、市民生活にじわじわと食い込んできた『スター・ウォーズ』の次なる一手は? クリスマス商戦には新作のキャラクターを大量投入してくるはずだし、まだまだサプライズの仕掛けがありそうだ。というか、オバマはもう『フォースの覚醒』を観せてもらったのだろうかーー?(小川詩子)